第9話 田舎かッぺ大将は野望を抱いて街へ行く。

「おらぁ!」


 生命力プラーナを使った身体強化と武器の手斧を強化すると俺は気合い一閃、目の前に現れた古木の魔物で在るトレントを倒した。


 トレントは古木が魔力の影響を受けて魔物化した存在だ。


 動きは鈍いが其の分、硬い身体を持つ厄介な魔物だ。


 習性としては待ち伏せで獲物を捕らえて養分にする食中植物に似て居る。


 其のトレントが家の在る村近くで大量発生した。


 俺は今では十五歳に成っており既に数年前から村の自警団に参加しては村近くに現れた魔物や魔獣を狩る仕事を任され居た。


 生命力プラーナを鍛える続けて居た事も有り並みの大人達寄りも強く成って居たからだ。


 それと俺の親父殿が此の村の自警団長を勤めて居た事も合間って早くから親父殿の手伝いも兼ねて自警団に参加して居たのだ。


「兄ちゃんスッゲェ~!!」


 硬い身体を持つトレントを一撃で斬り倒した俺を見て五歳下の弟が歓声を上げる。


 勿論、あの両親の夜の営みを覗いた日に御懐妊して出来た弟だ。今年で十歳に成る。


「なぁにアレクお前だって直ぐに出来る様に成るさ。

 俺の教えた通りに毎日、生命力プラーナの訓練をちゃんと続ければな。」


「し、してるよ。」


 そう言うと弟のアレクは倒れたトレントをズリズリと力を込めて引き摺り荷車の下まで運ぶ。


 前世の記憶が在る俺と違い普通の子供だったアレクには物心が着いた五歳頃から生命力プラーナの鍛練法を教えて居る。


 しかし弟のアレクは普通の子供で在る。


 前世の記憶を持つ俺みたいに幼い頃から目標持ち意識的に訓練する事は無い。


 其の為に十歳の時の俺程には生命力プラーナを練る事が出来ては居ないが、其でも普通の十歳児に比べれると遥かに強力だ。


 実際に普通の大人が二人係りで運ぶトレントを引き摺りながらも一人で運んで居る。


 まぁ俺が十歳の時は担いで走り回ってたけどね。


 親父殿も一人で担ぐ事は出来たが走り回る事は出来なかった。


 其の為か、トレントを何とか引き摺って運ぶアレクに優しく接する。


「アレク、其れが普通だ。

 ドルフを見習うのは良いがドルフを目標にするのは辞めときなさい。

 身体を壊すから。」


 そう言って親父殿は自分の腰をトントンと叩く。


 五年前に俺に親父らしい処を見せ付け様として、大きな丸太を一人で二本持ち上げる何てバカな事をした為に、ぎっくり腰に成った経験からの一言だ。


「う、うん」


 弟のアレクは素直に頷くと荷車の側に居る親父殿に引き摺って来たトレントを渡した。


「ヨッコイショッと!」


 親父殿は掛け声と共に軽々とトレントを荷車に載せる。


「父ちゃんもスゲー力持ちだぁ!!」


「フフフっ何せドルフとお前の自慢の父ちゃんだからな。」


 アレクに対して親父殿が誇らしげに二の腕に力瘤を作って見せる。


「父ちゃんも兄ちゃんもスゲー!!」


 素直に驚く弟のアレクは母上の性格に似て居る。


 因みに弟のアレクは生意気な事に彼女が居る。


 近所の家のグレタちゃん八歳だ。


 俺が産まれた時は同年代の子供や近い年代の子供が居なかったし殆どボッチだったのに、アレクが産まれた時は村中で降って湧いた様なベビーラッシュだった。


 くっ、悔しく何て無いからね。


 ボッチだったからこそ生命力プラーナの鍛練に打ち込めたんだからね・・・・・・・・・・くそぉ~アレクが憎い~兄寄りも早くに彼女が出来る弟など許せるかぁ~。


 ハッ!?本音が!!危ない危ない俺は良いお兄ちゃんに成るんだ。


 家は別に北の一子相伝暗殺拳の伝承者家系でも無いんだからね。


 それに俺は今日から晴れて十五歳の成人だ。


 此れを気に村を出て街さ行くんだぁ。


 街さ行ったならオラ、護衛者に成るんだぁ。


 そんな妄想に吹けながらトレントをバッサバッサと斬り倒しては投げ斬り倒しては投げして居ると自警団の人が此方へと慌てて駆けて来た。


「ト、トムさん!!

 エルダートレントだ。

 エルダートレントが出て来た!!」


 親父殿は荷車にトレントを載せて居た作業を辞めて直ぐに手に斧を持つ。


「分かった。直ぐに行く場所は何処ただ!」


 普段みれない戦いを覚悟した親父殿の顔を見た弟のアレクが緊張する。


 エルダートレントはトレントと違い動きが早く更に身体が硬い。


 村の自警団の複数人で掛かって被害を出しながら倒せるかどうかだ。


 そしてエルダートレントは普通の木をレッサートレントに変えて使役する事が出来る。


 此のトレントの大量発生の原因かも知れない。


「ノビン達が受け持ってる場所だ。」


 駆けて来た自警団の人が指を差しながらエルダートレントの出た場所を親父殿に教えてる。


「あい分かった。」


 返事と共に親父殿寄りも先に俺は駆け出した。


「ドルフ!?ま、待て!此処は俺がぁ~」


 停める親父殿の声を置き去りにして駆け出した俺は久しぶりに体内の生命力プラーナを全開にする。


 生命力プラーナに寄って俺の強化された身体が、走ると言う寄りも木々を蹴って飛ぶ様な動きへと変わる。


 カカカカッカッ!!と連続で木々を蹴って合間を飛び抜けて行く。


 五百メートル先に居た自警団のノビンさんの下に僅か六秒で到着する。


 目の前にはエルダートレントの枝に捕まり補食されそうに成って居る自警団の人達が二人見えた。


 迷わず飛び付き様にエルダートレントの枝に捕まって居る二人を助ける為に手に持った手斧に生命力プラーナを流して強化すると空中でエルダートレントの枝を切り落とす。


 キンキン!と俺の振るった手斧を受けたエルダートレントの枝が硬質な金属音を発て切り落とされる。


 手応えが木を斬った感じの物ではない事に軽く驚くが、しかし俺に取っては斬れない事も無い。


 バサッバサッとエルダートレントの枝ごと捕まって居た自警団の人達が地面に落ちる。


 下は腐葉土の溜まった土の上なので変な落方をしない限りは軽傷で済む筈だ。


 今は落ちた人を助けて居る時間が無い。エルダートレントは動きが速い上に、周囲の木々をレッサートレントに変えて使役する能力が在る。


 そう一瞬で判断した俺は、エルダートレントに時間を与えるのは悪手だと考えた。


 其の為にエルダートレントの枝を斬った後、直ぐに着地せずに空中で身を返すと共に手斧に生命力プラーナを圧縮して込めると太いエルダートレントの幹に横一閃で叩き込む。


 俺が横に振るった手斧とエルダートレントの太い幹がぶち当たるとギャリッ!と一際大きな金属を擦り合わせた様な音が森に響いた。


 横一閃に振り抜いた後に俺の持った手斧が、エルダートレントとの硬い身体との衝突エネルギーに耐えきれずバキンと音を発て砕け散った。


 手斧が砕け散る音に勝ち誇った様にエルダートレントが動き出す・・・が其のエルダートレントの身体が思い出した様にズルリと擦れて斬れ倒れる。


「ギギギギギ~ッ!?」


 エルダートレントが最後に驚愕した様な断末魔を上げた。


「ふっまた詰まらぬ物を斬ってしまったか。」


 着地後立ち上がりざまに決め顔で〆の台詞を口にする俺の頭に遅れて現場に到着した親父殿の拳骨が降って来た。


「こ、此のバカチンが!!」


 ゼェゼェハァハァと息を切らせながら親父殿が無断で飛び出して行った俺に対して怒って居た。


 周囲に居た自警団のノビンさんや俺にエルダートレントから間一髪で助けられた人達が慌てて飛び出し「まぁまぁ落ち着いて」と親父殿を抑えながら俺の下から引き剥がした。


「ドルフお前が強いてはのは分かる。

 だが自警団長の俺の命令も聞かずに飛び出す何て無茶だけはするな!!

 分かってのか?」


 怒る親父殿の形相を見る限りでは、命令を無視した事では無く、後先考えずに飛び出した息子おれの行動を心配した事から出た怒りらしい。


 仲間の自警団寄りも息子の心配をするのは自警団長としては立場上どうかと思うが、息子としは歯痒い気持ちに成る。


 だから俺は素直を親父殿に頭を下げる。


「親父殿済まない。」


 そんな俺の気持ちも分かったて居るのか親父殿はムスッとした顔で返事をした。


「たが自警団の仲間を救ったお前の判断は間違いじゃね。

 お前の行動は危なかしいが、それでも俺に取っては自慢の息子だ。」


 親父殿はそう言うと苦笑気味に顔を綻ばせる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る