第153話 水着宣伝イベント・7
No153
水着宣伝イベント・7
翌日は朝の朝食を手早く済ませるとルインマスの街に戻った。ルインマスの城壁が見える距離からはマダラから降りて歩いて街の門に近づいていく。
門番に挨拶をしてギルドカードを見せてから冒険者ギルドに向かった。冒険者ギルドで討伐依頼の手続きを済ませると海水浴イベントの進捗を聞くためにアンリエッタ邸に向かった。
アンリエッタ邸に着くとマダラには影の中に入ってもらいドアノッカーを叩いた。すると、執事のシバスさんが出迎えてくれた。
「おはようございます、シバスさん」
「おはようございます、セイジロウ様。今日のご用件は何でしょうか?」
「今日は海水浴イベントの進捗を聞きに来ました。あと、細かい打ち合わせがあればその話ですね。アンリエッタさんの時間は空いてますか?」
「そうですか、すぐにアンリエッタ様に確認をして参りますから客間でお待ち下さい」
と、執事のシバスさんに案内されてメイドのメイリーンさんがお茶と焼き菓子を用意したくれた。
「そういえば、メイリーンさんはもう水着を見に行きましたか?」
お茶を用意してくれたメイリーンさんに聞いてみた。
「はい、先日アンリエッタ様とシバスと一緒に見に行きました。とても、可愛い水着があったのでその場で注文をしてきましたよ。当日に着るのが楽しみです!」
メイリーンさんは笑みを浮かべながら言ってくれた。
「そうですか、それは良かったです。水着が広まれば色々な水着が出てくるようになりますから、来年も楽しみにして下さいね」
「はい、楽しみにします。今回のイベントが成功するようにわたしも微力ながらお手伝いしますね」
「それは、助かります。ですが、メイリーンさんは海水浴を楽しんで下さい。楽しく笑顔で海水浴するだけでイベントの助けになりますから」
と、客間で話してるとアンリエッタさんが入ってきた。
俺はアンリエッタさんに軽く挨拶をして、アンリエッタさんのお茶が用意されてから海水浴イベントの進捗の話をした。
「アンリエッタさん、忙しい時にすみません。イベントの進捗はどうですか?」
「準備は順調ですよ。鉄板焼きの出張に向けて人員と魔導具を準備してるところですね。あとは、仕入れ関係ですがこれからです。予定で行けば七日ほどですかね」
「準備が進んでるのであれば問題ないですね。他に何か気づいた点があれば行ってください。調整は私の方で動きますから」
「ありがとうございます。特にこれといった点はありませんから大丈夫ですよ」
「そうですか。メイリーンさんに聞きましたけど、水着を見に行ったそうですね。良ければ話を聞かせてもらえますか? 改善点があれば改善したいですし、デザインの話でも構いませんから」
と、女性視点からの水着の話をアンリエッタさんから聞いた。
昼手前まで海水浴イベント内容の話をしたり、水着の話をしてアンリエッタ邸で昼食をいただいた。午後は、レイリーンさんの店に向った。
レイリーンさんの店の扉を開き、女性店員にレイリーンさんとの面会と用件を伝え客室でレイリーンさん待った。
しばらくして、紙束を持ったレイリーンさんが部屋へと入ってきた。
「レイリーンさん、こんにちはって.....ずいぶんと疲れた様子ですね」
部屋に入ってきたレイリーンさんは目の下に隈を作り疲れた様子でソファに腰かけた。
「セイジロウさん.....昨日はどこに行ってたんですかっ! 街中探したんですよ! あれからすぐに水着の注文は増えるし、水着のデザインは種類がまだ少ないから増やそうと相談しようと思って探したのにいないしっ! 必死に水着のデザインをしたり、生地職人との打ち合わせをしたり、商業ギルドとの依頼の打ち合わせや報酬を決めたりといきなり忙しくなりすぎですよ!」
と、顔を合わせた途端に愚痴の嵐が巻き起こった。レイリーンさんはプンプンっと身ぶり手振りで忙しく怒っている。
「すいません、昨日は冒険者ギルドの依頼で街の外に行っていて、今日の朝に帰ってきたんですよ。忙しい時に力になれなくてすみません。今日からはまた時間が出来ますからお手伝いしますよ」
「もぅ......ホントですよ! さっそく徹底下さい。これが水着や生地に関する資料とイベントまでの予定書です。今は発注がかかってる水着制作を急ぎやってます。マレアナレアの糸もスレイブさん達が集めてくれたものがありますから制作には問題ないですが、やはり制作時間が架かります」
「ありがとうございます。それで、現在の水着発注数はいくつ何ですか?」
レイリーンさんは、持ってきた資料を見ながら答えてくれた。
「現時点までで七十八着ですね。冒険者ギルドに個人発注、マーマン種方達に漁業関係者などです。それ以外で販売用を男女五十着ずつを急ぎで制作してます。多分、もう少し増えるとわたしは読んでますので、すべて行き渡るのは十日ほどですかね。これが、予定書です」
レイリーンさんから予定書を見せてもらう。そこには海水浴イベントまでの水着制作の予定時間がみっちりとかかれていた。
「.........ずいぶんと詰め込み体制ですね。これではかなりの負担になるのではないですか?」
「確かにかなりの負担になります。ですが、そうしなければ火水季が終わりに入ってしまいます。あと二十数日もすれば火水季も終わり涼しくなります。そうなれば水着の需要も少なくなっていきから」
「そうですか.....海水浴イベントをした後の事も考えての予定なんですね」
海水浴イベントが成功すれば興味を持った人が水着を着て海水浴をしたがるはずだ。なので、海水浴イベントが終わったからといって水着が売れなくなる訳じゃなく、逆に売れるとレイリーンさんは読んでるわけだ。
「分かりました。海水浴イベントと同時にその後の事も話をしましょう。私も手伝いますから、レイリーンさんの考えを聞かせて下さい」
と、数時間ほどレイリーンさんと水着制作の進捗の話と今後についての話もした。
話が終わる頃には陽が傾きつつあったが、そのままスレイブさんのところに向かった。
「スレイブさん、セイジロウです。いますか?」
と、スレイブさんの家の扉を叩いた。少してスレイブさんが扉を開けて出てきた。
「どうした、セイジロウ。こんな時間に来るなんて珍しいな。何かあったのか?」
「いえ、ちょっとギルドの討伐依頼で街を留守にしてたので海水浴イベントの進捗はどうかと確認に来たんですよ」
「そうか、立ち話もなんだ。ちょうど良いから夕食でも食べながら話すか?」
「そうですね、時間がそろそろですからね。良いですよ、いつもお店ですか?」
「いや、例の鉄板焼き店に向かおう」
「分かりました、行ってみましょうかっ」
スレイブさんと一緒に開店したばかりの鉄板焼き店に向かった。いったいどんな店なのか気になっていたところだ。
スレイブさんと世間話をしながら歩いていくと、二階建ての小綺麗で回りの建物より二回りのぐらい大きな建物が見えた。
「スレイブさん、ここがその鉄板焼き店ですか?」
「あぁ、そうだ。他に比べて大きく異質な感じに思える。だが、ここが鉄板焼き店にだ」
その店の外観は木材と煉瓦でお洒落に作られた建物だ。漁業場界隈は男達の働き場なので見るからにお洒落感がある外見の建物には違和感がある。
とりあえず、スレイブさんと共に店内へと入っていった。
すると、すぐに女性店員が席へと案内してくれた。
店内には大きな鉄板焼きで囲まれた調理場が目に入ってきた。俺とスレイブさんは鉄板焼きが見えるカウンター席に案内された。
「へぇ、店内もお洒落ですね。雰囲気が良いですよ!」
「そっ、そうか....俺は少し落ち着かないな....こんな店は初めてだ」
確かに異世界の店とは思えないほどモダンな感じだ。店内は木材を中心とした室内で間接照明まである。前の世界にあってもおかしくないほどの店だ。
「まぁ、通いなれれば自然と慣れますよ。今日は初来店ですから緊張もしますけど、楽しく食事をしましょう」
「そうだな、ただ食事に来ただけだからな」
「そうですよ、いつも通りに食べたいものを食べましょう。まずは、ラームエールで乾杯しましょう!......すみません、ラームエール二つ下さい!」
と、女性店員に注文をしてラームエールを用意してもらった。
「では、乾杯っ!」
「乾杯っ!」
と、二人でグイッと酒をあおりさっそく料理を頼もうとしたとき、料理人らしい人が俺たちの席にやって来た。
「失礼します。あなたがセイジロウ様ですか?」
と、料理人に名前を呼ばれた。
「はい、私がセイジロウですが....あなたは?」
「はい、申し遅れました。わたしは、この店の料理人でマクレールと申します。アンリエッタ様から話は伺っています。鉄板焼き調理方の考案者だと」
「初めまして、マクレールさん。そんな大それた者じゃないですよ。いづれ誰かが思いついたであろう事ですよ」
「だとしても、最所の考案者はセイジロウ様です。わたしは、アンリエッタ様に以前に声をかけていただいてからずっと屋敷で料理を作ってきました。それが、ついには一つの店を任されたのは、セイジロウ様あっての事だと思ってます。本日は存分に食事を楽しんで下さい」
「きっかけはそうであっても、店を任されたのはマクレールさんの腕が良いからです。今までの努力の賜物ですから、自信を持って下さい。私は一介のお客に過ぎませんから。それと、今日は私の友人を紹介します」
と、マクレールさんとの挨拶もそこそこにマーマン種のスレイブさんを紹介した。マクレールさんは種族差別をしない人で、しっかりとスレイブさんと握手をして挨拶してくれた。
それから、たまに食材を買い取ってくれる話や漁業関係者達が店が訪れる話もした。マクレールさんは快く快諾してくれて、食材はいつでも持ってきてくれて良いと、正規の値段で買い取る約束をしてくれた。
「珍しい魚介類や貴重な魚介類はわたしにとっては嬉しい限りです。腕によりをかけて作りますよ!」
と、笑顔を見せながら調理にとりかかった。
「スレイブさん、良かったですね。いい人そうですよ」
「あぁ、印象は悪くないな。セイジロウの
おかげでもある」
「はは、これぐらいなんて事ないですよ。さっ、料理を食べながら海水浴イベントの話をしましょう!」
俺とスレイブさんはマクレールさんに食べたい料理を注文していった。
△▽△▽▽△△
鉄板焼きの料理を食べながら海水浴イベントの話をスレイブさんと話し始めた。
「スレイブさん、海水浴イベントの時に火水祭の様な魔法演舞とかって出来ますか?」
俺は、鉄板焼きで焼かれた貝を食べつつラームエールで喉を潤しながら聞いてみた。
「あれほどの魔法演舞はさすがに無理だな。あれは熟練の水魔法の使い手と仲間達との連携が必要だ。すぐに出来るものじゃないな」
やはり付け焼き刃で出来るほど甘くはないか.....なら、
「巨大な水の玉ならどうですか? 人が数人入れるような水の玉です。その中でスレイブさん達が水着を着て泳いだり、水の玉から玉へと飛び移ったりとか?」
スレイブさんは、鉄板焼きで焼かれた魚と天ぷらを食べつつラームエールを飲んでから言った。
「ほぅ、それは面白そうだな。演舞というより遊戯に近いな。それくらいなら出来るだろうな」
「なら、それをお願いします。あとは、海水浴に来た人用にもあったりすると面白いと思いますし」
と、話と食事は進んでいきさらには、たくさんのアイデアが出されては採用、不採用を決め手いった。
夜が深まるにつれて、鉄板焼き店にはお客さんがちらほらと入り始め、マクレールさんも少しずつ忙しくなっていった。
その後も新しい店とあって、興味を持ったお客が次々に入ってきて気づいたら店内は人で溢れていた。
そんな中、鉄板焼きでのパフォーマンスが始まるとお客達は驚いた顔をしたり歓声を上げたりして大いに盛り上がった。
こうして笑顔や笑い声が夜遅くまで続いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます