第50話 ギルバート
No50
ギルバート
翌日は、朝から錬金術ギルドに向かった。昨日、アリーナさんから錬金術ギルドから呼び出しが来てると言われたから。
さて、何もなければいいけど.....
『マダラ、ちょっと影に入ってくれる? 錬金術ギルドにマダラの事は説明してないから』
『ふむ、騒動はワレも望まんからな』
マダラに影の中に入ってもらい、錬金術ギルドの入口をくぐり受付に向かう。
「はじめまして、私は冒険者ギルドから来たセイジロウです。錬金術ギルドから呼び出しを受けてきたのですが?」
「はい、はじめまして。セイジロウさんですね。少々お待ちください」
錬金術ギルドの受付嬢が書類をめくりながら調べてくれてる。錬金術ギルドの建物内は閑散としていて、あまり人がいないかった。
依頼ボードにはそれなりに依頼票が張られているのが分かるけど....
今はそんなに時間も遅くないし、もっと人がいてもいいと思うけど?
「.......お待たせしました、セイジロウさん。では、ご案内しますのでこちらへ」
受付嬢の案内に従って個室へと入った。そのあとお茶を用意してくれて、少し経つと一人の男性が入ってきた。
「セイジロウさん、呼び出して申し訳ない。わたしが、呼び出しをしたギルバートです」
ギルバートと名乗る男性は、俺と同じ年齢か少し上の男性だ。濃い緑色の髪を短く揃え、顔は端正だが少し顔色が悪い気がする。身嗜みは整えられていて、灰色の研究者が羽織るような長いコートをきていた。
「はじめまして、冒険者ギルドDランクのセイジロウです」
「あれ、Fランクと記憶してますが?」
「先日、昇格しました。まぁ、私の実力じゃない部分が多くありますが...」
「そうだったんですね、昇格おめでとう。ランクが上がるのは悪くないですよ。受け取りかたは本人次第ですけどね」
だよな....まぁ、今は気にしてもしょうがないよな、まだDランクだし....
「それで、呼び出された理由は何でしょう?」
「はい、実はセイジロウさんと従魔のマダラに手伝ってほしい事がありまして....あの遺跡の調査ですね」
ギルバートさんの話を聞くと、錬金術ギルドでは調薬や魔導具開発、作製、魔法研究など多岐に渡る研究開発を主軸にしたギルドだと説明された。
冒険者ギルドの上層部との話からすぐに、冒険者ギルドから各ギルド及びハルジオンの街の要所には、マダラに関する情報が通達されたそうだ。
へぇ、それはちょっと知らなかったな.....俺の知らないとこで情報が回るのは嫌だけど、そのおかげもあって下手な混乱や騒動がないならヨシとするべきだよな....
さらに、冒険者ギルドではあの遺跡に関する情報を錬金術ギルドに開示し、改めて調査をしてはどうか? と、話があり知見豊かな錬金術ギルドが遺跡調査をしているのだとギルバートさんは言う。
「その遺跡調査に私とマダラが必要で手伝ってほしいと?」
「そうですね、調査自体はずいぶんと昔からされてる記録はあるのですが、詳しくは分かってないのが現状だったんです」
ハルジオンの街が作られた時には、すでにあの遺跡はその場所に存在していたが、歴代の研究者達は匙を投げたそうだ。
文字の解読も遺跡に関する資料もなく、手探りで調査を進めるが進展せず、研究者達は軒並み調査を断念した。たまに、遺跡に興味をもつ研究者が現れては調査をするが、新しい発見は少なく現在ではほぼ放置された遺跡だった。
が、そこで遺跡の地下がある魔法陣が発見、さらに発動し従魔が現れたとなれば錬金術ギルドでも見過ごせない。
マダラを召喚した俺に接触しようと考えるが、さきに冒険者ギルドが釘をさしていたのだ。各所に通達された内容には、俺に害が及ぶまたは冒険者ギルドを通さない接触は控えるように、さらに、問題が起きたら冒険者ギルドが全力で動くと記された内容だったと。
「それで、錬金術ギルドは先に遺跡を調査したわけですね?」
「えぇ、ですが.....多少は分かった事はあるんですが少々手詰まりで....」
「で、今回冒険者ギルドを通して私に接触してきたと......話は大体わかりました」
「こちらとしては、遺跡に一緒にいってもらい当時の状況を詳しく再現してもらいたいのと、マダラと対話がしたい事をお願いしたいのです」
「....マダラが喋れると?」
「すでに、ある程度は知られてる情報です。まぁ、そこはギルドですから情報収集は行いますよ」
う~ん、どこまで調べられてるのか? どの世界でも情報戦はあるんだろうな....みんな、どうやって調べてるわけ?
「手伝うのは構いませんが.....あの遺跡に関する情報と調べた結果から分かった情報、それに、冒険者ギルドを通しての依頼及び報酬と私の空いた時間で良ければ受けますよ?」
さすがに無給じゃな....それに、俺もあの遺跡は気になるが調べる知識も伝もないから、今回は渡りに舟だし。マダラと話しても直接的な関係はないみたいなのは、マダラも言ってたけど....あと、召喚魔法が分かるのは俺のメリットにもなるかな?
「分かりました、一度その話は預かって上と話をします。詳細がわかり次第冒険者ギルドに知らせますので......あと個人的なお願いなんですが、マダラを見たいのですが.....」
「まだ、見た事ないんですか? 結構、街中を歩いたり冒険者ギルドの食事処にはいますよ?」
「ハハハ.....何分忙しい身でほとんど自宅とギルドの往復で終わるんですよ。話は聞いているんですが....一度だけ遠目では見たのですよ! いやぁ、ちょっとした感動でしたよっ!! で、セイジロウさんにお願いします、マダラと会わせてもらえますか?」
まぁ、別に構わないけど........
「なら、今夜冒険者ギルドの食事処で一緒に食事しませんか? マダラもいますし、近くに席を用意しますよ? ここで短い時間を過ごすより食事しながらゆっくり話してみてはどうです?」
「.....そう、ですね....はい、わかりました!! 手早く仕事を片付けて....まぁ、何とかしますよ! では、今夜ですね。いやぁ、有意義な話が出来て良かったですよ」
「そうですか? 私としてはそうですが、錬金術ギルドとしては損になるのでは?」
「そんな事はないですよ。冒険者は我が強い人達ですから、まともに話を出来る方が少ないんですよ....私達が丁寧に話しても冒険者達からするとバカにされた気分なんでしょうね。大体の話し合いは決裂して、後日、上層部を通して話し合いをするんです
」
あぁ、それで.....まぁ、口も態度も悪いし我が強いのも分かるけど、以外と気さくで話してると楽しいんだけどね。
「なので、セイジロウさんみたいに話が分かる方は貴重なんですよ。それに、商いの素養もあり頭の回転が早いのでこちらも話していて楽なんですよ。セイジロウさんからの要望も無茶なものじゃないですから、話は上手く纏まると実感したんです」
俺が商売してるのも知ってるんだ.....そりゃ、知ってるか.....まぁ、別に弱味でも何でもないから別にいいけど。
「そうですか。これを機に互いに仲良くやって行けるといいですね。では、ギルバートさんも忙しいと思いますから詳しくは後日にしましょう。今夜は、楽しく酒でも飲みましょうよ!」
「そうですね、時間をとってもらってありがとうございました」
互いに挨拶をして俺は、冒険者ギルドに戻った。今日は、プリンの販売は中止だから冒険者ギルドに着いたら、フレンチトーストだけ販売するか。あとは、ビルドさんに給仕を出来ない事を伝えてと。
お客を連れていくんだから、大丈夫だよな? ギルバートさんには悪いけど、売り上げに貢献してもらおう。
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