第16話 格闘実施試験 本番

「ヒャッハー!!」


 モヒカンヘアーとトゲトゲ肩パットが似合いそうな奇声を上げたダタンさんが飛び上がりながら両手に持った丸太の様な棍棒を俺に向かって振り下ろす。


 ポップズの開始と言う掛け声と共に生命力プラーナを全開にし丸で人が変わった様な速攻を仕掛けて来たダタンさん。


「ピャッ!?」


 予想して居なかった唐突なダタンさんの速攻と性格の恐ろしい迄の変わり様に、ダタンさんとの手加減抜きでの格闘戦に一旦は覚悟を決めたはずの俺だったが、其の余りの変貌ぶりに下半身の金の玉がヒュンと成りうぶな乙女の様な悲鳴を上げてしまう。


 ズドォ~ンと先程まで俺が立って居た場所にダタンさんの振り下ろした丸太の様な棍棒二本が地面に叩き付けられ爆発した様な音が鳴り響く。


「フシュルルルッ~殺っちまったかな?」


「ダタン貴様!?」


 獣の様な吐息と共にダタンさんが呟く。


 そんなダタンさんにポップズが驚いた様に叫ぶ。


「ふぅ~危なかった。

 ギリギリだったが回避が間に合った。」


「ぬっ!?」


「おぉおぉぉ~!!」


 ダタンさんの振り下ろされた二本の棍棒を驚きながらも俺はギリギリの処で素早く交わして居た。


 地面に叩き付けられた棍棒の影から何事も無かった様に呟きながら出て来た俺を見る成り。


 ダタンさんは片方の眉をピクリと上げると呻く様な短い声を洩らす。


 審判役のポップズは逆に驚愕を表した様に声を上げた。


 ダタンさんが俺の意表を突いて速攻掛けて振り下ろして来た丸太の様な棍棒の攻撃には流石の俺も一瞬は驚いたが、まぁ何だ。生後一歳の頃に見てしまった家の親父殿の赤ちゃんプレー程のインパクトが無かった。


 お陰で直ぐに冷静差を取り戻してダタンさんの攻撃を見切る事が出来たのだ。


 ダタンさんの試合始めと同時行った速攻だが、ダタンさんが奇声を上げた事で奇襲の意味を失って居た。


 そして速攻と言う素早さを生かした攻撃の筈が、ダタンさんが手に持った丸太の様な大きさの棍棒と又振り下ろすと言った単純な動作に寄ってダタンさんの動きや攻撃して来るポイントが分かり易かったと言う点も有り、俺は簡単にダタンさんの攻撃を見切り焦る事も無く必要最小限の動きだけで振り下ろされた棍棒を交わす事が出来て居たのだ。


 何と言うか持つべき物は、幼い子供の前で赤ちゃんプレーをする親父殿だな。


 人は過去に凄惨な体験をし「乗り越える」と似た様な体験をしても差ほど動揺したり混乱したりしないと言う。


 無意識の内に過去の体験と比較してまぁこんな物だろうと在る程度心に余裕が出来るのだ。


 但し此の経験から来る心理的な動きは、経験の少ない者に適応しない。


 其の為に目の前で凄惨な事が起きると動揺の反応が大きく成り一部パニック症状を引き起こしたりする。


 また先に言ったが、凄惨な体験を「乗り越える」と言う点も大事だ。


 乗り越えられない場合は却って心的外傷ストレス障害PTSDを患ってパニック症状を引き起こし易く成るから要注意だ。


 まぁ俺の場合は目の前で突然の事態が起きたとしても、其の突然の事態が親父殿の赤ちゃんプレーを見たと言う衝撃インパクトを越える事態で無い限りは、何とか直ぐに冷静差を取り戻せる訳だ。


 とは言ってもダタンさんの今の速攻も格闘実施試験に置ける受験者の咄嗟に起きる事態に対して如何に冷静な判断が出来るのか、また攻撃を見切って対応する技量が在るのかを確認する為の一つの試験方法なのだろう。


 そうで無ければあんなに優しいダタンさんがワザワザ奇襲前に馬鹿見たいに奇声を上げて此れから奇襲しますよ何て分かり易い事もしないし、また飛び上がって大きな見切り易い武器を振り下ろすと言う直線的で交わし易い攻撃何かして来る筈が無いのだ。


 まぁ試験開始から粋なり殺しに掛かる様な攻撃何て普通はあり得無いからな。


 フフフッ流石がはダタンさんだぜ、殺気まで飛ばして見事な演技だ。


 ポップズの奴に試験で手加減して居ると思わせ無い様にしてる何て演技派の俺は直ぐに気付いたぜ。


 ポップズは逆に、そんなダタンさんの演技に引っ掛って驚いて居る見たいだ。


 そんなんじゃ試験官何て仕事は未々出来無いじゃ無いのかな。


 良し其れなら此処はダタンさんの演技に乗ってポップズの奴を欺くとしょう。


 そう考えるとパターンとしてはダタンさんを煽ってダタンさんに怒らせる振りをして貰いダタンさんが、一気に感情が高ぶって隙を見せてくれるって流れが良いな。


 其所を一撃入れて一本取って試験合格の流れかな?


 フッフフフ~分かりましたぜダタンさん、其の演技乗らせて貰いますぜ。


 俺も演技派ですかからポップズの野郎にバレ無い様に全力で演技させて貰いますぜ。


 そうと決まれば早速。


「ダタンさん、まさか今の攻撃が手加減無しの本気の攻撃って訳じゃ無いですよね?

 遅すぎてあくびが出ちゃいますよ。」


 ダタンさんの演技に合わせて言葉で煽りながら俺はダタンさんの意図が伝わってますよと言う意味合いを込めてバチコーンと微笑みと共にダタンさんにウィンクを送る。


「フッはッ!?初心者ガキは此だから困る。

 頭に乗りやがってぇ、まぁだが良い度胸だドルフ。

 お前見たいな勘違い初心者野郎は、此処でザックリ型に嵌めて見習い期間を与えて遣るに限るぜ。

 そうすりゃ馬鹿な初心者ガキは嫌がおうでも良い護衛者に変わるってぇなもんだぁ!

 ヒャッハー!!」


 すげぇぞ演技派なダタンさん、丸で本当の悪役見たいな事を言ってる。


 おっとダタンさんの主演男優賞も真っ青な演技に感心する前に、怒りの感情に駆られて突進する演技を見せるダタンさんに合わせなきゃな。


 そうは言ってもぶっつけ本番のアドリブだ。


 此処はダタンさんの動きを良く見て対応しなきゃな。


 えぇっと? 両手に一本づつ持った丸太の様な棍棒を地面と水平方向に広げて此方に突進して来るダタンさん。


 しかし演技と分かって居てもダタンさん迫力有り過ぎ。


 同じ演技派の俺じゃ無かったら気付かないぜ。


 ポップズ何てダタンさんの演技に気付かずかなり動揺してるもんな。


 ぷーくすくす。見る目無いぜポップズ試験官は。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る