第43話 緊急討伐依頼・2

No43

緊急討伐依頼・2





 冒険者ギルドでちょっとした騒ぎを起こした俺は、ギルドマスターのダンさんに呼ばれて話を始めた。


「セイジロウ、あまり騒ぎを起こすなよ。まぁ、従魔とは仲良くやってるからいいがな...」

「はい、気を付けます。便宜を図ってくれたギルドには感謝してます。まぁ、監視は付いてるみたいですけどね」

 あの話し合いの後で俺とマダラは特に罰則も拘束もなく自由に生活できているが、冒険者ギルドからの監視はついていた。


 監視に気づいたのはマダラの能力でわかった事だ。特に害もないし放置してる。ギルドとしても、前代未聞な従魔のマダラだ。多少の動向は知っておきたいのだろう。


「....感づいていたか...それに関しては寛大でいてくれと頼むしかないな。こっちもやりたくてやってるわけじゃないんだ。セイジロウの事はある程度は信用してる。が、互いに面倒な話だ...」

「私達に害がなければそれで良いですよ。で、ただ苦言を言いたくて呼んだ訳じゃないですよね?」


「ああ、セイジロウとマダラには緊急討伐依頼に参加を頼みたい。特にマダラの力を借りたいと思ってる」

「だと思いましたよ....別に参加するのは吝かではないですけど...私はFランクですし戦闘の経験、大規模な戦闘経験は無いですよ。マダラは私の指示に従いますが、他の冒険者達にはマダラをまだ知らない人や良く思ってない人達もいますし....」


 マダラが従魔だとそれなりに冒険者ギルドでも知られてきたが、他の場所や地域ではまだ知られていない。余計なトラブルは避けたいのだ。


「それは分かってる。だが、こっちも余裕がない。要所の砦で時間を稼ぐにも限度があるし、砦が突破されれば被害は甚大だ。戦力の支援を頼んではいるが、間に合うかどうかは分からん。高ランク冒険者達はいるが......難しいだろうな.....」


「例え討伐に参加したとしても私が間に合うとは限りませんし、向こうに着いて連携が取れるとは思えませんよ」

「今回は、ギルドマスター権限でお前達には特別処置をする。この討伐が終わるまでは、ギルドマスター権限によりギルドマスターから指命依頼を出す。それに自由裁量で好きに動いていい。ただし、魔物以外の殺生は認めん。セイジロウ達に害なす者がいたら、あとで報告してくれれば罰則も与える。どうだ?」


 はぁ....やっぱり面倒事か。自由に動けるのはいいが、絶対あとで色々あるよな....


「過大な評価をしてくれるのはありがたいですが...断れるんですか、ソレ?」

「いや無理だな、ワハハハ! だが、セイジロウにもメリットはあるぞ! まずは報酬だ。緊急討伐依頼の参加報酬に俺からの指命依頼の報酬。ランクアップもできるな。あとは、貸し借り無しだな」


「ギルドに貸しはなかったはずですが?」

「お前の従魔の面倒はすべて処理してるんだぞ? 聞きたいか? 説明は、アンナとスミスでいいか...あいつらはしつこいし頭も良い。お前だけで抑えられるとは思えないがな? んっ? どうだ、悪い話じゃないだろう?」


 だと思ったよ! クソッ....確かにメリットもデメリットもあるよな.....マジで目立ちたくないな....


「.....話は分かりました。こちらからも頼みたい事があります。多分ですが討伐後は私とマダラは目立つでしょう。なので、困ったときは便宜お願いしたい。手に余る面倒は避けたいのです。なるべく、穏やかに平々凡々に暮らしたいのですよ」


「良いだろう。こっちとしてもセイジロウ達の戦力はあって困るものじゃないからな」

「では、それでお願いします。それと、ギルドマスターには一筆書いてもらいますよ? 私がギルドマスターの指命依頼を受けてると...」

「すぐに用意しよう。出発はいつだ? 馬車を用意するから教えてくれ」


「出発は明日で、馬車はいりません。マダラに乗るか能力で移動出来ますから」

「なんだ...引き出しが多いな...まぁ、詮索はしないが教えてくれるとありがたいのだがな?」

「自分達の切り札は安くないですよ? 高いですが、それでも聞きたいですか?」

「.........いや、我慢しよう。互いの距離はゆっくり縮めたいからな。明日の朝、ギルドの受付に寄れ。手紙は用意しておく」


 ギルドマスターとの話が終わり、マダラが待つ場所へと戻るとマダラは冒険者達や受付嬢達に揉みくちゃになってた。


 マダラのお座り姿が人気になって、冒険者達がワイワイやってた。


『セイジロウっ! 反省したから命令を解くのじゃ! ワレは見せ物じゃないぞ!』

『ハハハ、ずいぶんと人気者になったなっ! もう、ワガママを言うなよ.....主が命令する。マダラの拘束を解く』


 命令を解くとマダラは、グルルッと喉を鳴らし近くにいる冒険者達や受付嬢達を威嚇した。驚いた冒険者達や受付嬢達は後退して怯んだ隙にマダラは俺のとこに避難して、影に潜った。


 その姿を見た冒険者達がさらに驚き立ち尽くしてる隙に俺はギルドをでた。そのあとは、メイン通りで売られてる串焼きやケバブ擬き、干し肉やドライフルーツなと日持ちする食料などを買い込んで自宅へと帰った。


▽△△▽▽△△▽△△△△△△△▽▽△△


 その夜に、緊急討伐依頼の内容と移動についてマダラと話し合った。


『ふむ、やっと存分に体を動かせるぞ!』

「まぁ、そうなんだけどさ....目立つと面倒なんだよね...チヤホヤされるのはまだいいけど、我の強いやつがちょっかいかけてきたり、頭の悪い貴族がやってきたりとかあるだろ?」


『それはしょうがあるまい? 力あるものは、良くも悪くも目立つものじゃ。それを捌くのが腕の見せ所じゃぞ』

「マダラが、余計な事言わなければこんな事にはならなかったんだけど?」


『あれは....ワレも反省はしておる。だが、いつまで待ってもセイジロウが外に行かんからではないか』

「俺にも色々やる事があるし、別に好きで討伐依頼をしてる訳じゃないの。わかる?まったりのんびり気兼ねなく生活したいんだよ。どっかの物語の主人公じゃあるまいしバッタバッタと剣を振り回せる程若くないんだよ....」


『セイジロウの言うことは分からんではないが....まぁ、今後の事はまた話せばよかろう。して、出発は明日だがワレが運べばよいのか?』

「距離が結構あるんだよね? 簡単な地図を写して来たけど......大体、二百キロメートルぐらいかな...駆け込んで来た人は三日間ぐらいかかったらしいよ」


『なら、ワレなら一日だな。...と言いたいが、セイジロウが持たんし速度も出せん。二日だな』

「そんなに早く着く?」

『問題ないだろう。その気なら小一時間しゃぞ! それに、街道ではなく森の中を走るのじゃ。最短距離を走れば問題ない』


「ホントに大丈夫なのか? なるべく安全に行きたいんだけど?」

『ワレを信じろ、セイジロウ。ワレは守護者じゃぞ』


 大丈夫かな?.....まぁ、早く着くに越した事はないし、要所の砦もいつまで持つか分からないしな....


「わかったよ....で、荷物なんだけどマダラの影に保管できる? それなりに量があるんだよね...」

『問題ない。だが、維持するための魔力は必要じゃぞ? セイジロウから魔力を吸うぞ?』

「それなんだけど......コレ使える?」


 俺は、いつかの召喚魔法用に魔力を込めた魔石を金庫から取り出した。


「一応、俺の魔力を込めた魔石だから使えるならコレを使ってほしいんだけど?」

『ほぅ、準備がよいな。どれ.......ふむ。問題ないな。これならば十分じゃ。保存はできるじゃろうが、保存する物が多けれ多い程魔力は必要じゃぞ?』


「どれくらいいるの?」

『そうじゃの....この部屋一つでその魔石が一つかの? さらに、もって五日ぐらいかの。定期的に魔石に魔力を補充する必要があるのは覚えておくのだ。忘れてもワレの魔力を使えば問題ないがな』


 異世界ファンタジーみたいに都合良くはいかないか....でも、空間魔法とかだと思えばいいか....


「魔物の魔石でも替えは効くの?」

『セイジロウの魔力の方が効率は良いのぅ。替えは効くがワレの魔力量を増やすのに魔石は必要じゃ。それも忘れるでないぞ』


 あー、忘れてたよ....でも、とりあえずはいいか。あとは、向こうに着いてから穏便に事が運ぶことを祈るか....


 俺とマダラは話をソコソコにして眠りについた。


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