第10話 オラ街さ行くだぁ。

 其の後、数日掛けて村近くの森で大量発生した魔物のトレントを村の自警団で伐採しまくった。


 エルダートレントを退治した事で村近くの森のトレントはみるみる内に其の数を減らして行った。


 其の事から俺の倒したエルダートレントが、今回のトレントの大量発生の原因だと関連着けられ村近くの森でのトレント大量発生騒動は終息を迎える事に成った。


 しかも今回のトレント騒動は何も悪い事ばかりでは無かった。


 其の一つがトレントの素材で在る。


 トレントは其の頑丈差から通常の木材寄りも建築材としての人気や需要が在る。


 今回トレントの大量発生に寄って奇しくも家の村では多くのトレント素材を伐採する事が出来た。


 其のお蔭で家の村ではトレントの素材の売買で潤う事に成った。


 領主様経由でトレント素材の情報を聞き付けた材木を扱う商人達が村に訪れてちょっとしたトレント素材バブルに成った。


 今回のトレント騒動で、死人は出なかったが骨折等の怪我人が出て居た為に村の自警団では治療の為の薬や怪我した団員の家族に対しての慰労金も必要だった事で、自警団としては助かった感じでは在る。


 俺が産婆さんだと思って居た老婆のオネルさんは、実は此の村では薬師と魔法医師も兼ねた偉い人だった。


 今回のトレント騒動で出た怪我人の治療や怪我を治す為の薬作りに多忙を極めて「全く年寄りをこき使うんじゃないよ。」と愚痴を溢して忙しそうに村の中を走り回って居た。


 それとエルダートレントの素材は、葉や根っ子は薬に、枝は魔法使いの杖や武器の柄や鞘、果ては防具にも使われるくらい捨てる所の無い素材らしい。


 幹の部分に関しては貴族の家や城の柱等と色々需要が在るらしく高値で売れた。


 俺はエルダートレントの太い枝を一本報奨として貰う事に成った。


 売れば其れなりの値段に成るらしいのだが、俺は既に使い方を考えて居たので売る事はせずに手元に残した。


 そして今回の騒動を節目に十五歳の成人と成った俺は、此を機会に街へと出る事にした。


 親父殿や母上と少し揉めたが、最後は両親とも俺の気持ちを汲む形に成った。


 其の代わりとして俺は両親と話し合い長男で在る俺が持つ家と畑を継ぐ権利を弟のアレクへと渡した。


 弟のアレクはまだ十歳だが、彼女も・・・居るし・・・ギィギィギィ~に、憎い~兄寄り先に彼女を作る優秀な弟がぁ~憎い~・・・ハッ!危ない危ない。


 危うくアレクの胸に星座もした七つ傷を作る処だったフゥ~危ない。


 まぁ俺が街に行けば彼女何て直ぐに選り取りみどりですよ。


 そう自分に言い聞かせて俺は夢のハーレムモテモテ伝説の旅に出る事にした。


 少しの着替えと干し肉にパンを鞄に詰め込む。


 親父殿が僅かばかりのお金を俺に渡してくれた。


「其の金は貸しただけだからな、だからちゃんと返しに来いよ。」


 親父殿・・・セコイな。


「ドルフ、お父さんはね。

 街でお前が無事に成功して村に帰って来れる事を祈って「お金を貸した」って言ってるのよ。」


 俺の心を読んだ様に母上が親父殿の心情を俺に伝えて来た。


「親父殿・・・。」


 顔を横に向けて俺からの視線を反らし、ブスッとした顔した親父殿が恥ずかしそうに耳迄赤くして居た。


「利子も付けるからな・・・十一といちで・・・。」


「あなた!!」


 最後は本気なのか冗談なのか分からない事を呟いた親父殿が母上に叱られて居た。


「僕は兄ちゃん見たいに行動力ないからな~兄ちゃんが羨ましいよ。」


 弟のアレクが旅立つ俺に向かって、そんな事を言う。


「はっはぁ~其の年でグレタちゃんと言う可愛い彼女を作って置いて行動力が無いだ何て・・・優秀な弟は・・・何本で死ぬかなぁ~?」


「痛い痛い!兄ちゃん辞めてよ。マジで指が胸に突き刺さりそうだったじゃないか!!」


「ハッ!危ない危ない。兄寄り先に彼女を作る優秀な弟に対して嫉妬心からマジで胸に七つ傷をくれてやる処だった。」


「も~兄ちゃんたら変な冗談ばっかり言って。

 街では辞めた方が良いよ、そんな冗談は。」


 素直で優しく可愛い彼女が居る優秀な弟のアレクに対する本心を冗談とな?


「あはははは~そうだな街では気を付けるよ。」


 血涙を流しそうな目で棒読みの台詞を口にする俺を、親父殿と母上が残念な生き物を見る様な目で見て来る。


 おふっ両親の俺を見る目が、旅立つ自慢の息子を見送る親の目じゃねぇ。


 ドナドナされる子牛を見送る目に成ったよ。

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