第11話 田舎者は街に行く。

 十五歳に成って晴れて村から出発する俺は、トレント素材を買い取りに来て居た商人達の隊商キャラバンの手伝いを兼ねて街まで案内して貰う事に成って居る。


「お世話に成ります。

 ドルフと言います。

 よろしくお願いします。」


「おぉ若いのに礼儀を知ってるね。

 私はバーチス、此のキャラバン隊の商長だ。

 此方も街までよろしく頼むね。」


 恰幅の良い日除け帽子を被った中年の男バーチスさんが頭を下げて挨拶する俺に笑顔を見せて名乗ってくれた。


「それじゃドルフ君には早速トレントの木材を荷馬車に載せるのを手伝って貰うかね。」


「はい」


 明るく挨拶を交わしバーチスさんに連れて来られのは村でトレント素材の材木が山の様に積み上げられた場所だった。


「おっ!ドルフも手伝ってくれんのか?」


「た、助かった。」


 村の自警団に参加している大人達が俺を見て喜んで居る。


「皆さんが積んで居たんですか?」


「あぁ荷積みの仕事も金に成るからな。

 それ寄りもドルフが来てくれて助かったよ。」


 そう言うと村の広場に山の様に積まれたトレント素材の材木へと視線を向ける。


「此を全部荷馬車に積むんですか?」


「いやぁ違うよ。今日主発するバーチスさんの隊商キャラバンの分だけさ。

 とは言っても二十台の荷馬車一台一台にトレント素材の木材を十本ずつ積まなきゃならねぇんだけどな。」


「応よ。でやっとこさ四台までは積んだんだが、残りが十六台分ある。」


 村の大人達がため息混じりに残りの荷馬車を見る。


「分かりました。

 僕もバーチスさんに隊商の手伝いをして欲しいと言われて居るので運ばせて貰います。」


 軽い返事を返すと俺は生命力プラーナに寄って身体を強化する。


 そして広場に積み上げられたトレント素材の材木を次々に荷馬車へと移して行く。


「ドルフは本当に村を出て行くのか?」


「えぇ叶えたい野望やぼぅゆめが有りましてね。」


 危ねぇうっかり口を滑らせてハーレム野望の事を口に出す処だった。


 野望と言う寄りも夢って言った方が聞いた側の人に変な印象を与えないからな。


 言葉一つ取っても村の生活は気を使うぜ。


「そっか、でドルフが街に行ってまで叶えたい夢ってのは何なんだ?」


「護衛者に成って活躍する事ですね。」


「ヘェ~護衛者ね。ドルフなら直ぐに成れるだろうよ。」


「だと良いんですけどね。」


 両親にも村を出て街に行くのは護衛者に成りたいからって言ったけど、俺が護衛者に成る本当の目的はハーレムモテモテ伝説の野望の為の手段で有って目的では無い。


 だがモテる男は普段からお下品な事は言わない物だぜ。


 フッ、モテる男に成るのも辛いもんだ。


 サクサクと荷積み作業を終え、村の大人達と他愛無い会話をして居ると隊商キャラバンの若い男が声を掛けて来た。


「そこ、無駄話してないでさっさと積み込んでくれないかな?」


「え?

 もう積み終わりましたけど。」 


「はぁ?」


 村の大人に言われて隊商キャラバンの若い男が荷馬車の方へ視線を向けると既に二十台の荷馬車には規定通りにトレント素材の材木が十本づつ積まれて居た。


「え、アレ? 

 さっき迄は四台しか積まれてなかったのに・・・えっ?

 ど、どうやって?」


「ちょっと呆けてないで、此れ積み込み終了の確認の書類にサイン下さいよ。」


「あ、はい。」


 俺が積み込みの手伝いに来てから三十分も掛からずに残り十六台の荷馬車へ積み込みを終えていたのだ。


 俺が手伝いに来る前には四台の荷馬車に積むのにも数時間掛かってた。


 だから何も知らない隊商キャラバン側の人から見たら荷馬車への積み込みをサボって村の大人達がダラダラと世間話をして居ると勘違いしたんだろう。


 隊商キャラバンの若い男は荷積みが完了して居る二十台もの荷馬車を観ながら首を傾げる物の隊商キャラバンの出発が早まる事を優先して長で在るバーチスさんの元へと向かって行った。


「ドルフありがとな。」


「街に行って変な奴に騙されんなよ。」


「辛く成ったら何時でも村に戻って来いよ。」


 村の大人から今日の積み込みの仕事が早く終わった事に対して感謝と共に別れの挨拶を貰った。


 バーチスさんの隊商キャラバンの荷馬車への積み込みが早く終わった事で直ぐに村から出発する事に成った。


 ゆっくりと故郷の村から出て街へと向かうバーチスさんの隊商キャラバン、其の最後尾の荷馬車に腰掛けながら離れて行く育った故郷の村を眺める。


 何も無い田舎の村なのに何か離れ難い気持ちに成る。


 俺は村が見えなく成る迄ずっと遠ざかる故郷の村を揺れる荷馬車の上で眺めて居た。


「別れは済んだか坊主。」


 村の方を眺め続けて居た俺に背後から誰かが声を掛けて来た。


「え、あっはい。」


 急に声を掛けられた事に驚きながら振り向くと其処には鉄の胸当てと剣を装備した中年の男が居た。


「貴方は?」


「此の隊商キャラバンの護衛を請け負ってる護衛者のガランってもんだ。

 バーチスさんから聞いたぜお前さん護衛者に成りたいんだってな。」


「えぇそうです。」


 俺は初めて見る護衛者にちょっと興奮する。


 何せ村では護衛者と言う者の存在は知って居ても護衛者自身が何をする仕事なのか、またどうすれば成れるのかは深く知られては無かったからだ。


 俺が護衛者に成りたいと言う話を何処からか隊商キャラバンの長で在るバーチスさんが聞いたのか、気を利かしてくれた様だ。


 其処で俺は此の機会に護衛者で在るガランに対して護衛者に付いて訊ねる事にした。


 ガラン自身も旅の空いた時間の良い暇潰しに成ると思ったのか俺に護衛者に付いて話てくれた。


 此の世界で言う護衛者と言うのは傭兵職と便利屋を兼ねた様な職業で、ゲームやラノベ小説に出て来る冒険者に似た仕事をする。


 元々は商人達の組合ギルドが街から街へと商品を運ぶ際に魔物や魔獣それと盗賊等から身や商品を守る為に護衛する者達の専門の下部組織を作った事から始まったと言われて居る。


 商人の組合ギルドの下部組織として始まった護衛専門の組織は、時間と共に他の生産系の組合ギルドや貴族等個人の護衛を行う様に成りやがて商人組合ギルドの下部組織から独立し護衛者組合ギルドと成った。


 護衛者組合ギルドは基本的に護衛をする事が仕事の為に其の基本姿勢は中立で在る。


 其の事から傭兵の様に国家間や組合ギルド同士の争いには参加しない。


 建前上では、しかし何事にも抜け道と言う物が在る様に組織ギルドとして争いへの参加は無いが、個人としての参加は黙認されて居るのが現状の様だ。


 大事な話としては、護衛者に成るには大きな街に在る護衛者の組合ギルドに登録する必要が在る。


 また登録する際には適性検査が合格すれば直ぐに護衛者には成れるが、失格すると護衛者に一年ほど弟子入りしてしか再適性検査は受けられ無いとの事だ。


 其の事から俺はガランさんに適性検査の内容と護衛者に取って必要な事を街に着く迄に教わる事にした。

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