第18話 新人はボッチ。

「おめでとうドルフ君。」


 何故か嬉しそうに俺に話し掛けて来るポップズ試験官。


 此処でツンケンして対応する程に俺は子供では無い。まぁ実際に前世の年齢を合わせると四十近いオッサンに成る訳だし此処は大人の社交辞令としてポップズに対して笑顔で対応する。


「有り難うございますポップズ試験官。」


「何、合格出来たのは君の実力の賜物だ。

 さぁ此の合格通知書類を持って受付に行きなさい。」


 何故か爽やかな笑顔を見せ今回の適性検査試験の合格通知を渡して来たポップズに俺は戸惑いながらも頭を下げる。


 そして受付へ向かう際にダタンさんへ感謝の言葉を告げる。


「ダタンさん有り難うございます。

 イヤぁ~今回は本当に助かりました。」


うるせぇ!!

 さっさと合格通知持って受付へ行け馬鹿野郎がぁ!!」


 ダタンさんは最後まで悪役の演技を遣り通してくれて居る様だ。


 うむっ流石はダタンさんだ。


 マジでプロ意識高過ぎだろう。


 ポップズにバレない為に悪役の振りを試験が終わった後も演じ続けるダタンさんへ、俺は微笑みを浮かべながら感謝を込めて頭を下げ。


 其の後、直ぐに合格通知を握り締めながら広場からギルドの建物内に在る受付へと向かう。




 適性検査試験を終えて広場に残った副ギルド長のダタンとポップズ試験官の二人は、嬉しそうにギルド内へと去って行くドルフを無言で見送る。


「ダタンさん、ドルフ君の様に適性検査試験を受に来る者の中にも十分に実力の在る者達が居るんだと言う事を認めて、ちゃんと合格させて上げて下さいよ。

 誰彼構わずに試験を落とす何て事はもう辞めてくれませんかね。」


「ぐぬっ、ドルフって奴が異常に強かっただけだ。

 試験を受けに来た初心者全員がドルフの様な実力を持って居る訳じゃ無いだろうが。」


「ドルフ君が突出して強いと言う事は私も今の試験を見て認めます。

 だから其の実力の有無を適性検査試験で見て振り分けて居るのでは有りませんか?

 ダタンさんの場合は、ドルフ君の様に貴方に勝った者しか合格が出来無いと言う試験は、初心者に取っては物凄く厳し過ぎます。

 副ギルド長で在る貴方に勝ほどの実力が在る者は、殆ど上位護衛者くらい何ですよ。

 安全の為に石橋を叩いて渡ると言いますが、貴方の場合は叩き過ぎて石橋を壊してしまって居ます。

 安全処か橋を破壊してしまっては渡る事すら出来無いでしょうよ。」


「う、煩せぇな!!」


「いいえ、今日こそは言わせて貰いますよ。

 ダタンさんそれに貴方はドルフ君との試験の初っぱなの速攻と最後の棍棒で挟み潰す攻撃ですけど。 

 あれ、ドルフ君を本気で殺しに掛かりましたよね。」


「・・・こ、殺そう何て思って無いから・・・ちょ、ちょっと感情的に成っただけだから・・・そ、それにほら実戦だと・・・。」


「実戦って・・・確かに試験は実戦を想定して居ますが、それでも仮にも試験なんですよ。

 試験で殺す様な攻撃って無いでしょう。

 一歩間違えばドルフ君は死んでましたよ!!

 一々試験で殺す様な攻撃してたら実戦も本番も無いですからね。

 試験に来た者を殺してたら初心者の安全も糞も無いでしょうよ。

 全くの本末転倒ですよダタンさん。」


「ぐぬっ。す、すまん。」


 ポップズとダタンの二人はドルフの居なく成った広場で試験の反省と今後の試験の方針に着いて話し合うのだった。


 後日談として、ダタン副ギルド長が初心者の適性検査試験に対して少し優しく成り、領都に試験を受けに来た護衛者志願の初心者達の適性検査試験合格率が上がったと言う。



 適性検査試験が通って受付に向かった後、俺は新人護衛者としての簡単な講習を受ける事に成った。


 講習内容は護衛者としての立場上の権利と国の法や貨幣に関する事だった。


 護衛者は仕事の都合上、国家間を移動する事も多い為に講習ではとても重要な話しが聞けた。


 俺と同じく試験に合格した人達が五人ほど居たが、彼等は講習の内容から自分達の護衛者としての仕事の範囲内を国内だけと決めて居る様だった。


 それとダタンさんから試験の合格を得た事を聞いて凄く驚いて居た。


 まぁダタンさんって副ギルド長だからな、他の合格者からしたら副ギルド長、みずから実力を認められた様な物なのだろう。


 ダタンさんはあんな見掛けだけど優しい人だよって話して見たが五人共に「嘘だぁ~!!」とハモって否定して居た。


 此の世界でも人は見掛けが十割何だろうかと悩んでしまった。


 前世の俺は見掛けは余り良く無かった。


 今世の俺は前世の俺寄りも見掛けは増しに成っただが、絶世の美男子と言う訳でも無い。


 今世の俺の顔は母上に似て居る。


 今世の母上は決して美人とは言えないが性格が何処か家庭的で、多少頭のネジが緩・・・ゲフンゲフン・・・おっとりした性格だった事から異性にモテるタイプの女性だ。


 親父殿も其処に惚れて居た様だった。


 まぁ性格的には弟の方が母上に似て居ると村の大人達から良く言われて居たっけかな。


 翌々考えると其れって俺の性格は親父殿と一緒って事なのだろうか?と少し考え込んでしまう。


 赤ちゃんプレーする親父殿と同じ・・・?


 アレと同じ・・・マジ落ち込んだ。


 しないからね赤ちゃんプレー何て俺は絶対に・・・多分・・・少し考えさせてくれ・・・相手が求めて来たならって条件なら、まぁやぶさかでは無い・・・かも知れない。


 俺の性癖に着いてはさて置き、講習終了後に楽しげに護衛者としての今後の話しで盛り上がるそんな五人の若者達を他所に俺はボッチ状態だった。


 今回合格した五人の若者達は同じ領都の出身らしく慣れた感じで話す姿が眩しい。


 俺・・・ボッチ・・・彼女も・・・無し・・・クッ辛く何て無いやい。


 俺の目から心のあせつゆだくで流れ出た。


 ぐっすん。

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