第38話 討伐依頼
No38
討伐依頼
俺とマダラの処遇についての話し合いがされてから二週間が経った。そして、今日からマダラを自由にハルジオンの街を歩かせようと思う。ただし、単独行動は許さしてないが....
俺はマダラと会話をしながら歩いている。
「マダラ、今日から街中を一緒に歩くけど大人しくしてくれよ。まぁ、ちょっかいかけるヤツは威圧しても構わないけど、手出しはダメだからな」
『わかっておる。セイジロウには迷惑はかけん』
「なら、いいよ。それと今日から週に一、二回はギルドの依頼を受けようかと思ってる。マダラは街の外で体を動かしたいだろ?」
『座してるのも構わんが、動けるに越した事はないからな。魔物とやらは狩って良いのだろ?』
「良いけど、他の冒険者の横取りはダメだ。それと、襲われている冒険者がいたらマダラの判断で助けられたら助ける事だ。その際には間違ってマダラが襲われる事があるかも知れないけど、それも含めてマダラに任せる。が、人を傷つけてはダメだ。いいな?」
『それがセイジロウの命令なら受けよう』
「命令じゃない、お願いだ。それがこの世界で生きていく為になるべく守るルールだからな。だが、最後のやつは命令だ。俺の命令無く人を傷つけてはダメだ」
『わかった。セイジロウのお願いと命令は受けたぞ。狩った魔物で食えるものがいたらワレにくれるんじゃろな? ワレの糧にしたいのじゃ』
「いいよ。ただ、売れる素材があるかも知れないからギルドで解体してもらったあとにな。それに、まだあの散歩の時に狩ってきた魔物が保管されてるしな。それも同時にすませよう」
マダラの能力の一つに物体を影の中に納める能力があるのを教えてもらった。その話をマダラから聞いた時は所謂アイテムボックスの異世界ファンタジーの名前が浮かんだ。ただし、マダラの方が能力は上だったが.....
だが、詳しく聞くとさらに付随する能力がありそれを聞いた時には驚きで暫く思考が停止した。目立つような使い方をしたらまた、ギルドの上層部から呼び出しがかかる事になるから慎重に使おうと心に決めた。
俺はマダラと話ながら冒険者ギルドに着いた。ギルドに入るときマダラは俺の影の中に入ってもらった。マダラにとってギルドの入り口は少し狭いから。
「アリーナさん、おはようございます。今日は、討伐依頼を受けに来ました。私のランクで受けられる依頼はありますか?」
「セイジロウ、おはようございます。珍しいですね討伐依頼なんて....」
「えぇ、マダラとの連携を確かめる為にも受けようかと思いまして」
「あぁ、マダラちゃんですね。だいぶ冒険者の人達は慣れ始めましたね」
「はい、マダラには窮屈な思いをさせましたが、やらせた成果はありましたよ。今日は、自宅からギルドまで歩いてきたのですが、まだ街中では怖がられる存在でしたよ」
マダラの存在が冒険者達に知られ、冒険者ギルドも従魔として扱っていても、まだ怖がられる存在だとここに来るまでにわかった。
でも、マダラを知ってる冒険者達には受けが良くて干し肉やパンなど余った食料やわざわざ露店で串肉を買ってきて与えてくれる人もいた。
これには嬉しかった。ペットじゃないけどマダラが餌付けされて嬉しそうに喉を鳴らしてる姿をみると、微笑ましくなる。
でも、尻尾の振りすぎに気をつけような。筋肉ムキムキの冒険者がお前が振るった尻尾に当たって地面とチュッチュッしてたぞ.....
「マダラの人気は少しずつ良くなりますよ。ギルド職員の中にも隠れファンはいますから! 寝転がってる姿が可愛かったり、尻尾を振ってる姿が可愛いと聞いたりしますね!」
「そうですか、それを聞くと先は明るくなりますね」
と、世間話をしつつもアリーナさんは俺でも受けられる依頼を見繕ってくれた。まだ冒険者ランクがFランクなので常設依頼の薬草採取と害獣討伐とゴブリン討伐しか受けれなかった。
今回はマダラと森に行って連携と戦力の確認が目的なのでゴブリンの討伐依頼を受けた。
ハルジオンの街を出て西に歩いて数時間程の場所にゴブリンの目撃情報があり調査兼討伐だとアリーナさんが言った。
門番さんに挨拶をすると、マダラに驚いていたが従魔の印を見たら落ち着いて話をしてくれた。
「従魔の印がなかったら、危うく援軍を呼ぶところだったぞ....しかし、噂には聞いていたが実物をみると腰が引けるな....」
「驚かせてすいません。でも、ちゃんと従いますしマダラも勝手に暴れるヤツじゃないんです。こちらに危害が無い事が前提ですけど...」
「ああ、分かってる。従魔は主の所有物だからな....口が悪いのは見逃してくれ。従魔の印は街を出たら外してもいいが要らぬ面倒に巻き込まれたくなければ、そのままの方がいいぞ。魔物と間違って攻撃されたりしても自己責任だからな」
「助言ありがとうございます。では」
と、門番さんに挨拶をして街を出て西に向かった。
俺は街の門を出るとマダラと話ながら一緒に歩く。
「こうして、街の外を一人で歩くのはこっちの世界に来て以来だな」
『今はワレがいるだろ、セイジロウ。しかし、この速度では鈍るな。セイジロウ、ワレに乗るか影で移動するか選ぶのじゃ』
「?....乗るのは分かるけど、影で移動ってなんだ?」
『影で移動は移動だぞ。ワレがマーキングした場所なら影に潜って移動出来るのだ。制限はあるがセイジロウが目指す場所なら散歩の時に行ったからな』
マダラにその能力を聞いてみると、マダラの力を使って以前行った場所に行ける能力だった。だが、それはマダラの力=この世界で取り込んだ魔力、を使うそうだ。
影の移動にはそれなりの魔力を使うらしく、長い距離はまだ無理だという。今回の距離ぐらいなら移動は可能らしいが、戦闘も視野に入れると一往復だけだという。
「じゃ、保管する能力も魔力を消費してるのか?」
『あれはセイジロウの魔力を吸いだして使用するから問題はない。』
「いや、大有りだろ.....なんで勝手に吸ってるの? つか、いつ吸ってるんだよ?」
『ワレの魔力量はまだ少なんじゃ。セイジロウの10倍くらいはあるが、まだまだ足りん。この世界でワレ自身の力は使えるが、使っても補充ができん。ワレの力は、【陽の民】の思祈から得られものだからのぅ』
「それって、マダラの姿が神社の狛犬に似てる事と関係してるのか?」
『あれはワレの姿を陽の民が象った姿だ。幾としの年月が経ちいつの間にか分体になっていて少し悲しかったぞ』
へぇ、神社の狛犬のモデルがマダラだとはねぇ....
「なら、思祈ってのは祈りとかお参りとかに願うヤツか?」
『いや、そうではない。セイジロウが知ってのるはただの懇願じゃな。本来、神社とは【陽の国】を作ったヌシ様に感謝を伝える場所だ。日々の暮らし、生きる喜びなどに対して感謝を伝えるのだ。そして、ワレが言う思祈とはソレを言う。陽の民がヌシ様に感謝し、その思いの力がワレの力にもなる。そして、陽の民を守護するんじゃ』
なるほど....知らなかったわ。神社に行っては○○をお願いします、ってやってた。日頃の感謝を伝える為の場所だったのね。
「じゃ、その本来の力を温存する為に、この世界の魔力を蓄えようと俺の魔力を吸ってるわけか?」
『それもある。が、セイジロウもやっていたではないか。魔力を消費し回復する事によって魔力を蓄える器を大きくする。それをワレはセイジロウの魔力を吸い、ワレの能力で吸った魔力を消費して器を大きくしてるのじゃよ』
「まぁ、言ってる事はわかるよ。要は、マダラも自分の能力、この場合は魔法になるのか? それを使うために魔力量を増やす鍛練をしてるんだろ?」
『そうじゃ、ワレはこの世界ではセイジロウと同じく異質な存在じゃ。使い慣れない力は燃費が悪いからのぅ。セイジロウも本来は持っていない力が、この世界に来てから備わったのじゃ。使い慣れない力は効率が悪くなり燃費も悪くなるのじゃ』
「でも、そんな感じは俺はしてないぞ?」
『それはそうじゃ、初めて使う力なんじゃ。分かるわけないじゃろ、もっと知識を集め修練し理解すれば効率もあがるじゃろ。それより話は終わりじゃ。細々としか進んで終わらんではないか....影か乗るか選ぶんじゃ』
マダラに話をぶった切られ、影移動には興味があったがそれよりもマダラに乗ってみたかった。
早速、マダラ乗ってゴブリン退治にいくぞー!
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