第25話 新人ボッチは運命の出会いと勘違いする。

 あぁ~酷い目にあった。


 全てバルの奴が悪いのに何故かホップズの奴から事情聴取と言う名の説教を受ける事になる何て・・・。


 お陰で今日一日の出来事は、殆どどぶさらいの依頼とホップズの奴に説教された事しか覚えて居ない。


 もう日も暮れてるし早く宿に帰って明日に備えて休もう。


 おっ! ダタンの叔父貴おじき説教ごうもんが終わった所かな。


 俺とは別室の取調室へと連行されたダタンの叔父貴おじきもギルド職員からの取調ごうもんが終わった様だ。


 ダタンの叔父貴おじきは連行される前と変わってちょっと痛々しい格好に成って居た。 


「もう二度と周りに迷惑を掛けるんじゃないぞ副ギルド長。」


 ダタンさんの取調室を終えた事で何故かスッキリした顔に成って居るギルド職員がダタンさんに向かって笑顔で言い放つ。


「お前等・・・覚えてろよ。」


 対称的に言われたダタンさんは何処か疲れてイラっとした表情をして言い返して居た。


「叔父貴!!お勤めお疲れさんです。」


「くっ・・・ドルフか。

 其の叔父貴って呼ぶのも辞めてくれ。

 あと別に取調は、お勤めとかじゃねぇからな・・・。」


「や、やっぱ若頭わかがしらの方が良いですかい?」


「お前なぁ・・・。」


 何処か疲れた顔でダタンの若頭わかがしらが俺に何か言い掛ける。


「お父さん。」


 其処に突然、鈴を鳴らした様な可愛らし声が聞こえて来た。


 其の声に直ぐに反応したのはダタンの若頭わかがしらだった。


 何時も人を殺しては埋めそうな程に恐っかない顔をして居るダタンの若頭わかがしらの顔がへにょりと駄らしなく揺るむ。


 一瞬でへにょりと揺るむダタンの若頭わかがしらの顔を見て俺の身体が驚きでビクッと為ってしまった。


 しかし、ダタンの若頭わかがしらの其のへにょりと駄らしなく揺るんだ顔は本当に別の意味で怖かった。


 例えば普段のダタンの若頭わかがしらの顔は、子供が泣き出すくらいなのだが、今のへにょりと揺るんだ顔は、泣き出した子供が裸足で逃げ出す感じに怖い。


「タミィちゃ~ん。」


 何かダタンの若頭わかがしらから人為ひとならざる様な優しい声音が飛び出して来た。


「ふぉっ!?」


 余りの違和感の在るダタンの若頭わかがしらから発せられた其の優しい声音に再度ビクッと身体を震わせて俺は叫んでしまう。


「お父さんコレ、お母さんが今日の夕食のお弁当にって。」


 そう言ってダタンの若頭わかがしらに近づいて来たのは、ダタンの若頭わかがしらに似ても似付かぬ天使の様な純朴で可愛らしい女の子だった。


 シルバーブロンドと呼ばれるフワフワの髪を揺らしちょこんとした可愛らし仕草でダタンの若頭に手に持って居たかごを渡す。


「じっ、事案発生ぇ~!!」


 余りの信じられない出来事の連続に俺は叫んでしまう。


「ど、どうした!?」


「何が有った!?」


「事案って!?」


 俺の叫びにギルドの職員達が次々に飛び出して来る。


「お、お巡りさん!

 事案です。

 ダタンの若頭が・・・可愛らし女の子を・・・かどわかして・・・!!」


「何だとぉ!?」


「またか!?」


「つ、ついに遣りやがったかぁ!!

 あの副ギルド長はぁ!?」


「殺人だけじゃ飽きたらず。

 遂に人として手を出しちゃ行けねぇ犯罪ぉ~!!」


「イエスロリータ!!ノータッチ!!」


「御用だ、御用だぁ!!」


 天使の様に可愛らし女の子からかごを受け取っりながら、へにょりと揺るんだ怖い笑顔を浮かべるダタンの若頭を指差す俺に反応してか、ギルド職員達がダタンの若頭に一斉に飛び掛かって行く。


 何か一人、変な叫び声を上げてダタンの若頭に飛び掛かって言ったギルド職員も居たが、まぁ気にしない事にしょう。


 へにょりと揺るんだ笑顔のままギルド職員達にモミクチャに成りながら捕縛されるダタンの若頭を余所に俺は突然目の前で起きた大捕物の出来事に対してアワアワと動揺して居る天使ちゃんに声を掛ける。


 まぁ運命の出会いを感じる俺としては此処でアピールして置く為に確りと可愛らし天使ちゃんに声を掛けて置く。


「可愛らしお嬢さん、大丈夫ですか?」


「お、お父さんが・・・。」


「へっ?お父さん?」


 天使の様な可愛らし女の子はかなり混乱して居る様だ。


 ダタンの若頭を指差してお父さんと言ってるし、まさかダタンの若頭、こんないたいけな可愛らし女の子にヤバいきのこを使ったんじゃ?


 ダタンの若頭!?そいつは活けねぇ。


 仁義の道を極めるから極道で有って仁義の道から外れたら、そりゃ外道だ。


 そ、尊敬してやしたのに・・・ダタンの若頭・・・こんな可愛らし女の子を・・・ヤバいきのこを使って・・・自分の事をお父さんって呼ばせる何てぇ・・・そりゃねぇぜぇ!!


「お前等何を騒いで居るか!!」


 俺が余りの衝撃的事実に打ちのめされて居る中で、ギルド職員とダタンの若頭の大捕物騒ぎを聞き付けてホップズが遣って来た。


「ホップズさん!

 ダタンの若頭が此のお嬢さんを拐かして!!」


「ん?」


「えっ?」


 俺が騒動の原因をホップズに伝えるとホップズと一緒に天使の様に可愛らし女の子も驚いて居た。


「馬鹿騒ぎを辞めなさい!!

 ギルド職員の皆さん、誤解だから其の馬鹿騒ぎを辞めなさい!!」


 可愛らし女の子を見て何かを察した様にホップズが大捕物中のギルド職員達を怒鳴り始めた。


 数分後、ホップズの仲介から落ち着きを取り戻したギルド職員と俺にホップズから衝撃の事実が告げれれた。


「此方はダタンさんの娘さんで在るタミィちゃんだ。」


「「「娘!?」」」


「タミィです。

 何時もお父さんがお世話に成ってます。」


 縄でぐるぐる巻きに成ったダタンの若頭の側で頭を下げて挨拶する天使の様に可愛らし女の子タミィちゃん。


「ま、マジでダタンの奴の娘だと!?」


「し、信じられん。

 オーガがハイエルフを産むって言う諺は在るが・・・事実なのか?」


「ダタンの奴でも・・・結婚出来るのに・・・俺って奴は・・・。」


「触っちゃ駄目だ。

 触っちゃ駄目だ。

 其れが紳士と言う者だぁ!!

 イエスロリータ!!ノータッチ~!!」


 ギルド職員達も其々に動揺した様な事を口走って居る。


 オーガがハイエルフを産むって言う此の世界の諺は、日本で言う所のトンビが鷹を産むって言う意味に近い諺だ。


 まぁ後、一部ヤバそうな事を口走って居る自称紳士成るギルド職員も居るが、其処は気にしては行けない。

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