第13話 護衛者組織
三階建ての建物に大きく旗と拳の描かれた看板が掲げられ、其の看板の直ぐ下に
開け放たれて居る
反対側の入口から左側は、銀行の窓口の様な受付台が有り、其の台の向こう側にギルドの職員と思われる人達が忙しく働いて居た。
受付台の下にはそれぞれ違った絵と共に受け入れとか受注、支払い等と書かれた看板が飾られ居る。
俺は其の中で相談と書かれて居る受付台の方へ向かう。
相談と書かれた受付台の向こう側に座って居る
「済みません。今お時間宜しいでしょうか?」
「ん?」
元日本人らしく、謝りを入れて相談窓口に座る筋肉モリモリなオッサンに話し掛けてみた。
「え~と其所の受付には、相談窓口と書かれて居ましたので・・・違いますか?
間違いで無ければ少しお聞きたい事が有りまして・・・。」
「あぁ・・・そうだが何か依頼に関する事かな?
それならアチラの方の依頼用受付窓口に行って
筋肉モリモリなオッサンは、俺の姿をジロリと一瞥した後、何故か依頼の申し込みはアチラですよと言ってきた。
「あの~依頼では無く護衛者に成りたくて其の相談に来たんですが・・・。」
「え・・・あぁ・・・済まない。
文字を読んで丁寧な挨拶して来るから、つい見習い商人が店主からのお使いで依頼の申し込みに遣って来たのかと思っちまったんだ。
いゃ~まさか護衛者に成りたいとはな。
悪りいな誤解しちまって。」
筋肉モリモリのオッサンの話から察するに、此の世界での識字率と礼儀作法っての一般の人には関係無い見たいだな。
そう言えば、丁寧な喋り方する人て俺の村には殆ど観なかったな。
唯一、産婆さんと一年に一回来る領主様からの使者で在る税徴収の役人に対して話す時だけ、親父殿が丁寧な口調に成ってたのは、まぁ税徴収の役人は立場上からだけど、産婆さんは普通に怒らせると怖い人だったからな。
それ以外は殆ど丁寧な口調じゃ無かったっけか?
読み書き計算は異世界中世風の世界でのラノベネット小説に於いても必須事項だから俺は産婆さんに頼み込んで教えて貰い勉強したっけか計算に関しては前世の記憶が在るから楽だったけどね。
そう言えば俺が幼い弟に読み書き計算の基礎を無理遣り叩き込んでたら親父殿と一緒に成って弟が文句を言ってたな。
読み書き計算が出来るからって何の足しに成るのか?って・・・。
そんな村での思い出に浸りながら俺は、此の世界ではまだ教育の重要性が一般の人々に浸透して無いんだろうなと考え込んでしまう。
日本の現代人なら教育の重要性を知って居る。
しかし現代でも日本以外の国では、子供に対する教育の重要性を理解して居ない国は多い。
勉強は大人に成っても出来るから別に子供も内からする必要は無いと言って子供達に労働を課す様な国も在るくらいだ。
元々教育と言うのは其の成果が現れるのに時間が掛かる物だから分かり煩いと言う面目ある。
其の為に教育の重要性と言うのが理解され難いと言うのも仕方の無い事なのかも知れない。
「坊主何か真剣に思い悩んで居る様だが、ヤッパリ護衛者の試験受けるの辞めるのか?」
おふっ!?
此の世界と教育に付いて考えてたら相談窓口のオッサンの事を忘れて居たでござるの件?
「いえ!試験受けたいです。
お願いします。」
慌てて答える俺に相談窓口のオッサンが笑顔で頷くと話だす。
「そうか、では護衛者への適性検査試験代として銀貨一枚を出してくれ。」
「はい銀貨一枚。」
俺は直ぐに相談窓口のオッサンに銀貨一枚を渡す。
因みに銀貨一枚でガランさんに紹介された宿屋二日分の宿泊費に成る。
此の世界の貨幣の一番少額は銭貨と呼ばれる貨幣だ。
銭貨五枚で半銅貨一枚。
半銅貨二枚で銅貨一枚。
銅貨五枚で半銀貨一枚。
半銀貨二枚で銀貨一枚。
銀貨五十枚で半金貨一枚。
半金貨二枚で金貨一枚。
金貨百枚で半白金貨一枚。
半白金貨二枚で白金貨一枚と成る。
此の世界の一般庶民の月の収入が平均銀貨十五枚程だと聞く。
決して安くは無い額だ。
「試験日はどうする?」
「今からでも大丈夫ですか?」
「あぁ問題は無い。
じゃあ此の書類に目を通して書いて貰えるかな?」
「分かりました。」
俺は相談窓口のオッサンから渡された用紙に目を通して名前や生年月日に出身地の村の名前を書いて行く。
そして書き終えるとその書類を窓口のオッサンに渡す。
オッサンは俺から受け取った書類に目を通してウムッと感心した様な声を出す。
実は此の護衛者試験受付の書類を書く事も護衛者の適性検査試験の一つで在る。
それは簡単な読み書きが出来るかと言った試験で、此の書類を見て内容を把握し理解して書けない時点で減点される仕掛けだ。
護衛者適性検査試験の内容に付いては、ガランさん達から旅の途中で聞いて居たので問題は無い。
テスト前の予習復習ホントに大事。
まぁ始めの適性検査試験に措ける読み書きが出来るからと言って適性検査試験が終わりと言う訳では無い。
次は別の部屋で簡単な計算と魔獣や魔物、野草に付いての記述だ。
「それじゃドルフ。
適性検査試験を行うんで俺に着いて来てくれ。」
「はい、宜しくお願いします。」
オッサンに連れられて
案内されて階段を上がり二階の直ぐ側に在る部屋へと入った。
部屋の中は、何処か学校の教室に似た作りに成って居た。
「それじゃ其所の前に在る席に付いてくれ。」
「はい」
俺が指定された席に座るとオッサンは部屋の中に設置された教壇の様な机の引き出しから一枚の紙と筆記具を取り出して渡して来た。
「筆記試験の問題用紙だ。
時間は・・・そうだな街の鐘の音が聞こえたら終了と言う事で。」
「は?」
初めて来た街の鐘の音が何時鳴るのか分からないのに急にそんな事を言われてもと戸惑いながら俺は素早く受け取った問題用紙に書き込んで行く。
軽い計算問題と画かれた魔獣や魔物の名前と薬草等の名前が五十問あった。
必死に問題の空欄を埋めて行き最後の問題を解いた所で外から「ガラ~ンゴロ~ン」と鐘が鳴る音が聞こえて来た。
危ねぇ此の筆記試験の時間は殆ど二十分も無かったぞ。
焦った俺とは対象的に。
「おっ間に合ったか、中々遣るな。」
オッサンは感心した様に呟くと俺の書いた筆記試験の問題用紙を取って正答をチェックし始める。
「おぉ~凄いなドルフ。
三十五問正解の七十点だ。
筆記は合格ラインだな。」
嬉しそうにウンウン頷きながらチェックし終えた問題用紙を俺に見せて来る。
十五問ほど魔獣や魔物に薬草の名前を間違えて不正解の印が付いて居たが同やら筆記試験は通った様だ。
良かった。しかし護衛者適性検査試験は此れで終わりじゃない。
本番は最終試験で在る。
「それじゃ格闘実施試験を行うとするか、場所を移すぞ。」
何か嬉しそうに俺を見る筋肉モリモリのオッサンは口元をニッと吊り上げて格闘実施試験の場所へと俺を連れ出すのだった。
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