第12話 到着

「ガラン前方にゴブリンの群れだ。」


 ガランさんと一緒にバーチスさんの隊商キャラバンの護衛をして居た護衛者の一人が声を上げる。


「数は?」


「三十、内ホブ四!!」


「ゴブリンが群れて居る内に先制攻撃を掛けるぞ。

 ゾマホ準備は良いか!!」


「あいよ。

 準備はもう出来てるぜガラン。

 距離も十分、射程も範囲内だ。

 弾ぜろ『エクスプロス』!!」


 黒いローブを着た護衛者の男ゾマホは、ガランの言葉に応えると右手に持った杖を隊商キャラバンの進む先へと向けた。


 すると三秒程の間を置いて隊商キャラバンの前方五百メートル先に小規模な爆発が起こった。


 吹き上がった爆炎と共に緑色をした人型の何かが複数空中に舞うのが見えた。


「殺ったか?」


 ガランの問に最初にゴブリンの群れを発見した護衛者の男が答える。


「十は行ったかな。

 ん~残り二十って処だ。

 内ホブは二残った。」


「上出来だ。

 ゾマホは隊商キャラバンを護れ。

 ローグは弓で援護をゴブリンを近付けるな。

 残りは俺と撃って出るぞ。」


「「「オウ!!」」」


 隊商キャラバンを護って居た護衛者達が一斉に前方に居るゴブリンの群れに向かって走り出す。


 ゴブリンの群れは突然の爆発の影響で混乱して居る。


 其所を隊商キャラバンの護衛者達に突かれて物の数分で呆気なく殲滅されて行く。


 ゴブリンの群れ寄りも遥かに少ない護衛者の連係に寄る戦い。


 倍の数は居る筈のゴブリンの群れがあっさりと殲滅する。


 そんな護衛者達の戦闘を俺は荷馬車に積まれた荷物の上に乗り見て居た。


 混乱するゴブリンの群れに突っ込んで行った護衛者達の中には、明らかに俺と同じ生命力プラーナを使う者が複数人居た。


 そう言えば村の産婆で在るオネルさんも騎士や護衛者の中に生命力プラーナを使った闘気術とうきじゅつ成る格闘術を使う人達が居るって言ってた事を思い出す。


 最初にゴブリンの群れを発見した弓使いのローグと言う護衛者に至っては他の生命力プラーナを感知する術に長けて居る様だった。


 それにゾマホって言う黒いローブを着た護衛者は魔力を使った攻撃魔法の使い手だった。


 成る程、護衛者って言うのも色々なタイプの人が居る様だ。


 知れば知る程に此の世界の戦い方に感心するばかりだった。


 それ以上に俺が予想して居た以上に生命力プラーナを使う者が多い。


 俺も其れなりに生命力プラーナを鍛えて来たが護衛者半端無いって感じた。


 其の後、街迄の数日間に隊商キャラバンが魔物や魔獣に数度ほど襲われたが護衛者達に寄って問題なく魔物や魔獣は殲滅される。


 お陰様で俺自身が戦うと言った事も無く、無事に護衛者の組合ギルドが在る大きな街の領都に着く事が出来た。


 領都は周囲を高さ五メートルは有る城壁で囲まれた城塞都市だった。


 ガランさんの話しに寄ると城塞都市の城壁は、魔法を使って造った土壁を土台にして煉瓦で補強した物らしい。


 ゾマホの様な魔法が使える護衛者がたまに貴族や国に雇われて城壁用の土壁を造らされる事が有るらしく。


 隊商キャラバンを護って居る魔法使いの護衛者で在るゾマホさんも若い頃に、小遣い稼ぎで城壁造りに参加したと話て居た。


 魔法のお陰で城壁建築の費用も少なく簡単な事から、魔物や魔獣が居る此の世界での主要な都市は、殆どが城塞型の都市に成って居るとの事だ。


 そして城壁を越えて目的地で在る領都の中に入った。

 

 バーチスさんの隊商キャラバンと一緒だった事で街の門番を務める衛兵達から何の質問も受けなかった。


 通常だと身分証とか街への通門料金が取られるらしいがバーチスさんの隊商キャラバン仲間だと思われた様で素通り出来た。


 そして街に入った俺は此処まで御世話に成った人達に別れの挨拶を告げる。


「此処まで送って下さり有り難うございました。

 御世話に成りましたバーチスさん、ガランさん。」


「まぁ旅は道連れ世は情けと言いますからね。

 ドルフ君も立派な護衛者に成れる事を祈ってますよ。」


「じゃぁな坊主、最悪適性検査に落ちたら俺の所で弟子にして遣るからよ。

 あんま気張り過ぎんなよ。」


 隊商キャラバンと共に目的地で在る領都に入った俺は、隊商キャラバンの長で在るバーチスさんと旅の途中で護衛者に関する事を色々と教えて貰ったガランさんに一通り挨拶を終えて別れる。


 去って行く隊商キャラバンへと頭を下げると隊商キャラバンを警護して居た護衛者の人達が一斉に手を振ってくれた。


 そして俺は短い旅の間に世話に成った人達との別れの余韻に浸る間も無く直ぐにガランさんが教えてくれた安宿へと向かい部屋を借りる事にする。


 安宿の主人は老婆で、若い頃に護衛者を遣って居た人らしく、ガランさんも見習い時代に色々と御世話に成ったと聞いた。


 ガランさんから色々って聞いてちょっとエッチィ事を期待したが無いな。


 寧ろ宿屋の受付カウンターに居るお婆ちゃんを見て俺は内心でガランさんストライクゾーン広すぎって言うか何処の勇者だよってっ下のネタが過った。


 そんな下衆の勘繰りをして居る俺に対して宿屋の店主で在る婆さんはガランさんの紹介で来たと告げると笑顔で迎えてくれた。


 こう言った此の世界の紹介制度は本当に助かる。

 

 日本では最近見られなく成ったが、外国だと基本的には未だに紹介制度が幅を利かせている。


 就職でも飛び込みでの新卒採用は殆ど皆無と言って良い。


 海外で就職するには人脈やコネなどの紹介状が在るのと無いのでは大違いと聞く。


 国に寄っては会社を辞める際にも、上司からの紹介状見たいな物を貰う必要が有り、それが無いと他社への再就職も難しく成ると聞く。


 海外の人々が良く日本の若者達の就職活動に対して問題を指摘して来るが、実際は海外の方が人脈やコネを必要とする社会だったりする事から新卒の人達の就職が難しく成って居ると言う指摘も在る。


 まぁコネと人脈さえ有れば就職が楽に成ると言う意味では良い社会なのだろうが、コネも人脈も無い人達からすると明らかに問題の在る社会だ。


 確かに問題デメリットが有る制度だがコネや人脈に寄る紹介が在ると言う事で起こる利益メリットも多い。


 知り合いからの紹介と言う事で危険な客を前持って排除する事も出来るのだ。


 昨今ではネットの普及で誰でも簡単に店と客がアクセス出来る為に起きる問題が多い。


 其の事を考えると個人同士の信頼関係から来る紹介制度と言うのは確実に問題が起き難いと言える。


 特に現代の日本の様なネットワークシステムが存在しない此の世界の文明段階だと遥かに紹介と言う制度システムは店にも客側にも重要に成って来る。


 下手に怪しい客寄りも紹介の在る信頼の置ける客の方が宿屋の店主としても安心出来るからだ。


 そう言った意味では、此の世界での人との繋がりの重要性を再認識する。


 さて部屋も借りて領都での根城も確保出来た。次は目的の護衛者組織ギルドに向かう事にするとしょう。

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