第119話 水蜘蛛マレアナレア
No119
水蜘蛛マレアナレア
スレイブさんの依頼中の休憩時間を使い、スレイブさんと話をした。
「スレイブさん、実は水を弾く服を作りたいと思ってまして、その服の素材を探しているんです。それで、マーマン種のスレイブさんが何か知らないかと思いまして訪ねてきたんです」
スレイブさんと俺は漁業場の近くにある漁師達が溜まり場にしてる広間のテーブル席で、露店で買った魚介類をつまみながら話してる。
もちろん、マダラは近くで寝転がりながら露店で買った魚介類を食ってる。
「....水を弾く服か。また、可笑しな事を思いつくものだ。思い当たらなくもないぞ。まぁ、実際に使えるかどうかは素材次第だが」
なんとっ! いきなりの朗報だ! まさか、本当に知ってるとは....正直期待はしていたが同じくらいのハズレも予想してたんだけど....
「それは、本当ですか? 本当に水を弾く素材ですか?」
「まぁ待て、俺が知ってるのは"水を弾くかもしれない" ってだけだ。別に試した訳じゃないから分からないんだ」
「でも、可能性はあるんですよね? どこで取れるんですか?」
「海の中だ。しかも、そいつは魔物だ。強くないし取るのも然程難しくはないな」
海の中か....場所や深さにもよるけど、俺とマダラじゃ確保は難しいか?...冒険者ギルドで依頼を出して素材を確保してもらうのが一番か?
「その魔物の名前を教えてもらえますか? 冒険者ギルドで依頼を出したいと思います」
「魔物の名前は、マレアナレアって言ってな。水蜘蛛だ。水中で巣を張り巡らして魚を捕食する蜘蛛だな。だが、マレアナレアが居る場所はそれなりに水深があり、水草も生えていて視界も悪いぞ。普通の冒険者じゃ息も続かないし、取るのは難しいんじゃないか?」
あー、だよね.....酸素ボンベなんて無いだろうし、魔導具も多分無いだろうな。無いよな?
「ちなみになんですが、水中の中で息が出来る魔導具はあったりしますか?」
「いや、聞いた事ないな。そんな魔導具があれば漁の仕方が変わってるし、巣潜りする必要もないからな」
やっぱり無いか....水中の魔物か....魔法で何とか...ならないな。そんな魔法なんて思いつかないし、思いついてもすぐには使えないし....
俺はマダラに思念で話しかけた。何かしらの解決法を知らないか聞いてみる。
『マダラ、水中で活動って出来るか?』
『ワレは獣じゃぞ。水中で活動できる訳がなかろう。セイジロウの居た世界では獣が水中で活動出来たのか?』
『いや、多分出来てないかな。でも、マダラだったら出来るかなぁーって』
『ポンコツな事を言っておるでないわ。じゃが、ワレ自身の力を使えば出来るが、せいぜい数回じゃぞ。素材を集めるなら数回では足りんじゃろ?』
『マダラの力か.....それってかなり貴重なんだよな?』
『そうじゃ、この世界では補充する事も出来んじゃろ。だから、魔物から魔力を奪い蓄積して代用しておるんじゃからな』
『なら、水中で活動できる魔法とか使えないか?』
『無理じゃな。力技なら考えつかんわけではないが、かなり目立つじゃろうし魔力量も多大じゃ』
ここまで聞いて頭を悩ませた。しばらく、悩んでるとスレイブさんが話しかけてきた。
「セイジロウ、悩んでるとこ悪いがそろそろ戻らなければならない。今夜、時間が取れるなら話をするがどうする?」
「あっ!....すいません。つい考え込んでしまいました。そうですね、そうしましょう。スレイブさんが良ければまだ話をしたいです」
「なら、ここから少し離れた場所に俺が馴染みにしてる酒場かあるから、陽が暮れた頃に来てくれ。俺もそれまでには終わる」
「分かりました。では、その酒場に陽が暮れた頃に向かいます」
と、スレイブさんとの話は終わり俺はマダラと一緒に細工屋のレイラさんの店にむかった。
向かう途中の露店で昼食をとり細工屋に着いた。
▽△△▽▽▽△▽
レイラさんの細工屋には数名のお客さんが来ていて、朝の話のお礼にフローラさんに似合う髪飾りを買った。
買い物に来ていたお客さんが帰ったのを見計り、レイラさんにスレイブさんに会えた事と素材の話が聞けた事を伝えて改めてお礼を伝えた。
「そうですか! それは良かったですね。お役に立ててわたしもホッとしました」
「レイラさんにスレイブさんを教えてもらえて助かりました。とりあえず、一歩前進しましたよ」
「それにしても、マレアナレアですか....」
「レイラさんはその魔物を知ってるんですか?」
「名前だけは知ってますが実物は知りませんね。水蜘蛛ですか....なら素材はマレアナレアの吐き出す糸ですかね?」
「そうですね、水蜘蛛と言うだけに糸を連想しますけど」
「まさか、水蜘蛛の皮とかじゃないですよね?」
うへぇ....そこまではスレイブさんに聞いてなかったな。蜘蛛の皮はちょっと嫌だけど水着の為なら.....俺は着なくてもいいかな。うん。
「どうですかね....出来ればまだ糸の方がいいですね。レイラさんもそう思いますよね?」
「そうですね、皮より糸が良いですね。セイジロウさんにとってはなんて事ないでしょうけど、わたしみたいに一般人からすると蜘蛛の皮には抵抗があるますから」
「いや、私もありますよ。獣の皮ぐらいならまだ良いですけど、さすがに蜘蛛の皮は着たくありませんよ!」
「ふふ、冗談ですよ。とりあえず、スレイブさんの話を聞いてみないと分からないんですから」
可愛い顔してなんて事を冗談でいうだよ.....
「ハハ、そうですね。では、私は冒険者ギルドでマレアナレアについて調べてみますよ。また、今度来たときにでも話をしますね」
レイラさんのお店を出たあとは、冒険者ギルドの資料室でマレアナレアの魔物について調べたが詳しくは分からなかった。せいぜい、生息区域に名前、補食の仕方に姿形ぐらいだ。
そして、陽が暮れる少し前にスレイブさんが馴染みにしてる酒場にやってきて、スレイブさんを待った。
しばらく待ってるとスレイブさんが店にやって来て、酒とつまみを注文して品がテーブルに揃うと話を始めた。
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