第15話 勘違い格闘実施試験

 ダタンさんは見掛けに寄らず良い人だな。


 ポップズとか言う人との遣り取りを聞いてみると、急に適性検査試験の申し込みを行った俺に対して怒る事も無く寧ろ親切丁寧に受けてくれた見たいだし。


 初めて護衛者組合ギルドに来た何処の馬の骨とも判らない俺に対してもニコニコと笑顔で対応してくれるもんな。


 本当に人は見掛けに寄らないと言うがダタンさんは其の最たる例だな。


 其れに引き換えダタンさんと違ってさっきから此方を睨んで来るあのポップズって試験官は訳が判らない。


 あれかなポップズって人は領都迄の旅でお世話に成った護衛者のガランさんが言ってた。意味も無く適性検査試験を受けに来た人達を落とすと言う良く無い噂の試験官なのかな?


 そう言えば、ちょっと神経質そうな顔をしてるもんなポップズさんは、うわっまた睨んで来たぞ。


 すげぇ~人を呪い殺さんばかりの視線と顔をしてるヤバいわポップズさん。


 其れに引き換えダタンさんは良い試験官だ。


 俺の適性検査試験を引き受けてくれて本当に幸いだった。


 ポップズさん何て、此方をジッと睨んで来たかと思うと俺と目が合った瞬間に唐突に不思議な踊りらしき動きをするもんなポップズさんは。


 きっとアレだなポップズて人は、前世の日本でたまに街中で見掛けた奇妙奇烈な行動と奇声を上げるアンタッチャブルな人の同類なのかも知れないな。


 若しくは俺のMPでも吸い取ろうとして居るとか、不思議な踊りの再現するポップズさんを見てるとそんな思いに駆られてしまう。


 俺が不思議な踊りらしき動きをする怪しいポップズさんの考察をして居るとダタンさんが声を掛けて来た。


「良しドルフよ。

 格闘実施試験を始めるぞ。

 試験内容は格闘戦だ。

 半刻(三十分)内に俺から一本取る事、勿論俺からの反撃も在るからな。

 どうだ分かり易くて簡単な試験だろ?」


「はい。」


「おう、良い返事だドルフ。

 それじゃあの中から武器を選んで貰うか。」


 ダタンさんがニッと口元を歪めて俺に笑顔を見せると広場の隅に置かれた木で出来た様々な模擬戦用の武器を指差す。


 笑顔はおっかないがダタンさんは本当に良い人だな。


 格闘実施試験の内容は簡単だし、俺としては色々と遣らされる様な複雑な試験とかだったら面倒だと思ったけど、まぁ一本取るだけって言うのはルールとして単純明快で分り易いし優しいダタンさんなら手加減して俺に一本くれそうだ。


 そんな事を考えながらダタンさんから指定された模擬戦用の武器置き場の中から適当な長さの木剣を選んで取る。


「おっドルフは剣を選ぶのか成る程な。

 フムフム。」


 ダタンさんは俺が普通の木剣を選んだ事に感心した様に頷き。そして自分の武器を選んで取り出した。


「オフッ!?」


 ダタンさんの選んだ模擬戦用の武器を見て俺は思わず変な声を出してしまう。


 それは・・・木剣と言うには・・・余りにも巨大過ぎた・・・まるで丸太・・・そう正に丸太の様な巨大な棍棒で有った。


 ヤベェ似合い過ぎるぜダタンさん、更に武器を持った事で見た目の威圧感も半端無い。


 ダタンさんから放たれる奇妙な威圧感を受けた俺は無意識にゴクリと生唾を飲み込んでしまう。


 当のダタンさんは、ふしゅ~っと熱い蒸気を吐き出す様な息を口から漏らしながら丸太の様な棍棒をブンブンと唸らせる程の素振りを始めた・・・ヤダァ、ダタンさんマジ怖い。


 あぁコレってダタンさん明らかに生命力プラーナを使ってるなて分かった。


「二人共ちょっと待って貰おうか。」


 巨大な棍棒を軽々と素振りするダタンさんと其の姿を見てちょっと困惑して居る俺の前にポップズが声を掛けて来た。


「あ~ん?」


 ポップズに声を掛けられたダタンさんが不機嫌そうな声を上げる。


「不正が無い様に私が審判を務めさせて貰うよ。

 良いねダタンさん。」


「チッ、不正何てやらねぇよポップズ。」


 ポップズの提案に軽く舌打ちをするダタンさん。


 もしかしてダタンさんは格闘実施試験の対戦で、俺に一本取り易くする為に手を抜いてくれる腹積もりだったのかな?


 其処で受験で在る俺が適性検査試験を受かり易くしょうと考えて居たダタンさんに対してポップズの奴が不正はさせないと待ったを掛けた訳か。


 くっポップズめ!!ダタンさんと違ってとことん俺の適性検査試験合格の邪魔をしてくれる。


 合格の為に手加減してくれたって良いじゃないか。


 己れポップズめ!ダタンさんの邪魔をせずに広場の隅っこで誰の迷惑にも成らない様に不思議な踊りでも踊って居れば良いものを。


 そんな思いでポップズを見ると何故かポップズの奴は俺の視線に気付いてニッコリと微笑む。


 何だろうポップズのあの微笑みは、そ、そうだあの微笑みは、確か前世の俺が中学時代に親父の仕事用パソコンを使ってエッチな画像を隠れて見て居たのが母さんにバレた時に向けられた微笑みだ!!


 母さんは知ってるのよ。


 お前がお父さんのパソコンを使って勉強すると言いながら何をして居たのかを・・・だから正直に話しなさい。


 ニッコリ・・・氷の微笑・・・カタカタカタ・・・キーボードを叩くお母さんの指・・・閲覧履歴の画面・・・タンと最後の一押し・・・ピッと響く表示音。


 ふあっ!? お母さん止めてぇ~其の履歴はエロよぉ~!!


 辛い・・・前世の過去が辛過ぎる。


 そうだアレは、お前の罪は見逃さないぞって言わんばかりの威圧的な微笑みだった。


 ポップズさんもそうなのか!!


 お前の適性検査試験での不正は見逃さないと。


 クソッなら格闘実施試験はダタンさんの手加減抜きで遣るしかない。


 良いだろう遣ってやる、俺としても望む所だ!!


 楽して護衛者適性検査試験を受かろう何て最初から思って無かったからな。


「ダタンさん、手加減無しで本気の格闘実施試験をお願いします。」 


「お、おう良い心掛けだなドルフ。」


「ド、ドルフ君!?」


 俺の言葉を受けてニチャリと笑みを作るダタンさん。


 其のダタンさんとは対象的にポップズは戸惑った表情を浮かべて俺に聞いて来た。


「良いんだね」


 何が良いのか分からないが、不正何てせずとも俺は格闘実施試験を実力で通って見せるだけだ。


「はい」


「分かりました。

 では・・・試験を始めます。

 審判で在る私の掛け声と共に開始を。

 では・・・・・・始め!!」


 ポップズは俺の決断に対して悔しいのか表情を歪めながらも試験開始の掛け声を出した。

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