第52話 隠し事と買い物
No52
隠し事と買い物
ギルバートさんとマダラと俺との食事はまだ続いた。
「ギルバートさんの中であの遺跡はどう考えてるんですか?」
「そうですね.....やはり何らかの儀式が目的だったのは地下で発見された魔法陣を見ても明らかです。さらに、今のわたし達では知らない術式または召喚魔法は存在してますね。独自の文字が使われていますし、高度な知識、文化を持っていた集団だと推測できます」
ギルバートさんは注文したピザやフライドポテトを食べながら答えた。
「あの魔法陣については何か分かったのですか?」
「まだ何とも言えないですね。見た目は召喚陣に酷似してます。でも、発動は出来ないんですよ。地下の魔法陣を写し研究所で調べてますが進展はありませんね。じっさい、血を流して召喚も試しましたが....無理でした」
えっ? そこまでやったの! うわぁ、前の世界なら倫理とか世論に火種を投げ込むような.....
「よく試しましたね....危険は感じなかったんですか? マダラのような存在が現れたり、もしかしたら危険な魔物が召喚されたかも知れないのに...」
俺はステーキ肉を食べつつエールを飲みながらギルバートさんと話す。やはり、ビルドさんが調理する料理は上手いなっ!
「もちろん、考えてますよ。束縛系が使える魔法師や高ランクパーティーも用意しました。安全マージンはとりましたよ。わたし達も無謀ではないですから」
「ですよね....文字に関してはどうなんですか? 何か分かりました?」
「文字もまだ解読は出来てません。古い文字なんかの資料を集めて解読をしてますが....サンプルも少ないですし難儀してますよ....はぁ....」
やっぱりそうだよな....経った数ヶ月で分かったら苦労しないもんね。
「マダラには聞いてみたんですか?」
「はい、でもマダラにも分からないそうですよ。喚ばれたセイジロウさんの守護者としか答えてくれませんし.....セイジロウさんには心当たりはないんですか?」
そっか、マダラは喋らないんだな...なら、
「私にも分かりませんね。気づいたらそうなってたんですよ。それからは、ある程度マダラと関係を構築して、そういうもんだと思って一緒にいるんですから」
さすがに異世界から来ましたとは、言えないし.....言ったら絶対に面倒が起こるのは決まってるしね。
異世界ファンタジーの定番だよな....
「そうですか....一体何なんでしょうねあの遺跡は...とりあえずは、わたし達のギルドで許可が下りればセイジロウさんに協力してもらう事になります。その時はよろしくお願いします」
「えぇ、こちらこそ。では、飲みましょうよ、マダラは機嫌良く食べてますし話も聞いてくれますよ」
ビルドさんに追加でエールやピザ、フライドポテトにモツ煮込み、ステーキ肉を注文した。
と、この日は夜遅くまでギルバートさんと過ごした。
▽△▽△▽▽△△▽▽▽△△▽△▽▽▽▽
それからは、翌々日。今日はフローラさんと買い物だ。昨日の昼間にフローラさんと話が出来て、買い物を行く約束を取り付けた。
「こうして、フローラさんと買い物をするのは久しぶりですね」
「そうね、セイジロウさんは忙しかったみたいだしね?...緊急討伐では、ずいぶんと活躍して有名人になったわけだし?...わたしの事は頭の隅っこでホコリがかかってたみたいだし?」
いや、あれから色々と忙しかったんですよ? プリンの販売が出来なかったから、販売を手伝ってくれてるギルド職員さんにお詫びの為に、プリンを作って挨拶周りに....
ギルドの食事処の給仕も出来なかったから、リーナさん、エリナさん、ビルドさん達にも挨拶とフレンチトーストやプリンを作ったり.....
錬金術ギルドからの呼び出しもあったから、そっちにも行ったりね.....
「そんな....いや....後手にしまったのは謝ります。その埋め合わせと言いますか、今日はフローラさんの荷物持ち兼食事をご馳走しますから.....」
忙しいとはいえ、今まで世話になったフローラさんを蔑ろにしたのは俺が悪いと思ったので素直に謝罪した。
「いいわ、とりあえず無事に帰ってきたから許します。なので、買い物を楽しみましょう! 荷物持ちもね!」
最初に不機嫌そうにしていたフローラさんだったけど今は笑顔を見せてくれてる。やっぱり、フローラさんは笑ってる顔が一番だっ!
「はい、畏まりました。して、今日はどちらに?」
「今日は、新作の服を買いに行きますよ」
「じゃあ、ジュリーさんのお店ですか?」
「えぇ、暖かくなってきたし新作が入ったから来てと、この間会った時に言われたのよ」
そう言われれば、暖かくなってきたな....俺も少し服を新調しようかな?
世間話をしながらしばらく歩いてると、見知った店が見えてきた。以前、フローラさんの服を買いにきたお店だ。
お店の扉を開けるとドアベルが鳴り俺達の来客を店内に知らせた。
「いらっしゃいませー!!....あら、フローラにセイジロウさんじゃない?」
「ジュリー、元気? 新作を見にきたわよ」
「こんにちわ、ジュリーさん」
「あらあら、ずいぶんと仲良しじゃない?今日はデート? ふふふ」
「そんなんじゃないわよ、たまたま休みでセイジロウさんが荷物持ちをしてくれるそうだから、買い物にきたのよ」
「ふーん(それを、デートって言うんじゃないの?).....その髪飾りをつけて? 誰のプレゼントかしらねぇ?」
ジュリーさんが言ってるのは前回来たときに、ジュリーさんのオススメで買った髪飾りだ。俺も、フローラさんに会って少ししてから気がついた。陽の光が銀細工に反射して輝いていてフローラさんの髪色にも合っていた。
髪飾りが良く似合ってますと、声をかけたら照れながらも笑顔でありがとうと言ってくれた。その時のフローラさんの笑顔はとても素敵だった。少しニヤケたのは、仕方のないことだ...
「何よっ! 変な笑い方するなら違う店に行くわよ?」
「あーっ! ごめんね、フローラ?さっ!! 新作を見に行ってみて! きっと気にいるのがあるわよ? セイジロウさんも一緒に選んであげてっ!!(まったく、からかうとすぐこれなんだから.....セイジロウさんも大変ね)」
と、ジュリーさんに背中を押されながら、女性服が飾られている場所まで移動させられた。
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