第78話 労働に励むセイジロウ達と嵐の予感

NO78

労働に励むセイジロウ達と嵐の予感





 アンリエッタ邸でアンリエッタさんとマダラとの交渉を終わらせ、昼食をご馳走になったあとは労働の時間になった。


 アンリエッタさんの依頼である倉庫整理に俺とマダラは向かった。倉庫内の魔力灯をつけて、前回からの続きを目録を確認しながら始める。


「マダラ、こっちの木箱は確認したからちょっと影に仕舞ってくれる?」

『ふむ....仕舞ったぞ。この木箱はどこに出すんじゃ?』


「ちょっと待って......こっちの棚の空いてるところに頼む.......そう、そこでいいよ。んじゃ、次はこっちを仕舞ってあっちの棚に」

『のぅ、セイジロウ。セイジロウがさっき言っていた新食事処はいつ出来るんじゃ?』


「えぇー? そんなすぐには出来ないよ? まだ、話だって決まってないんだしさ.....決まるようならこうしたいです、って話をアンリエッタさんにしたんだよ」

『なに? では、ただの想像上の話をしていたのか?』


「いや、限りなく現実に近い想像の話ね。冒険者ギルドに取っても俺らに取っても悪い話じゃないないんだよ。ただ、食事処をギルドが貸してくれて改装を許してくれるかが第一関門だな」


『互いに益があるなら許しは得られるじゃろうな』

「だね、そこはすんなり通ると思ってるよ。改装費用はこっちで持つし、まぁ、アンリエッタさんがスポンサーになってくれたからね。アンリエッタさんと話し合ってからそこは話を詰めるさ」


『アンリは、見た目にそぐわない頭の良さを感じるから足元を掬われるようにの』

「あぁ、分かってるよ。マダラの事になると残念な感じになるけど、ちょっと自分の興味あることにスイッチが入ると途端に頭がキレるよね。実際、さっきの話し合いで矛先がギルドマスターだったからよかったけど....」


 もし、俺に向いていたらと考えると.....うぅ~~鳥肌がたったよ....マダラ様々だな。


「さっ、この辺の木箱の確認は終わったから影に仕舞ってあっちに移動だ」

『しかし....大量にあるのぅ。よくこれほどまでになったのぅ』


「確かにね。俺は魔導具に詳しくないから見てもよく分からないけど、前の世界の家電製品に近い感じじゃないかな?」


『セイジロウがいた時代の仕掛けじゃな』

「仕掛けって、まぁそうか....動くカラクリ人形とかマダラは知ってる?」


『ふむ、知っておるぞ。あれはなかなかに賢いカラクリじゃ。最初に発明したヤツは賢人の名に相応しい細工師じゃ』


「へぇ、知ってるんだ。俺はそういうのがあったってだけを知ってるんだよ。歯車や糸を使った仕掛けが原理だったよな?」


『当初はそうじゃったな....次期に技術が発展していき材質が変わり徐々に文明が発展していったのぅ』

「確かにね、たった百年ほどでかなりの進化を遂げたよな人類文明は....」


『セイジロウ、手が止まっておるぞ。はよう木箱を調べんか、いつまで経ってもおわらんじゃろ』

「はいはーい、今調べるちょっと待ってて--」


▽△▽△▽△▽▽


 アンリエッタ邸でセイジロウとマダラが倉庫整理に精を出してる頃、アンリエッタと執事のシバスは冒険者ギルドを訪れていた。


「シンディちゃーん! 来ちゃったっ! サッちゃんいる?」

「これは、アンリエッタ様。ようこそ、冒険者ギルドへ。ギルドマスターは、現在執務中ですがご用を伺ってもよろしいですか?」


「ん~~~、ダメかな? 直接サッちゃんと話をしたいの? ダメ?」

「その....アンリエッタ様がギルドマスターと旧知の仲だとして、要件を聞かずにご案内するわけには....」


「ねぇ、シンディさん? わたしが、冒険者ギルドマスターのサーシャに直接お話があると言ってるの。魔導具師アンリエッタが来たとすぐに伝えて。さもなくは、潰しますよ?」


 突然の変貌ぶりと底冷えするような圧力、さらにルインマスの街の発展を魔導具で支えてきた一翼。ある意味、領主よりも力を持つアンリエッタが脅しをかけてきた事に受付嬢シンディは、顔を青くしながらも冷静に対処し、ギルドマスターがいる執務室へと案内した。


コンコンコンっ!!


「ギルドマスター、魔導具師アンリエッタ様をお連れしました」

「.......入っていいわ」 


 執務室からの返答を聞いたシンディは扉を開けてアンリエッタと執事シバスを通した。

「突然、何よ? 連絡ぐらい寄越してよね?」

「ええー、せっかくの親友が会いに来たのに....」


「はぁ...シンディ、紅茶を用意して。それと焼き菓子を適当に.......座って話しましょう、シバスもかけて頂戴」


 シンディは、サーシャの指示を受けて退室し、アンリエッタとシバスは執務室内にあるソファへと腰を下ろした。


「....それで、急にどうしたのよ? どうせ、何か興味事があって来たんでしょ?」


 そうアンリエッタに声をかける冒険者ギルドマスター・サーシャは、見た目は20代前半に見える女性ではあるが、実年齢は○○○歳でありエルフィン種の血を継いでる。


 白緑色の艶やかな髪を腰まで伸ばし、スタイルは可不可無くバランスが取れている。そして、気の強そうな切れ長の目が特徴的だ。しかし、女性として整った顔立ちに切れ長の目は自然と身構えてしまう。


「ねぇサッちゃん、セイジロウさんて知ってる? その人から面白い話を聞いてね、わたしも話に混ぜて欲しいなぁって思って来ちゃったんだ」


「っ!.......なによ、別に面白くはないのよ....ちょっと食事処で販売したいらしい話は聞いてるけど....」

(まったく相変わらず耳が早いんだから、アッちゃんは)


「サッちゃん、セイジロウさんは今ね、わたしの家の倉庫整理をしてくれてるんだよ? そのセイジロウさんが話をしてくれてね.....ダメだよ、独り占めは....」


「....なら、話は全部知っているのかしら?」

(ええーっ! シンディは何も言ってなかったけどー!! ちゃんと全部話なさいよねっ!)


 そして、タイミング悪く受付嬢のシンディが紅茶と焼き菓子を用意して執務室に入ってきた。

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