第77話 三者交渉

NO77

3者交渉





 翌日は気温も高い事もあってメイン通りの衣服店で火水季用の服を数着買い、露店で買い食い兼買い溜めをしながら、目についた店を冷やかしつつ、アンリエッタ邸を目指した。


 本来なら冒険者ギルドで日銭稼ぎの依頼を受けるのだが、昨日の今日では行きづらく日用品の買い出しをして倉庫整理にとアンリエッタ邸に向かってるわけだ。 


「まだ、昼ぐらいにだからアンリエッタさんのとこで昼食貰えるかなぁ?」

『なにを....お主、腑抜けすぎではないのか? 飯を所望しに行くとは....男して恥ずかしくないのかっ!』


「だって、美味しかったじゃん魚料理....マダラだってガッツリ食べてたじゃん。それに、ご飯はたくさんで食べた方がいいじゃん。アンリエッタさんはマダラに会いたいだろうし...」


『確かに、食事は美味なのは認めよう。だが、お主のそれは良いのか? 怠け者ではないか?』

「そんな事ないよ? 昼食を食べたら倉庫整理するし、依頼内容と同じだよ。ちゃんと、依頼の改訂書も近い内に出されるだろし....それに、シンディさんに折り入って話もあるしね」


 そんな話をしながら昼を少し回った時にアンリエッタ邸に着いた。執事のシバスさんに案内されて裏庭のテーブル席に座った。マダラは影から出して床に寝転がり寛ぎ始めた。


 少ししてからアンリエッタさんがメイドのメイリーンさんと一緒に現れた。

「セイジロウさん、いらっしゃい! マダラちゃんもいらっしゃーいっ!」

「急の訪問をすみません、アンリエッタさん。マダラには自由に触って良いですよ。ちなみに、お腹が空いてるみたいなんですけど....」


「そうなのっ?! なら、食事を用意しましょう! セイジロウさんもついでに食べた良いですよ!」


 グヘヘっ! やったねっ! ついでだけど、食べれるなら文句は言いませんよ。

 

メイドのメイリーンさんが紅茶を用意してから屋敷へと戻っていった。


「ありがとうございます。お言葉に甘えます。食事をいただいたら倉庫整理をしますので.....それと、アンリエッタさんに聞いて欲しいお話がありまして...」


「なんでしょうか?」


 俺は昨日のシンディさんとのやり取りをアンリエッタさんに話した。まだ、返事はもらっていないが人手を借りたいと話した。


 人手を借りる対価としてギルドの食事処で出す料理メニューの、レシピを教える旨を伝える。さらに、ギルドの食事処でマダラと一緒にご飯を食べる権利を与える事。


「....たった一日でずいぶんな事になってますね。そうですか、サッちゃんとこで」


 はっ、しまった! アンリエッタさんは冒険者ギルドのギルドマスターのサーシャンと知っている仲だったっ!


 どうしよう? へんな事ならないよね?やべぇ.....うっかり忘れてたぜ....


「フムフム......セイジロウさん。話は分かりました、ならわたしも噛ませてもらいましょう。サッちゃんだけが得をするなんてズルいですからね。かわりにセイジロウさんのスポンサーになりましょう。それと、マダラちゃんとのモフモフデーをいただきます!」


 モフモフデー.....? なんだ、一緒に寝たいとかそんな感じか?


「えっと、モフモフデーとは?」

「ふふふ、他ならぬセイジロウさんですっ! お話しましょうっ!!」


 端的に行ってゴロゴロダラダラ、モフモフふさふさしたいらしい。マダラと一日中一緒にいたいそうだ。


「まぁ、マダラが良いなら良いですけど、ちょっと聞いて見ますね『マダラ、アンリエッタさんがそう言ってるけど、どうよ?』」


『良いわけ無いじゃろ、ワレはセイジロウの守護者だぞ? それに、ワレは人形では無いのだ。玩具にされるわけがないじゃろうが』


『ごもっともな意見です。はい。でも、お前がうんと言わないとアンリエッタさんがスポンサーになってくれないんだよ....アンリエッタさんが力になってくれないと、昨日の話がオシャカになるだろ?』 


『それにワレは関係なかろう? セイジロウがやりたくて話した訳じゃ。なら、ワレをアテにせずに説得すればよいじゃろが』


『関係は、マダラにもあるんだなぁ...コレが!.....聞きたい?』

『なんじゃ勿体ぶりおって....下らん話だったら断るとともに一日ワレに付き合うのじゃ。その腑抜けた心を叩いて鍛え直してやるからのっ!!』


『ちょっ....そんなに怒るなよ....でだ、まず、アンリエッタさんのお抱えの料理人または見習いをギルドの食事処で雇う。すると、ルインマス産の魚介料理が食べられる。俺は、こっちの食材はほとんど知らないし作れないからな。こっちの料理を知ってる人に旨い料理を作ってもらい食べれるわけだ!』


 まぁ、ここまでは普通に考えれは分かるよな。マダラも魚料理は好きだしこれだけでも魅力的な話だ。だが、


『まだ、あるぞ! カモンネーズを覚えてるか、マダラ?』

『ふむ、この街にくる前に食した調味料だったな』


『しっかり覚えてるみたいでよかったよ。で、そのカモンネーズをさらに、改良した調味料で味付けた料理を食事処で提供しようと考えてるのはわけだ。それも好きに食べれるんだぞ? どうよ、マダラ?んっ?』


『ふむ............................』

 フフ、かなり考えてるな? まぁほぼ間違いなく、頷く--

『ダメじゃ』


 はぁぁぁぁぁぁーーーーーーー!!何でだよっ!


『おまっ.......マダラ、理由はなんだい?』

 落ち着け俺。まずは理由を聞いてからだ。それから、また交渉すれば良い。


『お主は、あの女に甘味を与える約束をしておったな? ワレには無いのか? ワレが協力しなければすべてがダメになるのであろう? なら、ワレからの条件を聞くべきなのは当然な話になるわけじゃ』


『いいよ、マダラの話を聞こうじゃないか』

『ワレから出す条件は二つじゃ。一つは、街の外で狩りに付き合う事じゃ。これは、セイジロウの鍛練とワレの魔力補充も兼ねている。この世は弱肉強食じゃ。意味合いは複数あるが、やはり弱ければ死ぬ事に変わりはないからのぅ』


『まぁ、確かにな。マダラがそう言うのは分かるよ。別に蔑ろにしてた訳じゃないけど鍛練はするつもりでいるから』


『ふむ、いいじゃろ。二つ目じゃ、その食事処で作られる料理、もちろん、甘味も含めてすべてを所望する。ワレが食べたい時に作らせるのじゃ。すれば、セイジロウの条件を受けよう。どうじゃ? んっ?』


 ん~~、悪い話じゃないな。強いて言うなら鍛練だがこれも必要っちゃ必要だし、元々、時間が空いたらするつりだったし。


 二つ目は、ただの食い気だから問題ない。


『いいだろう、それで成立だ。これからもよろしくな、マダラ!』

『ふむ、ならアンリと話を進めるがよい。さっきから退屈しておるぞ?』


 あっ? マダラとの思念に夢中で忘れてたっ!!


「すいません、アンリエッタさん。マダラと意思を確認していました。マダラは承諾してくれました! 詳しくは後日で良いですか?」


「やったぁー!!えへへっ、マダラちゃーん!!」

「では、食後は倉庫整理をしてきますので」


 と、マダラと思念をしてる最中に軽食、と言っても普通の昼食が用意されていて、それを食べてから俺とマダラは倉庫整理に。アンリエッタさんは冒険者ギルドに言行ってサッちゃんと話してくると、意気揚々で向かった。

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