第32話 選択の先に創造された世界
No32
選択の先に創造された世界
翌日、普段通りに冒険者ギルドに向かいプリン販売とフレンチトーストを販売してると、
「セイジロウっ! 体調はどうよ?」
シグリウスのリーダーのグリムさんが、ギルドの食事処にやってきた。
「グリムっ。色々迷惑かけたよ。助かった」
「気にすんな、最初は誰でもそうだ。無事に街に戻れたんだ。今日は、プリンを買うついでにセイジロウの様子を見に来たが大丈夫そうだな」
「あぁ、問題ないよ。.....プリンだね。シャリーとスミレットの分?」
「と、俺とウィードだな。前に食べた時に以外と旨くてなっ!」
「そりゃ、よかった。.....はい、四つね。みんなによろしく伝えてくれ。また、俺じゃ難しい依頼の時は頼らせてほしいと」
「ああ、いいぜ。セイジロウはなかなかに見込みがあるし自分勝手に行動しないし、思慮深い。こっちも歓迎するぜ! じゃ、またなっ!」
グリムはプリンが入ったカゴを片手に帰っていた。たぶん、今日はオフなんだろう。
グリムさんが帰るとマダラが俺の影の中から思念を飛ばしてきた。
『セイジロウ、そのプリンは甘味か? ワレにも捧げよ。』
『なぁ、マダラ....急に思念を飛ばさないでくれよ。今は仕事中なんだし....』
『なら、何時ならいいんじゃ? それに、急じゃない思念なんてないぞ。バカなのか?』
『口が悪い守護者もいたもんだな....だいたいなんだよ、捧げよって、お供えか?』
『そうではないが甘味は珍しい物じゃからワレも食したいのだ』
『ダメだね、これは売り物だ。供え物じゃない。つか、マダラは腹が減るのか?』
『いや、減らんぞ。お主の力を....魔力を糧にしてるからな。まぁ、ワレが蓄えてる力もあるから困らん』
『俺の魔力を食べてるのか? 魔法が使えなくなるからやめてくれよ!』
『根こそぎ取るわけではないぞ。それに、ワレはセイジロウに喚ばれたのじゃ。セイジロウが糧を寄越すのが筋じゃろ。そして、糧を得た代わりに守護するんじゃ。それが盟約じゃ。それに、この世界ではワレの力が使いづらいようでの....ワレも魔力とやらを増やさねばならん』
『?...なんか色々聞きたい事がまた出て来たぞ?』
『気になる事があれば話すが....甘味を所望する。話はそれからじゃ』
『おい、....ったく......』
と、なんだか面倒が増えた感が満載だ。とりあえず、今はフレンチトーストの販売をしよう。
▽△▽△▽△▽△
一日の仕事が終わり、お土産にピザとフライドポテトをビルドさんに頼んで作ってもらった。今夜の夕食にするんだ。ちゃんと買ったよ!
仕事が終わって貸し家へと帰ってからマダラから話を聞く事にした。
「で、昼間の話を聞こうかマダラ?」
『昼間の話とは、ワレの力の話か?』
「そうだよ......とりあえず、メシ食べながらでいいか?........わぁっ! アチチっ!」
ピザとフライドポテトを食べてると俺の影から突然、顔だけ出して口を開けて催促してきた。
その姿にビビった俺は紅茶を溢して、今は淹れなおした紅茶を飲みながら、ピザとフライドポテトを半分だけマダラに食べさせてやってる。
『ふむ、なかなかの美味じゃ。昔には無かった食べ物じゃな。』
「昔って....古代の間違いだろ。で、その影から出る事も含めて色々とマダラと話をしておかなきゃダメだろ?」
『ワレは別に困らんぞ。ワレはセイジロウの守護者じゃ。危険が起こればすぐにセイジロウを守るだけじゃ』
「それは、ありがたいんだけど.....マダラにどんな事が出来るとか、何が出来ないとか知っていた方がいいだろ?」
『セイジロウがそう思うならそうだろうな』
「何か他人事に聞こえるのは、俺の気のせいか?....とりあえず、食事が出来る事と影から出る事、魔力が必要な事、あとは....寝たりするのか?」
『睡眠は必要ない。それに、どうじゃ!』
「ぎゃっ!!.....って、バカか!!ビックリしただろうっ!」
マダラが突然、俺の腕に噛みついた...が、特に怪我はなかった。それに、マダラが通り抜けた?
『この通りじゃ。次はワレの頭を触ってみよ』
俺は、言われるままにマダラの頭を触った。すると、今度はちゃんと触れた。
「これが....これがマダラの能力なのか?」
『違うぞ、念体じゃ。こうしてワレの意思一つで触れたり触れなかったりと出来るのじゃ。それに、ワレがただ食い物が欲しくて所望したわけじゃないぞ。この世界での食物を食し分解し、魔力を吸収して糧としてるのじゃ』
「??......説明キボンヌ」
マダラには高度過ぎたか.....ツッコミ担当が俺だからしょうがないか。
マダラは華麗にスルーして説明を続けた。
『?....この世界は、セイジロウがいた世界とは別じゃ。別と言うのは、星が違うとか世界とかではないぞ。存在自体が別なんじゃ。この世界は、幾重もの選択から選ばれ存在する世界じゃ』
「いや、分からん」
『ふむ、.....ではじゃ。セイジロウは想像世界を知っているか? 選択の先に存在する世界じゃ。ワレに会わなかったら? 遺跡の地下に落ちなかったら? 遺跡に行かなければ? といった選択をしなかった別の世界じゃ』
「なんか、本で読んだ事があるな....」
『そんな世界が想像の中ではなく、創造した世界がこの世界じゃ。セイジロウが理解できない理解していない、そんな世界の一つに迷い混んだのがセイジロウじゃよ』
「...!?....マジか.....でも、なんで....」
『創造した世界。誰が造り出した世界でもなく誰もが造り出した世界。何かを造り出すには力が必要じゃ。力とは目に見えるものだけではない。その力の一つが【思い】じゃ。思いの力は世界をも造り出す。そんな力は時として、次元を歪める。歪んだ次元、空間に紛れ込んだ者を【迷い人】と呼ぶ。セイジロウには"神隠し" と呼んだ方が分かりやすいじゃろ』
「....神隠し....じゃ、あれは....」
俺はあの森で見た光景を思い出した。この世界に来た場所を......
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