第45話 緊急討伐依頼・4
No45
緊急討伐依頼・4
司令部にいたのは、要所の砦を任されてる隊長、グランデールという名の男。濃い茶色の短髪に顔に皺を刻んだ中年男性だ。歳は四十代中盤に見える。体つきは歴戦の兵士と言っても過言ではなく、目付きも鋭い。
その周りには、冒険者と見られる装備をした五人のメンバーがいる。男三の女二だった。戦士、軽戦士、重戦士、魔法使い風の女性が二人。
戦力のバランスとして問題なさそうだ。
パーティーリーダーの戦士スベン、それから、重戦士ガロ、軽戦士フェロ、魔法師レイラ、錬金術師ケイト達と簡単な自己紹介をしてから俺の話をした。
「こちらがギルドマスターからの書状です。......読みながら聞いてくれればいいですよ。私自身はFランク冒険者です。魔法はある程度使えますが、戦闘経験は少ないです。自身を守るので精一杯ですね。今回は、ギルドマスターからの指命依頼ですので、そこに書いてある通りに邪魔にならないようにします」
隊長のグランデールから順に書状の回し読みが終わり手元に書状が帰ってきた。
と、同時にグランデールから早速質問がきた。
「で、ただのFランク冒険者がギルドマスターの書状を持ってくるわけがそれだけとは思えないが?」
「だな、明らかにこの緊急時を覆せる何かがあるのは間違いないな。」
アルタロスのリーダー、スベンさんの言葉に他のメンバーも頷いてる。
だよね....俺もそう思うよ....やっぱり聞きたいですよね? 俺なら下手に詮索しないで、じゃあ頑張ってくださいで終わったのに.....
「えっと....出来れば私としては目立ちたくなく穏便に波風が立たないようにしたいんですよ。だから、見ても驚かずに騒がずにお願いしますね.....マダラ、姿を現せ」
マダラに命じると、足元の影が広がりマダラがその巨体を現した。
俺は、マダラに思念を飛ばした。
『マダラ、大人しくな...思念も俺以外は飛ばしちゃダメだから』
『ふむ、理解したセイジロウ』
ギルドの二の舞にならないように先に釘をさしておく。
「「「「「「「なっ!!」」」」」」
隊長を始めとしたアルタロスのメンバーも目を見開き口を開け今にも叫びそうな時に、
「はいっ静かに! 騒がないでください!私の従魔ですから!!」
と、先に遮る。六人は口を閉ざすも警戒姿勢を向けながら話しかけてきた。
「こっ、これが従魔...だと?」
「初めて見たな....」
「従魔の印は....してるわね....」
「まずは、マダラお座り......こうして私の指示には従いますが、敵対行動をすればどうなるかは分かりますね? 別に、脅すつもりはありません。ただ、何もしなければ何もされないだけだと理解してください」
マダラは素直に俺の後ろでお座りをして、大人しくしてくれてる。隊長やアルタロスのメンバーも警戒を和らげ話を聞く体制になってくれた。
「今日は簡単な現状の話をして、明日改めて話をしませんか? 互いに少し休める時間があった方がいいと思いますし、私も着いたばかりなので急ぎがなければ体を休めたいのですが?」
「....そうだな、では、現在の状況を簡単に話そう---」
それから、三十分程の簡単な話をしてから明日の朝食後に話し合いをすることに決まり、寝泊まり場所に案内にしてもらった。
案内してくれた兵士に朝食の場所とお湯を入れる桶をもらい部屋で体を休めた。
ちなみに、マダラは影の中に戻ってもらってる。
『話を聞いたが時間的余裕は余り残されてないようだのぅ』
『そうだな....それに戦力も集まってないな、これじゃギルドの援軍が着く頃には砦は突破されるな....』
簡単に話を聞いたが、斥候部隊の調査によるとゴブリンとオークの混成団は三千匹弱程の数でこちらに進軍してる。森に生息してる獣や動物、魔物などを狩りながら広範囲に広がりながら向かってきてるのが確認されてる。
集団の中には、ゴブリンリーダー、ソルジャー、メイジ、ジェネラル、オークリーダー、ファイター、ジェネラルも確認されてる。通常ならゴブリンとオークは行動を共にしない魔物だ。
互いに繁殖力が強くどちらの種も、暴力的で野蛮な為に自意識が保てず敵対行動をする種だからだ。
だが、今回は同じ行動をとっている。つまり、統率してる何者かがいると隊長やアルタロスのメンバーは推測してる。
斥候も統率者を探してるがまだ見つからず、報告も砦には来ていない。進軍速度は速くないが今の速度なら二日もすれば森を抜けるのは確実だと。
決戦のタイミングは、森を抜けて開けた草原での戦闘を考えてるみたいだ。
まったく.....こういうのは物語や漫画やアニメの中だけにしてほしいよな....
明日は、希望が抱ける話を聞きたいな....
「...マダラ、先に寝るよ....おやすみ」
『ああ、寝るがよい...』
△▽△▽△▽△▽△△△▽▽△▽▽△▽△
翌朝は、砦内にある広間で炊き出しが行われていてそれを頂いた。野菜や肉を塩と胡椒、ハーブなどで味付けされていて旨かった。
この世界での調味料は価値が高くさらに、貴重だが冒険者や兵士達の士気を維持するには必要だと隊長のグランデールは言っていた。
そして、ハルジオンの街と周辺にある街に応援要請と援軍が向かってきてる事もグランデールから通達があり集まってる人達の朗報となり、士気も維持された。
朝食も終わり、兵士達や冒険者達は割り振られた仕事へと向かい、俺はグランデール達と司令部へ向かい今後についての話し合いが始まった。
「さて時間も少ないので、早速本題に入ろう。現在、混成団との戦闘を想定した各隊の配置はこのようになってる」
グランデールが要所の砦付近の地図を広げて、配置図を指差しながら説明してくれた。
まずは、砦を守護する人員は百五十名で近接員が九十名に遠距離員が六十名で構成されてる。
戦線には三百名弱が部隊ごとに配置されていて、戦場は森と要所の砦を挟んだ荒草地帯だ。見通しが良く遮塀物もない。足場も悪くなく戦う環境として悪くない。
混成団が現れると同時に遠距離攻撃からの近接戦に移行する。救護所も砦内に設置されていて戦場で怪我をした人を運ぶ搬送員も用意されてる。
作戦の概要としては、大雑把だが現状の人数と戦力を考えると戦力の細分化は難しいと、アルタロスリーダーのスベンと隊長のグランデールは言った。
「....やはり厳しいですね。時間が稼げても戦闘から半日でしょう。あとは、どれだけ混成団を削れるかと残った戦力で籠城するしかないですね....」
「勝つのは難しいと....我らが負けると言いたいのか?」
グランデールは少し語気を強めて俺に言った。
いや...無理でしょ....それなりには戦えるとは思うけど三千に対して約五百だよ?六倍の戦力差は伊達じゃないよ。向こうだって強そうなヤツや遠距離攻撃もあるんだし...
「私は無理だと判断します。私達が弱いとは言いませんが、数は暴力ですよ? せめて、倍の千名ぐらいいれば他の手があったでしょうが.....希望的観測は全滅を招きます」
「そうは言うが、アイツらがここを抜けたら周辺の村は壊滅、さらに勢力を広げてハルジオンまたはルインマスの街にも及ぶかも知れないぞ!」
「まぁ、落ち着きましょう。別に逃げろとか言ってませんし....判断を間違ったら全滅だと思っただけですよ....遠距離攻撃を中心に討ち漏らしを叩いて数を減らす作戦には出来ませんか?」
「それでは、取り逃がした奴らはどうする? それなりの数になるぞ?」
「それはしょうがなくないですか? それに、応援もきます。まずは、数を減らすべきでは?」
「ダメだっ! 奴らを仕留めなければ被害は拡大する! 奴らの繁殖力は我らの数倍だぞ。あっという間に増殖して、今よりも増える。ここで仕留めるのが最良だ」
分かるけどさ....間違いなく戦えば壊滅は目に見えてるじゃん....はぁ....やっぱり受けなきゃ良かった。頃合いを見て防衛しつつ籠城するのが生き残る道か?
『セイジロウよ、ワレを使え。ワレなら半数以上は数を減らせるぞ。ワレが討ち漏らした魔物を奴等に任せれば良かろう』
『....本当かよ....それが出来なかったら俺が皆に殺されるんだけど?』
『ふん、逆に殺してやるわ....が、そんな事にはならん。ちと、魔力を多く使うが倒したヤツから魔石を奪って補充すれば問題ないだろ』
『どんな作戦? 俺は危険なの?』
『今から話すから、奴等に説明するんじゃぞ。まず--』
グランデールとアルタロス達メンバーが、作戦について話してる時に俺はマダラからの作戦案を聞いた。
正直、やりたくないけどマダラが主体になるし俺は遠距離攻撃してればいいので、作戦は悪くない。あとは、要所の砦の戦力次第だが.....生き残る可能性は高くなるのは間違いないな....
「......あの、すいません。私から作戦案が一つあります。成功すればかなりの数を倒せます」
「....まずは聞こう。話しはそれからだ」
うん。さすがは隊長だな....良かった、まだちゃんと聞いてくれるみたいだ。
「まず、明後日の夜明け間近に私とマダラが先行して火蓋を開けます。そしたら、討ち漏らしが出てきますのでそれを、迎撃して欲しいです。間違っても私達を攻撃しないでくださいね。ある程度の数は倒せますが、全部は無理です。倒したあとは砦に戻り討ち漏らしの迎撃に参加します」
「....わたしたちより無謀な作戦だな....」
「正気か?....どんな風に考えればそうなるんだ?」
「マダラができると言えば可能です。それに、正直に言うと混戦になると自由に動けません。なので、先制攻撃で出来るだけ動き....いや、暴れたいそうですよ、従魔がね。私もある程度の範囲攻撃魔法がありますし。もし、失敗しても損害は私達だけですし、成功すれば勝ち残る確率が上がる。ローリスクハイリターンです」
生き残るにはこれしかないだろうと俺は思う。ずば抜けた力を持った人がいれは話は別だけど今の時点で紹介されてなければ、この場にいるのが最高戦力なんだろうし...
「....いいでしょう...ですが....いえ、あなたの判断に任せますよ、セイジロウ殿」
「俺らも従おう。リスクは少なくリターンは多いんだ。それに、ギルドマスターからの信頼があるんだ。.....作戦の詰めをしよう」
ふぅ...あとはマダラ次第だな。俺は死なないようにしよう....
これが終わったらハルジオンに戻って、フローラさんとデートしたり新作メニューで金儲けしたり、魔導具作りもいいな....
コレ、死亡フラグじゃないよな?
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