第40話 慣れ始めた日常

No40

慣れ始めた日常





 翌日からは、通常に戻る。プリン販売にフレンチトーストの販売、魔法の特訓にギルドの食事処の給仕、魔石の魔力補充の依頼。


 やることは沢山ある。魔法戦の勉強、森での注意点。探索の仕方。野営のやり方など。ギルドの資料室で薬草、毒草などの勉強、魔物の知識なども少しずつ時間を見つけては覚えていく。


 さらに、三日に一度のペースでゴブリンの討伐にも出掛けてる。たまに、ホーンラビットやファングボア、フェレストウルフなんかも戦いになり戦闘の経験を積み、試行錯誤しなが実力も上がってきてる。


 そして、肉体的にもトレーニングを始めてる。ギルドの鍛練場での体力作りに近接戦の訓練。こっちの世界にはトレーニングジムのような施設はない。なので、バックパックに重りを入れて鍛練場を走ったり、体幹トレーニングをしたり、剣の素振り、あとは体術を習ったりと色々やってみてる。


 まずは試してみて何が合うのか合わないのか検証をしてみてる。ゲームのように魔物を倒してレベルアップしたりスキルを覚えるような事はない。日々の研鑽と努力で身を守るしかないんだ。


 まぁ、魔法はあっけど......


 そんな日々が続き花風季も半ばに入り、温かな風が肌に気持ちが良い。俺はギルドの鍛練場の日陰で体を休めていた。

 休めてる間はマダラと一緒に座りながら会話をする。

「だいぶ、最初の頃より動けるようになったよな?」

『最初よりじゃがな....だが、セイジロウが頑張るずともワレがいるのだから身の危険はないぞ?』


「だとしても、備えはした方がいいだろ?それに、せっかく異世界に来てるんだ。少しぐらい物語の主人公を目指してもいいだろ?」

『セイジロウが満足するならワレは構わんぞ。そろそろ次の依頼ではないのか? ワレはフライドポテトとピザが食いたいぞ!!』

 そんなマダラは欲望に忠実だった。


「マダラって俗物的だよな.....もっと威厳ある感じがしたんだけど今じゃただの食いしん坊にしかみえないぞ?」

『ふん、そんなものが何の役に立つ? 修行僧ではあるまいし、ワレは食べたいのじゃ!』

「はぁ....わかったよ、顔を洗ってくるからマダラは影に入って待ってろよ.....」

 ギルドの食事処に向かいマダラの食べたい物を注文して食べさせる。


 それから、陽も暮れ依頼を終えた冒険者が食事処にやってくる。最近はすぐに満席になる。フライドポテトとピザのメニューが出てからずいぶんと人気が出た。


 ビルドさんやリーナさん、エリナさんと俺は忙しく動き回ってる。マダラも仕事の邪魔にならないように食事処の隅で寝転がりながら食事をしてる。


 マダラは比較的大人しくしてる為、冒険者達にも少しずつ人気が出てる。マダラの為に料理を頼んで与えたり、声をかけたり干し肉を与えたりしてくれる。


 強者になるとマダラの前に腰を下ろし、一緒になってエールを飲んだりする冒険者もいる。マダラ用の皿にエールを注ぎ酒盛りをしたりする。


 マダラがエールを飲むなんて俺も知らなくて驚いて思念を飛ばすと、

『平気じゃ、ちと味が雑じゃがコレはコレで旨いぞ。もっと飲ませるように進めるんじゃ』


 なんて言ってくる始末だ。俺より馴染むの早くね?


 とにかくマダラを怖がらずにいてくれるなら俺としては嬉しい。さて、もう少し頑張りますか!!


 それから数時間後には冒険者達も街中へと繰り出していき、数人を残して食事処は落ち着きを見せ、今はビルドさん達と仕事終わりの一杯を楽しんでる。


「プハーーっ!!...しかし、セイジロウがマダラを連れてきた時は、かなりビビったぜ! 今じゃ大人しいがな...」

「本当だよっ! 最初見た時は、腰が抜けたんだからっ!」

「そうですよー、セイジロウさん。一言いってくれないと困りますよ....はい、マダラ。おいしい?」

「ガウッ!」

 と、ビルドさん、リーナさんとエリアさんが言いながらマダラをかまってくれる。マダラは、そんな三人に軽く返事を返しながら食事を貰って食べている。


「すいません、迷惑を掛けました。でも、今ではみんなが受け入れてくれ感謝してます。ギルドにも容認してもらいましたし」

「まぁな、セイジロウが俺達に何かするとは思ってないからな。何時だってちゃんと考えてくれてるしな。それぐらい、俺だって分かるぜ!」


「うん! セイジロウさんは優しくて頼りになる人だよ! もう少し若かったらお嫁さんになったのにねっ!」

「えっ? リーナはセイジロウさんダメなの?」

 


「だってちょっと離れすぎじゃない? いくつだっけ?.....十二、三さい違うんだよね。やっぱり若い方がいいじゃん? エリーナもそう思うでしょ?」


「わたしはそんな事ないよっ! セイジロウさんは優しくて頼りになるし、気遣いも出来る人だよ。マダラだって可愛いし、わたしは有りだと思うけど....以外とセイジロウさんを狙ってる人はたくさんいるんだよ?」


 なんと、そうなんですかっ!? 初耳...ではないか、アリーナさんも言ってたしな....でも、俺的にはフローラさん押しなんだよな....最近は俺も忙しくて会ってないし、フローラさんからも何も無いしな.....

 マダラの件もフローラさんに任せっぱなしだし、何か声をかけにくいんだよな...


 と、そんな事を考えるてるとリーナさんから声がかかる。

「...さん...セイジロウさんってば!!」

「んっ?...ハハ、ごめんよ、ちょっと考え事してた。なに? リーナさん?」

「後ろ....フロア長が来てるよ」

「えっ??」


 振り向くとそこには今考えていたフローラさんが立っていた。

「セイジロウさん、仕事終わりにごめんなさいね。実は、帰る時にまだセイジロウがいたから声をかけてみたのよ」


「えぇ、大丈夫ですよ。お疲れ様です。フローラさんはこれから、帰るんですか? よかったら、送りますよ?」

「あら、紳士的なのね? 変なことしたら返り討ちよ?」


「大丈夫ですよ、ついでに食事しませんか? 私は少し摘まんだだけですけどフローラさんはまだですよね?」

「えぇ、今日は書類が多くてね残業だったのよ....一人もなんだから付き合ってくれるかしら?」


「もちろんですよ......ビルドさん先に帰ります。リーナさん、エリーナさんお先に!」

 と、挨拶を済ませてギルドの受付で食事処の報酬をもらいフローラさんと街中に向かって歩き出した。


 ちなみに、マダラは俺の影に入ってもらってる。さすがに、夜の街でマダラを歩かせるにはまだ早い。久しぶりにフローラさんと食事か!! 

 ちょっと嬉しい.....いや、メッチャ嬉しいな!!

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