第39話 マダラと討伐依頼
No39
マダラと討伐依頼
マダラと一緒にゴブリンの討伐依頼を受けて、ハルジオンの街を出て西に向かう為にマダラに跨がることにした。
最初はフワフワの毛並みに乗るのが楽しくて嬉しかったけど、途中からマダラが走る速度を上げると風圧も凄くて、しがみつくのがやっとだ。
しかもマダラの背中の毛を力一杯握って、体に襲いかかる風圧に耐えてるから、マダラも毛が引っ張られて痛くはないが、チクチクしてくすぐったいと言って思念を飛ばしてきた。
『セイジロウっ! 背中がムズ痒いわ!毛を引っ張るではない!』
『そんな事言っても風圧が凄くて体が持っていかれるんだよっ!』
『速度を緩めたらまたダラダラとしか進まんではないかっ!』
『ダラダラでいいじゃん! たった数時間歩くだけなんだからっ!』
『ワレはせっかく外に出れたのじゃぞっ! やっと体を動かせるのにダラダラなど出来んわっ! だがら、毛を引っ張るなと言うておろうがっ!』
『なら、速度を落とせよマダラっ!!』
と、風圧で喋れなくて思念であーだこーだ言いながら目的の場所までやってきた。
ちなみに、街道の途中から森に入り葉っぱや小枝は頭や体にぶつかり散々だった....
漫画やアニメだったらこんな事なんて無かったのに.....現実は異世界ファンタジーとは違うと地味に思ったよ....主人公が葉っぱまみれだったり、折れた小枝で顔に傷なんか付けたりしてたらカッコ悪いもんな...
無事に目的地まで着いたので通常の会話に戻した。
『セイジロウ、これからどうするのじゃ?』
「どうするって、ゴブリンを探して倒すんだけど?」
『それは分かっておる。ワレならすぐに片付けてこれるぞ? ワレがやるか?』
「それって、マダラが体を動かしたいの? それとも親切で言ってるのか?」
『.....親切--』
「ハイ! 嘘ぉー! 口ごもるトコが怪しいし、どうせ体を動かすついでにゴブリンを狩るんだろ?」
『別に良いじゃろ! セイジロウの依頼が完了するのじゃ!』
「まぁ、ありがたいのは分かるけど俺自身の実力も把握しとく目的もあるんだよ。ゴブリンはマダラに探してもらうけど、倒すのは俺がやるよ。実践も慣れなきゃいけないし....」
『セイジロウがそう言うならそうしよう。なら、ワレは影に入るぞ。影の中からサポートしよう。危なくなれば手伝おう』
と、森の中でゴブリンを探し始める。
森の中は陽の光が射し込んで視界はわりと良いが足場は良くない。枯れ葉や木の根が足元にあり戦闘になれば足元をとられる可能性は十分にある。
特に道などはなく藪を開いたり、小枝を切りながら進んだ。すると、しばらくしてマダラがゴブリンを発見した。
『セイジロウ、魔物の反応じゃ。ここから百メートル先に五体いるのぅ。ゴブリンじゃ』
「さすがマダラだな....でもどうやって?」
『簡単じゃ、影から移動を繋げて探したのじゃ。森の中は影がそこら中にあるからのぅ』
「魔力は平気なのか? また、俺の魔力からか?」
『これから、戦闘なのにそんなうつけではないわ! 吸いのは安全な街中にいるときだけじゃ』
「そうかい。なら良いけど....良いのか?」
バカな話してないで集中だな。ゴブリンとはいえ魔物だ。舐めていたら死ぬからな。
慎重にゴブリンがいる場所を目指して進むと、残り三十メートル程でゴブリンを確認した。
聞き取れない声を発しながら、車座になり何かを食べてるように見える。出来れば人以外であってほしいと願いながら魔力を練り上げ魔法の準備をしながら近づく。
魔法の射程内に入り、魔法を発動させる。
「土針葬送っ!」
車座になってるゴブリン達に地面から現れる土で出来た針山が襲った。頭や胸、足や手などを無数に刺されたゴブリンの出来上がりだ。
土針に刺されたゴブリン達から少しだけ距離を取りながら、ゴブリンの生死を確認する。五匹共絶命してるのを確認したら、土針を解除して戻した。
ゴブリンの討伐証明の耳を切り落として、小袋にしまい周囲を確認しながらマダラに思念を飛ばす。
『....気持ちわるっ! やっぱり、ゴブリンって醜悪な顔をしてるんだな....マダラ、他に魔物の反応はあるか?』
『半径百メートル内にはいないぞ。それにしてもなかなかの手際じゃぞセイジロウ。日々の鍛練の成果じゃな!』
『まぁな.....でもまだ、発動が遅いし魔力も無駄も多い。課題はあるけど.......それでも頑張ってるし......ヘヘ』
って、三十歳中年のデレッって需要あるのか?....あるよな.....まったく無いわけじゃないよな?
『ふむ、さらに励め。鍛練は必ず自身の助けになるんじゃぞ.....して、この残骸はどうするのじゃ? 血臭が広がるぞ。要らぬなら、ワレの糧にするが?』
マダラが今討伐したゴブリンを食べると言い出した。
『えっ? 食べるのコレ?』
『直接は喰わん。影の中で分解しワレの糧にする。魔力は余り得られんが無いよりマシじゃからな』
『そんな事も出来るんだな....まぁ、好きにしていいよ、魔石だけ残してくれる? あれはギルドで買い取ってくれるから』
『全部か? 魔石には魔力があるからワレの糧にもなるのだが....』
『なら、三つだけ残して。......さて、またゴブリンを探しますか? マダラ、よろしく』
マダラは、ゴブリンの死体を影の中に収めていった。マダラが言ったように影の中に入れたら分解されていくのだろ。
俺とマダラはさらに森の中を歩き回りながら、この後八体のゴブリンと戦闘を行った。
範囲魔法と単発魔法を繰り返しながら戦ったが、やはり近接になって来ると不利になってくる。仕事の合間に剣術擬きな事をやってるが、技量に差がある。
最弱なゴブリンとはいえ、やはり魔物だ。俺より身体能力が上な為に戦闘の途中で背後を取られたが、マダラが影から迎撃してくれて無事に済んだ。
多少魔法が使えても、個人の技量が低いとやはり命に関わる事を再認識した。
戦闘が終わり討伐証明を切り取るとマダラにゴブリンを影の中にいれてもらった。
「マダラ、助けてくれとありがとうな」
『それが、ワレの務めじゃ。こやつらもワレが貰っても良いか? 魔石は半分でよいか?』
「いいよ....さて、十三体か...多いのか少ないか分かんないけど、そろそろ帰るか....マダラ、帰りはゆっくり走ってくれよ?」
『わかっておるが、セイジロウは風魔法が使えるじゃろ。ソレで風の膜を張れば風圧を軽減出来ぬのか?』
「やれば出来るけど...魔力量も余りないし途中で魔力が尽きると思うけど...」
『ならワレの魔力を渡そう、帰りの戦闘はワレがやるからセイジロウは魔法に集中じゃ。風圧が軽減出来るようになれば楽ができるぞ?』
ほぅ、魔力の受け渡しも出来るのか.....なら、やってみるか。これも魔法の特訓だと思えばな。
そして、帰りはマダラに乗りながら風圧を軽減するため、魔法で風の膜を張りながらハルジオンの街まで帰った。
門番にギルドカードを見せ、マダラの従魔の印も確認してもらい街の中入り冒険者ギルドにマダラと一緒に歩くが、やはり怖がられたり逃げ出す人、騒ぐ人はいた。
でも、依頼を終えた冒険者もいて俺を知ってる冒険者が気さくに話しかけて歩いてくれた。
「最初は誰でも怖がるもんだから気にするな! 俺達はすでにマダラを知ってるし、少しずつ良くなるさ!」
「そうたぜ、セイジロウ。その内、慣れてくるさ!」
と、励ましてくれる....こうして知らない土地、知らない世界で人の優しさに触れるとヤバい、涙がでそうだ......
冒険者達と話ながら歩いていくと冒険者ギルドに着いた。ギルドの入り口は、マダラでも何とか頭を下げれは入れる高さだがマダラはには影の中に入ってもらった。
俺はすぐに受付で依頼の報告と報酬、魔石を買い取ってもらい食事処に行った。
食事処の隅の位置に影からマダラを出して寝転がってもらい、ビルドさんに注文をした。
「ビルドさん、エールとフライドポテトと湯豆をくださいっ!」
「おぅ、セイジロウ! 無事に帰ってきたな! 少し待ってろっ!」
「おかえりなさい、セイジロウさん! 今日は、討伐依頼を受けたんですって?」
ビルドさんは無事の帰還を喜んでくれて、リーナさんは俺が討伐依頼を受けた事を知っていた。ビルドさんにしかはなしてないのに.....
「リーナさん、どこでそれを?」
「それは、秘密ですよ。わたしだって少しの情報は集められますよ!」
秘密って....ビルドさんに聞いたんでしょ? そんな探偵顔をしてもバレてますからね?
「はは、そっか。マダラにもピザとフライドポテトを食べさせてくれるかな?」
「はーい! まいどありがとうございます!!」
と、頼んだエールを飲みながら湯豆とフライドポテトを食べ、オーク肉のステーキを俺とマダラは食べてから自宅へと帰った。
自宅に帰って今日の戦闘についてマダラと思念で会話しながら、夜も更けて眠りについた。まだまだ、課題はあるが少しずつ改善していこう.....
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます