第126話 水着の説明
No126
水着の説明
俺は水着に関しての説明をレイリーンさんと、アンリエッタ邸執事のシバスさんに話し始める。
「水仕事は着てる服が水に濡れます。すると、水に濡れた服は水分を吸収し重くなり肌に張りつき行動を妨げます」
「確かにそうですね。ですが、それは当たり前の事では? 多少の不快感や動きにくさはありますが、言ってしまえばそれを我慢すれば問題無いのではないですか?」
「それがそうでは無いと私は思ってます。船乗りを例にあげましょう。船乗りは港から港へと航海をして荷を運びます。ですが、海が荒れたり、雨が降ったりすれば自然と服は濡れますよね? 船員なんですから仕事場は常に甲板上ですから」
「その通りです。ずっと天候が良いわけではないですし、海が穏やかとは限りません。むしろ、穏やかの方が珍しいかもしれません」
と、シバスさんがもっともな意見を言ってくれた。
「その通りです。船員は四六時中船のあらゆる仕事をしなければなりません。雨が降る日に肌に張りつく服で動きにくい、さらに水分を含んだ重い服を着て....そうなればいざというときの対処に遅れ生じます。それが、危険が少ない事でしたらさほど問題はないでしょう。ですが、それが逆だったら?」
「.....命に関わると?」
レイリーンさんが、少し考えた後にそう発言した。
「そうです。海が荒れる中の船の操作は危険です。地上と違い船は常に波に揺られ船も揺れます。その船上で動きにくい服を着ていたら命に関わります。張りついた服で咄嗟の行動ができますか? 私は出来ないと思います。まぁ、出来る人もいるでしょうが、全員そうだとは思えません」
「そうですね。熟練の船乗りでも水に濡れた服を纏った状態だと行動力は落ちますね」
レイリーンさんとシバスさんは互いに頷いている。
「そんな時に水を弾く服、水を吸収しない服を着ていたらどうでしょうか? 晴れた日と同じように行動出来たら効率が上がると思いませんか? しかも、濡れた服をわざわざ乾かさなくて良いですし、何日も濡れた服を着なくて済みます」
「なるほど、セイジロウさんの話はもっともです。船乗り達には喜ばれますね。ですが、それは船乗り、漁師以外には喜ばれないという事でもありますね」
さすがレイリーンさん。やはり、気づきますよね。だがしかしっ! これで話は終わりじゃないのですよ。
「そうですが、ルインマスの街にとっては十分な話では無いでしょうか? 港街、海上交易で発展した街ならオーガニウム国からグルガニウム国の港街にも需要はあるはずです」
「確かにそうです。ですが、わたしの店は服飾店でわたしは服飾師です。作るとしたら男性の服になります。少しは女性用もあると思いますが.....せっかくの上質な糸で服を作るなら日常で着用する服を作りたいのです」
そりゃそうだ。店内を見たけどすべての服が女性用だった。上質な糸が手に入ったのにむさ苦しい男の服を作るのは二の足を踏むよな。俺が逆の立場ならそう考えるし。
「では、こちらのデザイン画を見てください」
俺はアンリエッタ邸の客室で描いていたデザイン画を、肩掛けのバックから取り出して目の前のテーブルに置いた。
「これは、女性用の水を弾く服をデザインしたものです。これを着用して浜辺で海水浴を楽しんだらどうでしょう? 火水季は気温が上がり暑くなり汗をかきます。浜辺で海に入り思いっきり水浴びをしたいとおもいませんか?」
レイリーンさんとシバスさんが、俺が描いたデザイン画を見つめながら話を聞いている。
「そのデザイン画はいくつかのパターンに分けてあります。男性用は腰から膝までの短いズボンが一種類ですが、女性用は数種類に分けました」
俺は女性水着の用途別に説明を始めた。男性の水着は一種類だけだ。ハーフパンツ型があれば十分だろ?
「まず、シバスさんか見ているデザイン画ですが--」
シバスさん、見てるとこごめんね! ちょっとテーブルに置かせて。
「--こちらは、運動用ですね。首や腕に手首、腰から足首までの全身を覆う服ですね。体を動かすのに支障がでない脱げにくい事を目的とし露出を抑えた服になります。女性の恥ずかしさに配慮した形です」
シバスさん、ありがとうごさいました。つぎに、レイリーンさんの見てるデザイン画をテーブルに置いてっと。
そんなお菓子を取られたような顔をしなくてもちゃんと後でじっくり見せますからね。
「次にこちらが遊泳用です。これは、女性のファッション性を重視したデザイン画です。ワンピースタイプに胸部と下腹部に分けた服ですね。女性のスタイルを見せる為に考えたものです。見せるのが恥ずかしい人には、上着を羽織っても良いですし、腰布を巻いても良いです。着方によっては、綺麗に見えたり、可愛く見えたりもします」
俺的にはパレオスタイルが好みだ! あの腰に巻いた布の隙間から見える太股がたまらんっ! チラリズム効果で想像が書き立てられる。
「以上が、水を弾く服の説明になります。公私共に役に立つと思うのですが?」
ふぅ.....どうよっ! 俺頑張ったぜ。これで水着が作れなかったら違う店でまた説明する事になるんで、どうかよろしくお願いしまっす!!
俺の描いたデザイン画を真剣に見てるレイリーンさんとシバスさんが、同時に顔を上げて俺の顔を見る。
先に口を開いたのはシバスさんだった。
「セイジロウ様。これは大変優れた服でございます。まさか、ここまで考えていらっしゃるとは.....船乗りや漁師達には喜ばれるでしょう」
「ありがとうごさいます、シバスさん。服一つで効率と安全性が上がるのなら安いものですよ」
「セイジロウさん、正直ここまでとは思いませんでした。用途もデザインも考えられています。ですが、浜辺で水浴びは難しいかと....海には魔物がいます。その危険を排除しない限り海でこの服を着る事はないでしょう。多少、着る人はいますと思いますが.....」
レイリーンさん、それもちゃんと考えてありますよ! 私に任せて下さい!
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