第51話 ギルバートと夕食

No51

ギルバートと夕食





 昼間、錬金術ギルドに向かいその夜に冒険者ギルドの食事処で、少し離れた席に俺とギルバートさん、床にはマダラが寝転がってる。

「では、食事も揃いましたし、では、カンパーイ!」

「カンパーイ!!」

『乾杯じゃ』


 ブゥーーっ!


 って、ギルバートさんっ! エールがかかったよ! あぁあ、ピザとフライドポテトにかかっちゃったよ....


「ちょっとギルバート....吹いたエールが食事にかかりましたよ...」

「いや..だって....すいません。なんか、頭に声が...」


  あぁ、マダラの思念ね....

『マダラ、ギルバートさんに思念をとばしたろ?』

『その男は、会うなりジロジロと視線をぶつけてくるのじゃ。セイジロウやワレに敵意を感じはしないが、礼を知らんやつじゃ。セイジロウの知り合いと言うから、ちと我慢したが......フン、あいさつじゃよ』


 まぁ、別にいいか...どうせこれから、話すんだし。

 ゴホゴホしてるギルバートさんに話しかける。


「ギルバートさん、さっきの声がマダラの能力ですよ。マダラは言葉を発する代わりに、思念を話したい、伝えたい人に飛ばして対話をします。ギルバートさんは、普通に話かければ対話できますよ。それと、あまり粘りがある視線は控えてください。マダラはそういうのに敏感ですから」


「ぁあ、...すいませんでした。....えっと、マダラと呼んでも?....失礼な態度を謝罪します.....」


 ギルバートさんは寝転がりピザを食べてるマダラに頭を下げて謝った。


「.....ほら、ギルバートさんも謝罪したよ? マダラは寛大な存在だろ、許してやれよ...」

『.....フン、二度は無いと思えよ...ピザをよこせ』


「だそうですよ? マダラのピザを頼んでいいですか?」

「はいっ! どうぞ、いくらでも!!...それで、許してもらえたのですか?」


「大丈夫ですよ、なっマダラ?」

『謝罪は受けた。して、こやつの頼みはなんじゃ?』


「おお!! 聞こえますよ、セイジロウさんっ! 凄いですねっ、こんな風に聞こえるんですね!!」


 ギルバートさんは大喜びだ。そりゃ、頭の中にというか、耳の側というか、そんな間近で声が聞こえれば驚くよな...


 前の世界では当たり前のようにあった、電話だけどこっちでは無いんだし...


 携帯があれば連絡手段がとれて便利なんだけどこっちではオーパーツ、アーティファクトとかになるよな?

 モールス信号とかも.....まぁ、無理だな...

電話なんてもっての他だし....でも、街間の連絡手段はあるよな?


「ギルバートさん、ふと気になったんですが、遠くの場所と連絡する手段てどんなのがあるんですか?」


 フライドポテトやピザを食べながらでマダラと何やら話してるギルバートさんに話しかけた。


「えっ、....連絡ですか?」


 ギルバートさんの話を聞くと、早馬に商人、鳥を使った連絡などがあると言った。


「じゃ、言葉と言葉を繋ぐ道具とかは存在しないということですか?」

「いえ、魔導具はありますよ。まぁ、アーティファクトの劣化版ですけど....ダンジョンで極稀に見つかり、現在の知識を用いても解明出来ないものをアーティファクトと呼ぶんですけど」


 ダンジョンあるの? マジで?.....まさにファンタジーだな....やっぱり魔物がウヨウヨいるんだよね?


「あのダンジョンって....魔物がたくさん潜んでいて、地下に何層も階層があるあのダンジョンですか?」


「大まかにはそうですね。アーガニウム国内には確認されてないので、聞いた話やギルドの情報でしか知らないのですが....まぁ、そのダンジョンです」


 この大陸には数ヵ所のダンジョンが確認されている。グルガニウム国内とローレンス帝国にあるそうだ。


 大分昔にグルガニウム国内から、通信の出来るアーティファクトが発見され、兄弟国であるアーガニウム国とグルガニウム国の王族だけがアーティファクトを使っての連絡手段はある。


 見つかったアーティファクトを研究者、各街の領主間と各ギルド間での緊急連絡網は整ってるそうだ。


 ただし、通信には多大な魔力を消費するらしく、Aランク相当の魔石か魔法師数十人分の魔力が必要だそうだ。本当の本当に必要な時以外では使われないらしい。


 急ぎの連絡や火急の連絡は、各ギルドで調教された動物を使いやり取りをするのが通例だとギルバートさんは話してくれた。


 へぇ、やっぱりそんな魔導具は存在するだ....そのアーティファクトも凄いけど、その劣化版を作った人も凄いよな...


 電話で有名なトーマス・エジソンを頭に浮かべるけど、俺はアレクサンダー・グラハム・ベルかな。語源もその名からだと言ってたし.....


『なぁマダラ、マダラと俺は離れていてもこうやって思念で話せるけど、どんだけ離れても思念は通じるの?』


『いや、無理じゃな。せいぜい数十メートルが範囲じゃな。ワレだけなら一方的に伝える事は距離が遠くても出来るが、セイジロウからは無理じゃ。セイジロウがワレと同程度になれば話は別じゃが....今は諦めるのだな』


 なんだよ? 何か含んだ言葉があったけど....藪蛇だな.....


「ギルバートさんどうですかマダラと喋ってみて、緊張も解けてきたみたいですし」

「はい、有意義な会話をしてますよ。すでに、遺跡調査には承諾してもらいました。それに、ある程度の話は聞けましたからよかったです」


 いつの間に?....仲良くなったならいいけどね。

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