第107話 三ギルド合同

No107

三ギルド合同



 浜焼きをしてから三日後、ついに冒険者ギルドのサーシャさんから、例の件についての呼び出しが俺とアンリエッタさんに来た。


 俺とアンリエッタさんは冒険者ギルドの会議室でサーシャさん、受付嬢のシンディさん、商業ギルドのフロア長アキナイさん、錬金術ギルドのフロア長レンギさん

の六人で話をしていた。


 商業ギルドのアキナイさんは、恰幅の良い四十代中年男性に見える。顎と腹には肉が付き、頻りに顔の汗を拭いてる。だが、嫌悪感を感じるようなことはない。顔は優しくニコニコと微笑んでいて前の世界の七福神の一人を思い浮かべる。


 錬金術ギルドのレンギさんは、三十代から四十代前半ぐらいに見える男性だ。色白で媚茶色の髪はボサボサしている。着てる服もシワが目立ち明らかに不健康そうな感じが見てわかる。


 アンリエッタさんは、俺が好きな某アイドル似でスタイルはボインで、童顔に可愛い女性だ。アサギ色の髪が毛先に向かってグラデーションかかる感じがまた良いっ!

 ちなみに外見は二十代前半に見えるがエルフィン種な為に実年齢は不明だ。


 冒険者ギルドのギルドマスターのサーシャさん。こちらもまたエルフィン種な為に見た目は二十代前半に見える女性ではあるが、実年齢は不明だ。白緑色の艶やかな髪を腰まで伸ばし、スタイルは可不可無くバランスが取れている。顔も整っていて切れ長な目が特徴的だ。見た感じSっ気がありそうだが、俺はM体質だと内心思っている。


 冒険者ギルド受付嬢のシンディさん。

 見た目二十代前半に見える女性だが、常磐色の髪を肩口から切り揃え、前髪を左に流した髪型な為に固く大人びた女性に見える。もう少し遊び心があれば接し安いのだが......


 そんな人達を集め、これからルインマスの街の発展繋がる話し合いが始まった。


△▽△△△△△△△


 「--と、この様な経緯があったのは、すでに皆さんは事前に資料を渡してあるのでご承知だとお話を進めさせていただきます」

 進行役のシンディさんが改めて説明してくれた。


「これから、皆さんには改めてお話を伺いますが、最終決定は満場一致で可決されます事をご了承下さい。一人でも反対者がいましたら、改めて皆さんでお話をしてもらます」


 まぁ、これも事前に話は通ってるんだろうな。で、みんなの意志疎通と俺の顔合わせも兼ねてるわけか?

 出来ればすんなりと纏まってくれれば良いが.....さて、ごねて欲を出して来るのは誰だ? 


▽△▽▽▽▽▽△△


 話し合いの口火を切ったのは商業ギルドのアキナイさんだった。

「えー、まずはわたしから話ましょうか。わたし達商業ギルドは冒険者ギルドのサーシャさんの話しに乗ろうと思ってます。わたし達から提示出来るのは、店舗となる建物と仕入れルートですね。もちろん、ルインマスでの利益次第では、他の街での業務拡大も考えてます」


 さらに、アキナイさんは仮想的な経済試算額も提示した。その額は......かなりの額だ。正直、盛りすぎじゃないかと思えるような額だった。


 次に口を開いたのが錬金術ギルドのレンギさんだ。

「わたし達は、アンリエッタさんの意向もあり店舗で使用する魔導具は一式レンタルとします。最初はレンタルですが、買い取りも視野に入れてます。理由については初期投資削減と初期需要の俯瞰です。消極的に聞こえるかも知れませんが、初の試みな為に大盤振る舞いとは行きません」


「そうなるとわたし達商業ギルドも考えなくてはなりませんよ?」


「アキナイさんの言いたい事も分からなく無いですが、魔導具製作には時間がかかります。最初から何十個も提供は出来ません。そこは、理解してますよね?」


「....それは、確かに....」


 ふむ、アキナイさんは最初からある程度の店舗を展開して類似店が出る前にごっそり稼ぎたいわけだ。しかも、ルインマスの街だけじゃなく、ハルジオンや違う街、さらには王都か....多分、グルガニウム国にも展開する事も視野に入れてたんだろうな....


 と、ここでアンリエッタさんが会話に入ってきた。

「わたしからも話があります。先日、ここにいるセイジロウさんの発案で新しい魔導具を製作しました。すでに、試作魔導具を身内だけで試しましたが、かなりの高評価をいただいてます。......こちらが詳細になります。目を通して下さい」


 おっ!【エールサーバー】 だな。ククク...このタイミングで出すのか....みんなの顔が驚愕してたり、口元がひきつったりしてるぞ。


「アンリエッタ、コレはちょっと聞いてないわよ? 何より液体を瞬時に冷やす魔導具って....しかも、エールに果実酒を冷やすの? 魔冷箱とか違うみたいだけど....」


「ごめんね、サッちゃん。でも、コレがあれば火水季中なら間違いなくエールは売るわよ? 多分、去年の五倍は間違いないと自信をもって言えるの。商業ギルドと冒険者ギルドにとって悪い話じゃないわ。それに、まだ量産はしてないから今年だけは稼ぎ放題よ?」


 うん! 間違いなく売れるね。しかも、売れる場所が限られればその分取り放題だ。


「あとで試飲出来るように手配するから必要なら言ってね」

「アンリエッタ様、わたしも聞いてないんですが....」


「レンギには言ってないから当然です。これはわたし達の....いえ、わたしの切り札ですから。それに、発案者はセイジロウさんですし、素材の採取もセイジロウさんがしてくれたんですよ? 勝手に錬金術ギルドに魔導具申請は出せないわよ」


 あの素材を取るのは大変でしたよ....アンリエッタさん。次からは違う冒険者に頼んでくださいね....


「次はわたしからね! 冒険者ギルドでは、セイジロウが考案した料理レシピを買取り、優先販売権とするわっ! なお、その料理レシピでの売上を商業ギルドと錬金術に公平に分配する対価に冒険者ギルドに援助してもらいます。すでに、各々には詳細な資料を渡しあるから説明は--」


「あのー、話の腰を折ってすいませんが、それについて私から話があります」

「何よ、セイジロウ。せっかく話をしてるのに」


「すいません、ギルドマスター。実は、ギルドマスターが参加した時の料理メニューなんですが、アンリエッタさんの料理人達には料理レシピを教えちゃってるんですよね」


「はあぁぁぁっ! あんた何してんのよ!それじゃ、うちのはどうするのよっ? アンリエッタのとこばかりが得するだけじゃないのよ! あんたが持ってきた話でしょっ?!」


 そんな怒鳴らなくても....見た目若くても実年齢はホラ.....ね。....シワ増えちゃいますよ?


「大丈夫ですよ、ギルドマスター。変わりにオリジナルの調味料と新しい甘味のレシピがありますから。ギルドマスターも食べたでしょ? カモンネーズにタルタルソース、あとアンリエッタさんが食べたパンケーキのレシピは冒険者ギルドと契約しますから」


「っ!!.....それ、信じていいのよね? 実はウッカリ教えてたなんてないわよね?」


 いや、そんなに睨まないでくださいよ....


「大丈夫ですよ、それに、料理レシピはアレだけじゃないですしね。必要ならまだ提供出来ますよ?」

「なら、良いわ。今の言葉忘れないでよね!.....話が少しそれたけどそういう事よ。今回の話が纏まれば莫大な利益とともに、史上初のさんギルド合同の試みが成功するわっ! わたし達が先駆者になり富と名誉、さらに、歴史に名を残す偉業を達成することは間違いないとわたしはギルドマスターの名に賭けて宣言するわ!!」


 おおっ! ギルドマスターが言いきったよ。そんなに凄いことには感じないけど....前の世界だと焼肉チェーン店を開く感じなのかな? 


「わたしは参加で良いわよ。ただし、配分は正当にね、レンギも良いわね?」

「はい、アンリエッタさんに従います。なので新しい魔導具申請は錬金術ギルドに出して下さいね?」


「セイジロウさん、エールサーバーの魔導具は錬金術ギルドで申請していいですか? もちろん、見返りはちゃんとありますから」


「いいですよ。アンリエッタさんなら悪いようにはしないでしょうし、また新しいアイデアが浮かんだらよろしくお願いしますね?」

「それは、もちろんですよ」


 さて、あとは商業ギルドのアキナイさんだけだけど....


「商業ギルドも参加しますよ。ただ、出来れば少し多めに店舗を出してもらえると助かります。その分、出来る範囲で協力させてもらいますから」


 おっ? もう少しごねて欲を出すと思ったけど違ったな.....以外と先を見てるのか?


 そして、議事録を付けていた進行役のシンディさんが話のまとめに入った。


「では、各ギルドの参加表明を記録しました。皆さんよろしいですね?.........満場一致により決定となります。後日、正式に契約を結びますので契約書の作成をよろしくお願いします。セイジロウさんに関しては、料理レシピの提出を行ってもらいますので用意をお願いします」


 ふぅ....ようやく決まったか....あとは、ギルドマスターと配分の話し合いと契約をすれば問題ないな。マレルさんにも話をして専属契約をしなきゃだな.....


 火水季は楽しくなりそうだなー!

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