第127話 他力本願
No127
他力本願
レイリーンさんが指摘した。浜辺での海水浴に関する問題は魔物の存在だと。確かに、海にも魔物は存在する。海の魔物がどの程度危険なのかは調べて見ないと分からないが、ただの一般人が撃退するには難しいと俺も思う。
「確かに海には魔物がいて危険ですね。腕に自信がある冒険者や腕っぷしの強い船乗りや漁師なら、何とかなるでしょうが一般人の男性や女性、子供や年寄りにとっては脅威です」
「そうですね。浜辺には塀がありませんから海の魔物を防ぐ事はできません。仮に塀が作れたとしても時間とお金、人員が莫大にかかるでしょう。その理由が水浴びとなれば建設の許可は限りなくゼロでしょう」
シバスさんの言う通りです。水浴びするから海に塀を作ってなんて馬鹿な事が言えないのは俺にも理解できます。
「私もそうだと思います。なら、海の魔物を退治すればどうでしょう? 浜辺の一画だけでも安全な場所を確保出来たら?」
「その場所があるなら水浴びが出来ますが、無理だと思います。冒険者を雇うにしてもお金がかかりますし、人は水辺、遠浅の浜辺では行動が制限されるでしょう。下半身が水に浸かってるのですから」
「そうです。人は水辺や水中では活動制限があります。これは水を弾く服を着ていてもそうです。なら、水の中を制限無しに動ける人に頼みましょう」
「そんな人がいるんですか?」
いるんですよ、レイリーンさん。まぁ、正確には種族ですけどね。
おっ? シバスさんの顔を見ると分かった見たいですね。
「シバスさんは分かった見たいですね」
「はい、まったくセイジロウさんには驚くばかりです。答えはマーマン種ではないかと?」
「はい、正解です。さすがシバスさんですね。答えは水中でも活動できるマーマン種です。私の友人にマーマン種の方がいます。その友人の話によると半日ぐらいはずっと水中に潜って活動できるそうですよ。ちなみに、糸を捕ってきてくれたのもその友人です」
マーマン種の人達に浜辺での護衛をしてもらえれば、安全は確保できるはず。問題は、人手と報酬なんだけど.....
「マーマン種ですか.....わたしはマーマン種の方と面識が無いのですが、実際どんな種族なんでしょう? 別に嫌いとか人じゃないとか変な意味じゃないです。ただ、接点が無いだけでよく知らないんですよ」
どんな種族か......俺も知らないな。ただ、水中では動ける種族ってぐらいしか分かんないな.....
「私もそう言われると詳しく知らないですね。シバスさんは知っていますか?」
「そうですね、全部は知りませんがわたしが知ってる事で良ければ話しましょう」
シバスさんのマーマン種講座が始まった。
「マーマン種は、地上と海中を活動出来る種族です。種族姿の特徴としては、背が高く痩せ型で肌の色が白いです」
「わたしは、街中でたまに見かけます。見た目はわたし達とまったく変わらないんですよね」
「はい、ですが指と指の間に膜があります。あとは、極稀に体の表面に魚のような鱗が現れる方もいるそうです」
人魚のような人もいるのかな? 人魚姫物語のようなやつじゃなくて、もっとファンタジー的なやつね。貝殻のブラをしてるやつがいいな!
「鱗ですか....」
「レイリーンさんがどのように思い浮かべているか分かりませんが、マーマン種に限らず自分達とは違う種族は他種族には敏感に反応します。今のレイリーンさんのように」
シバスさんの言葉はレイリーンさんを責めてるような言い方だが、眉をひそめて明らかに顔に出してしまうのは控えるべきだ。
「さらに、マーマン種は水魔法が得意です。わたし達とはまた違う魔法操作で水を操ります。明日の【火水祭】でマーマン種の魔法を見ることができるでしょう。海の上で行われる【海祭り】は圧巻ですよ!」
「えっ!? あれはマーマン種の方がやってるんですか?! 知らなかったです」
なんだ海祭りって? なんか海でやるのかな?
「シバスさん、海祭りってなんですか?」
「毎年、火水祭の時に海に船を出して、魔法師とマーマン種が一緒に演舞をするのです。海祭りで人気の高い祭りの一つです」
「へぇ、レイリーンさんの驚きからして、かなりの祭りなんですね」
「そうですよ、セイジロウさん! もぅ、バーってなって、バシャーンってなるんです! それから、ドーンってなるんですよ!」
うん、全然分からん.....明日になれば分かるからその時に確認しよ。
「ハハ、どうやら凄い祭りなのは分かりました。明日から始まる祭りを楽しみしてますよ。それで、マーマン種の人が水魔法を得意なんでしたよね?」
「はい。わたし達も水魔法は使いますが、マーマン種と比べたら一段も二段も落ちます」
「それほどですか。今度、機会があったら私の友人のマーマン種に見せてもらいます」
「その時にはわたしにもぜひお声掛け下さい。アンリエッタ様やメイリーンも見たいはずですので」
「分かりました、友人に話してみましょう。それで、ある程度はマーマン種の事が分かりました。どうでしょうか、マーマン種に手伝っていただく件は?」
ここでそろそろ話を戻す。マーマン種の事はある程度分かったから、あとは水着が作れるかだ。
「分かりました、セイジロウさん。水を弾く服を作って見ましょう。ただ、糸から作るには時間がかかりますから、まずは生地にしてからになります。あとは、もう少し話を詰めたいのですが....」
「良かったっ。ありがとうございます。この後で良ければ話は出来ますが?」
「そうですか、よろしくお願いします。シバスさんには申し訳ないないですが、アンリエッタさんの服は生地が出来てから作成になります。多分それなりにお時間を頂く事になりますが.....ある程度、生地の特性をつかまないといけませんから」
「分かっております。たまに進捗を聞きに参りますから、その時に教えて下されば問題ありません」
「そう言ってもらえると助かります。服の作成前にはデザイン画を持っていきますので、その時に詳しい話ができると思います」
と、どうやら話は上手くまとまった。あとは、レイリーンさんと話を詰めてスレイブさんに協力が頼めるかを聞くだけだ。
その後、シバスさんはアンリエッタ邸に戻り、俺はレイリーンさんのお店で水着を作る話を夕方まで話した。それなりに色々と細かい部分も話し、デザインに関しても決めた。
一番最初に作る水着はツーピースのビキニスタイルに決まった。最大の理由は、生地の総量が少ない為だ。
マレアナレアの糸はかなり上質な糸であり、生地が多ければ多いほど価格は高くなるそうだ。
海の魔物で糸の入手にどれだけの労力がかかったのかは、スレイブさんに聞いて見ないと分からない。
レイリーンさんに値段設定を頼んではいるが、すべての工程でかかる金額が分からない以上、正確な値段はつけられないと言っていた。
出来れば手頃に買える値段だと良いな。そうしないとたくさんの水着姿が見れないし。男性の水着は高くてもいいよ!
それから、さらに嬉しい事がっ! ビキニスタイルの水着のデザイン画を元に女性用下着を作る事が決まった。
レイリーンさんにしたら水着より下着の方が重要らしくかなり乗り気である。
まぁ、女性の下着は嬉しいから良いけど、プルンっプルンっが見れなくなるのはちょっと....今すぐ見れなくなるわけじゃないから今のうちに堪能しておかなきゃ!
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