第17話 格闘実施試験 結果
おっとポップズの事を笑ってる余裕何て無かったな。
今は突っ込んで来るダタンさんに合わせるのが先だ。
丸太の様な棍棒を片手に一本づつ持って横に広げる様に構えながら俺の元に突っ込んで来て居る。
武器で在る棍棒を翼を広げた鳥の様に外側に向けて構えて居る事で、ダタンさんの正面はガラ空きの状態だ。
まるで正面を狙って一撃入れて下さいと言わんばかりの隙だらけな構えで在る。
成る程、此処が試験の山場ですねダタンさん。
正面の隙を狙って一本を取らせてくれると。
優し過ぎるよダタンさん。
ならダタンさんが折角悪人の演技までして用意してくれた此のチャンスを生かし試験合格の為の一本を取らせて貰いますぜダタンさん。
「行くぞ!!」
向かって来るダタンさんを正面から迎え撃つ為に俺もダタンさんへと向かって突進する。
ダタンさんと俺は互いに正面から当たりに行く形で間合いを潰して行く。
武器の大きさや腕の長さからダタンさんの方が間合いの距離的にも有利なのだが、ダタンさんは其の長い腕も大きな棍棒ごと横へと広げて居る。
其れに引き換え俺はダタンさん寄りも腕のリーチは短い。
また持って居る武器も普通の長さの木剣だ。
しかしダタンさんは両手の武器を横に広げる様に持って向かって来る。
其れに対して正面に真っ直ぐ突き刺す様に構えて居る俺の方が有利だ。
正面がガラ空きのダタンさんが両手に持った丸太の様な棍棒で俺を両側から挟み潰す寄りも俺が素早くガラ空きに成ったダタンさんの正面に突きを入れる。
此れなら簡単にダタンさんに突きが決まって簡単に一本を取れるだろう。
余裕、まさに余裕で合格だ。
そう考えて木剣をダタンさんへ突き入れようと互いの間合いを潰して行く。
そして一瞬、そう正に一瞬だ。
俺はふと一撃が決まる間合いに入る瞬間に審判で在るポップズをチラ見してしまった。
すると其処にはクワッと見開らくポップズ。
まるで何事も見逃さないと言わんばかりに広げられたポップズの眼。
不味いポップズが、ダタンさんと俺の演技を見切って居る可能性が・・・。
例え演技と言え、此処まで簡単に一本が取れる様な状況をお膳立てされて居たら、果たしてポップズは審判として不正を怪しむ事も無く認めてくれるのだろうか?
俺は短い刹那の時に思考をフル回転させる。
そして出した結論は否、答えは断じて否だ!!
寧ろ簡単に一本取れ過ぎてポップズからは胡散臭いと疑われてしまうに決まっている。
見える。ポップズがしたり顔をして試験中のダタンさんから簡単に一本取れる迄の流れを問題にして不正が在ると指摘する未来が・・・。
俺はポップズの見開かれた眼からダタンさんと俺のやり取りがバレて居る可能性を読み、咄嗟にダタンさんから一本を取る為の一手を変える事にした。
丸太の様な大きな棍棒の武器を鳥が翼を広げる様に地面と水平に向けて居るダタンさんの胸元へ手に持った木剣を素早く突きを打ち込むと言うシンプルなプランの攻撃から手に持った木剣をダタンさんへ投擲すると言う攻撃へ。
「甘いぞぉ
木剣をダタンさんに向かって投擲する一瞬の時、ダタンさんが俺に向かって叫んだ。
し、しまった!!
突然のダタンさんの叫びにダタンさんの胸元へと向けて投擲した筈の木剣が其の投擲軌道が微妙にズレてしまい意図せずダタンさんの顔面へと真っ直ぐ飛んで行ってしまった。
ガッと固い物同士がぶつかる様な音が広場へ響く。
俺は自分が投擲した木剣がダタンさんの顔面に直撃した音かと思った。
だが其れは違った。
俺の投擲した木剣の先端をダタンさんがキラリと輝く真っ白な歯で噛み締めて受け止めた音だった。
真剣白羽取り為らぬ木剣白歯取りをダタンさんが遣って見せて居た。
普通なら有り得ない受け止めた歯が折れる。しかし
凄いぞダタンさん、人の出来無い事を平然と遣ってのける。
其処に痺れる憧れるぅ~ッ!?
等と驚く俺に向かって木剣を受け止めたままのダタンさんが何か言って来た。
「ふぇ(死ね)!!」
ダタンさんは俺の投擲した木剣を口に咥えて居る為に何を言ってるか分からない言葉を発して居る。
笛?いや遣れかな?
そんな事を考える俺の耳にゴウッと音を発て風を切る丸太サイズの棍棒が俺を挟み込み押し潰す様に迫って居た。
ズバァンと大きな音を発て挟み込む様に横から打ち付けられた丸太の様な二本の棍棒。
ニタリと木剣を咥えた口を歪ませて笑みを作るダタンさん。
「いっ、一本!!」
審判のポップズが遅れ一本を入れた合図を入れる。
ポップズの合図を聞いて口に咥えて居た木剣をペッと吐き出してダタンさんが不満そうな声を上げる。
「ポップズ!!
何処を見てやがる。
此れの何処が一本だ!?
そして
ダタンさんの言葉を遮る様にポップズが俺の一本勝ちを言い切った。
「有り難うございますポップズさん、それにダタンさんも。」
ダタンさんの背後で手刀をダタンさんの首筋にピッタリと添えた俺は二人の試験官に感謝を述べる。
俺の声が自分の背後から聞こえた事にダタンさんがビクッと大きな身体を震わせた。
おぉ演技が細かい流石演技派ダタンさんや最後まで気を抜かない積もりか!?
同じ演技派としては俺も最後まで気を抜かない様に演技しなければな。
ポップズの奴はダタンさんのそんな演技に気付かずに得意気に説明をする。
「気付かなかったのですかダタンさん。
投げた木剣は貴方への目眩ましですよ。
ドルフ君は受け止める事まで予想して貴方の視界を防ぎ死角を作ったのです。
口で木剣を受け止めると口に咥えた其の木剣が邪魔をして前方に死角出来ます。
其の死角を利用して、ダタン貴方の挟み込む攻撃を下に伏せて交わすと同時に這うように素早く移動し貴方の背後に回り込んだ。
そして貴方の背後から首筋に手刀を一本入れる形に成ったのです。
見事な一本です。
まさか本気を出して居ない何て言い訳をする積もりじゃ無いですよね。
ダタン副ギルド長殿。」
「グッグヌヌヌヌッ!?」
へっ!? 嫌ぁ顔面に投げたのは間違ってだし、ダタンさんが口で木剣を受け止めたのには素直に知らなくて驚いたんだけど・・・まぁダタンさんの挟み込む攻撃を下に交わして赤ん坊の頃に鍛え上げた高速ハイハイを使ってカサカサと移動しダタンさんの背後に回り込んだのは確かだけど・・・俺とダタンさんの演技が上手すぎてポップズの奴は気付かなかった様だ。
本当に試験官として大丈夫だろうかと思ってしまう反面、流石がはダタンさんだと感心する。
最後まで悔しがる演技とはスゲェ~なぁ其処に痺れる憧れるぅ~同じ演技派として尊敬しますよダタンさん。
て言うかダタンさんって副ギルド長だったのね。
ヤッパ副ギルド長とも成ると演技力も必要に成る程に多才なんだろうか?
それはさて置き俺は遂にポップズ試験官の眼を欺いて、ダタンさんとの演技を遣り遂げたのだ。
悔しがる演技を続けるダタンさんに向かって俺は再度遣りましたねダタンさんと言った意味を込めてバチコ~ンと片目を瞑ってウィンクして見せる。
「グギギギギィ~、ケッ認め遣るよ。
クソッ合格だ!!」
おぉ最後まで気を抜かず演技を続けるダタンさんカッケェ~。
確かに此処で仲良く良く遣ったとか言ってダタンさんと握手したら今までのやり取りが嘘臭く成るもんな。
そんな演技派で在るダタンさんに、ちょっと尊敬しちゃいますねハイ。
「フフっ良かったなドルフ君。」
そんなダタンさんと引き換え笑みを称えてるポップズ試験官の眼は・・・本当に節穴だね。
ヤレヤレ┐(´д`)┌。
少しはダタンさんを見習えよな全く。
こうして俺の護衛者適性検査試験は無事に終了した。
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