第157話 水着宣伝イベント・11

No157

水着宣伝イベント・11



 休憩所で遭遇したアロハシャツを着た老人と知り合い、今は老人と一緒に浜辺を歩いている。

「ご老人、先程は急な出会いの為に自己紹介が遅れました。私はセイジロウと言います」

「ほっほっ、先は世話をかけたのぅ。ワシはドラグニールじゃよ。ドラグでよいぞ」


「では、ドラグさんと呼びましょう。ドラグさんは旅人だと言ってましたがルインマスは始めてですか?」

「そうじゃ、ワシも歳をとったからのぅ。住みやすい隠居住まいを探しての旅でのぅ。ルインマスは始めて訪れたんじゃよ」


「そうでしたか。私はハルジオンの街出身で火水季に入るぐらいに来たばかりなんですよ」

「ほぅ、そうなんじゃな。おぬしも旅人じゃったか。旅人同士仲良くしたいものじゃな。して、この水着を着て海辺で遊べば良いんじゃな?」


 ドラグさんは、青いハーフパンツの水着をレイリーンさんの水着販売所で購入した。老人のわりに引き締まった体躯をしている。腰も曲がっておらずまだまだ活力に溢れた姿だ。


「えぇ、そうです。海辺ではマーマン種の方達が水球を作り出してその中で泳げますし、海辺で遊んでる人達と一緒に遊ぶのも良いでしょう。後は浜辺で食事やお酒を楽しむのも自由です。今回は食事やお酒は無料ですので楽しんでください。他に分からない事があれば私に言ってくれれば対応しますから」


 海水浴イベントの簡単な説明をドラグさんに説明した。

 ドラグさんは、物珍しそうに海辺で遊ぶの女性客達に視線を送りながら話を聞いてる。


「説明までしてくれて助かるのぅ。では、ちょいと楽しんで来るかのぅ。セイジロウとやら、また後で会おうぞ」

 と、スタスタとドラグさんは海辺へと向かった。

 俺は、夕方のイベントの為にスレイブさん達と魔法師の方達との打ち合わせに向かった。


△▽▽△△▽▽


 浜辺の隅にスレイブさんと魔法師の方を集めて夕方の魔法演舞について打ち合わせを話し合う。

「スレイブさん、マーマン種方達の魔力はどうですか? この後の魔法演舞は行けますか?」

「うむ、とくに問題ない。海の魔物討伐も思った以上より余裕があったからな」


「そうですか。魔法師の方達はいけますか?」

「わたし達も問題ない。これといって魔法は使っていないからな。最後の魔法演舞ぐらいは花を飾りたいと思っている」


 万が一の為の戦力として冒険者ギルドから集めてもらった魔法師達は今までに出番がなく、まだまだ元気だった。


「なら、事前の話より派手に行きますかっ! 逆にマーマン種の方達には少し抑えてもらいましょう。魔法師の方達は派手にやって下さい。合図は私が出します。それと、マダラも参加しますからよろしくお願いしますね」

 と、魔法演舞の打ち合わせが終わり準備に取りかかった。



 俺は浜辺に高台を土魔法で作り風魔法の補助を使い、海辺で海水浴を楽しんでる人達に説明を始めた。


「海水浴イベントに参加してくれた皆さんっ! これより、十分後にイベントの最終演目、マーマン種と魔法師、それから私の従魔のマダラによる魔法演舞を開催します! 海辺で遊んでる方は料理とお酒の準備をしてご覧下さいっ!」


 説明を始めるとみんなが浜辺へと上がり始め、鉄板焼き店や露店に列を作り料理やお酒を片手に観覧へと移っていった。

 それから十五分ほど経ち海辺に人がいなくなると俺は説明を始めた。


「では、これより魔法演舞を始めます!」

 と、片手をあげて合図を出した。


 すると、マーマン種の人達が打ち上げ花火のように空へと魔法を打ち上げた!


 打ち上げた魔法は空で弾けると、様々な形の氷の造形が咲き乱れた。花びらを象った物や動物の形をした物、大輪のような美しい形が次々と打ち上がっては上空にキラキラと舞っていく。


 俺は間髪入れず、さらに片手をあげて魔法師達に合図を送った。すると、今度は火の玉が上空に次々に打ち上がり派手に空を彩っていく。


 そして、上空には氷と炎が混ざり合い幻想的な光景を作り出していった。

 氷が上空で弾けると夕暮れの陽が氷の破片に反射してキラキラと光り、炎が弾ければ空から流れ星が落ちるように軌跡を空に描いていった。


 そんな魔法乱舞が途切れると同時に、辺り一帯に獣の咆哮が響いた。


「続きましては、私の従魔マダラが魔法演舞を見せます! 午前では水獅子でしたが今回は炎狼をお見せしましょう! ご覧下さい!」

 と、片手をあげて合図を出した。


 すると、マダラと同じぐらいの大きさの炎狼が海の上を走って来た。すると、マダラと炎狼は互いに上空へと大きな火の玉を打ち上げた。


 すると、上空に大きな炎の大輪が花ひらいた。それを、お酒や料理を片手に観覧してるお客達は歓声を上げる。

 さらに、マダラと炎狼は海の上を自由に駆け回り互いに次々に上空に火の玉を打ち上げで空を大輪で埋め尽くしていった。


 俺はその幻想的な光景を見ながら、最後の合図を出そうと片手を上げようとした時に、マダラとは違う獣染みた咆哮を聞いた。


(なっ! なんだ、さっきの声は?! 打ち合わせには無かったぞ! もしかして魔物襲来か......)

 俺は内心で想定外の事が起こったことに同様しつつもすぐにマダラへと思念を送った。


『マダラっ、聞こえるかっ!? さっきの咆哮はなんだ! 魔物の襲撃か?』

『いや、セイジロウ違うぞ。これは、魔物の襲撃ではない。炎狼と同じじゃ』


『...? どういう事だ! 炎狼と同じって....』

 と、マダラとの思念の最中に上空に現れたのは炎で作られた鳥が空を羽ばたいていた。


『セイジロウ、何者かは知らんが演舞に乱入したやつがおるようじゃ。あの炎の鳥を見る限りではそれなりの魔法の使い手じゃそ』

『あぁ、俺も今見てるさ.....どんな目的か知らないけど、あんなのが観客達に向かったら最悪の事態が起こる。マダラ、命令だ。あの炎の鳥を迎撃しろ! 手段は問わないから俺達を護るんだっ!』


『御意っ!!』

 マダラと炎狼は突如として現れた炎の鳥に向かって迎撃を開始した。マダラは、水弾や水槍を放ち、炎狼は空を駆けながら炎の鳥へと向かっていった。


 俺はすぐに緊急事態の合図をスレイブさん達と魔法師達に合図を送り、警備対応をしてもらった。


「ご観覧のみなさんっ! 最終演舞は激しさを増しますので冒険者達の誘導にしたがい距離をとっていただきます! 危険はありませんが、万が一の処置ですのでご理解下さい!」

 と、フォローの説明をしつつ、お客に不安感を与えない説明をした。

 本当ならすぐにでも避難をしたいのだが、混乱を避ける為にこれが精一杯だ。もし、観覧客に被害が出るような攻撃があるようならすぐにでも避難が出来るように冒険者達には指示を出してある。


 さらに、マーマン種の人達や魔法師の人達にも合図は伝わりすでに観覧客の最前列で迎撃に備えてもらってる。


 俺は戦闘中のマダラに思念を送り現状の把握につとめる。

『マダラ、どうだ? 迎撃できるか?』

 マダラと炎狼は魔法を撃ち合っているが炎の鳥は巧みに魔法攻撃や炎狼の攻撃を巧みに交わしいた。


『なかなかに素早いヤツじゃな。これほどまでに魔法を操るとは.....人にこれほどなの使い手がおるもんじゃな。セイジロウもこれぐらいに操作が出来ると良いのじゃが』


『今はそんな話を聞いてる暇はないぞ! こっちはすでに迎撃準備が整ってるが、観客には演舞だと伝えてある。それで、迎撃は出来るのか?』

『それなんじゃが、どうやらあの炎の鳥を操ってる何者かはワレ達に攻撃を繰り出してこんのじゃ。ただ、こちらの攻撃を交わしてるだけじゃな』


 なんだそれ? どういう事だ......何が目的なんだ?


『.....理由は分かんないが攻撃の意思が無いって事か?.....なら、その隙に迎撃出来ないか?』

 マダラは、水弾や氷弾、水槍や氷槍を魔法で撃ち続けながら思念で会話をする。


『出来なくはないがチョロチョロ動き回るからのぅ。そんな手早くは無理じゃぞ』

『なら、魔法師達の援護があればいけるか? 本当なら俺も参加したいが指示出しに天装具はマダラの影に入っているから無理なんだ』


『あれはセイジロウにはちとキツいじゃろうな。魔法師達の援護があればあやつにも隙が生まれるはずじゃ。合図はワレが伝えるがそしたら魔法の援護をするんじゃ』

 と、マダラとの思念を一旦切り俺は声を出した。


「ご観覧のみなさん! そろそろ終幕でございます! 特とご覧下さい! これより、魔法師達が水弾を放ち炎の鳥を撃ち落としましょう! 魔法師のみなさん、準備をお願いします」

 魔法師達は突然の俺からの指示にもすぐに対応してくれた。各自が魔法の準備を始め、あとはマダラの合図一つで放てる。


 俺はマダラに思念を送り準備が出来た事伝える。

『マダラ、こっちはいつでも良いぞっ!』

『少し待て.....』

マダラが炎の鳥の動きを読みながらタイミングを計っている。


 『.........今じゃっ!!』

 と、俺はほぼ同時に合図を出した。魔法師達は炎の鳥に向かって水弾や水槍、氷弾や氷槍を放った。炎の鳥は数多の魔法攻撃を避けるもすべてを避けきれずに少なからず被弾する。


 マダラはその被弾した隙を見逃さずに炎狼を操り炎の鳥へと突貫し首元へと噛みついた!

 炎の鳥は噛みついてきた炎狼を嫌がるように振りほどこうとするが上手くいかず、上空へと徐々に昇っていく。


 上空へと炎の鳥と炎狼が重なりながら高々と昇る姿はまるで物語の一幕のようだ。観客達はそんな一場面を固唾を飲みながら見ている。


 俺や魔法師達、マーマン種の人達も一緒に炎の鳥と炎狼が昇っていくさまをジッと見ていた。

 そして、高々と上空に昇っていった両雄は絡み合い激しく弾けたっ!


 すると、上空には炎の鳥と炎狼を象った炎の大輪が咲き炎の流線を描きながら消えていった。観客達一同は静まり返りどこか夢心地のような感じになっている。


 俺は、マダラに思念を送り現状の確認をした。

『マダラ、あの炎の鳥は撃退に成功したのか?』

『あぁ、撃退には成功じゃ。ワレの炎狼も弾けて消えたからのぅ......じゃが....いや、とりあえずは安全じゃ。セイジロウは適当にその場を繕えばよかろう。ワレは周囲を警戒しておこう』


 なんだか、マダラの煮え切らない言葉が気になるが今はこの場を収めて海水浴イベントを終わらせよう。


「えー、皆さんっ! 魔法演舞はいかがでしたでしょうかっ? 炎の鳥と炎狼による魔法演舞でした! 本日はこれにて海水浴イベントは終了になります! 今後は冒険者ギルドが主催者となり火水季の祭りの一つになります! これからもよろしくお願いしますっ!」

 と、終いの説明をすると観客達から盛大な拍手や歓声が上がり海水浴イベントは成功をおさめた。


 俺は、魔法師達やマーマン種の人達、冒険者達に声をかけて現在はマダラが周囲の警戒をしてる事を伝えた。


 ほかの関係各所にも簡単な現状の話を伝え、明日以降に情報交換をする旨を話して解散となった。



 最後にちょっと想定外な事が起こったけど、それ以外は大成功と言っても過言ではないほどの海水浴イベントは幕を閉じた

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