第33話 無知とは罪か?

No33

無知とは罪か?





 マダラと昨晩は、話し過ぎて今日は少し寝不足だ。荒唐無稽で現実感もない話をして頭も痛い。


 だが、どんなに言葉を並べても現実は目の前にある。煉瓦と材木で作られた建物の中で、木の器でプリンの原液を作って小振りの陶器に流し、蒸し器の中に並べて蒸す。プリン販売の為に俺は、必死に仕込みをしている。


 これが現実だ。科学的に証明が難しい魔法が存在する世界で俺は、プリンを作ってる!! 


 いや、力強く言ってなんにも変わんないんだけだね....はぁ


「色々、試して見ないとダメかな....」

 そんな呟きに近い俺の独り言に、マダラが思念を飛ばしてきた。


『セイジロウ、ちと見聞に行ってきて良いか? 街中にいれば危険は無いのだろう?』


 俺は、マダラに思念を飛ばして答える。

「はい?『急に、何言ってんの、マダラ?見聞てなんだよ?』」


『セイジロウは、昨日も今日も同じ行動じゃ。ワレは、周りの環境を知って起きたい。いざ、何か合った場合を考えると地理は把握しておきたいのじゃ』


『いや、言ってることは分かるけど....人目があるし無理だぞ。街の外に出れば何とかなるから、もう少し待てないのか?』

『その心配はない。ワレは一度知覚した場所なら距離は関係ない。あの遺跡の地下に移動してから周囲を観察してくる。では、夜には戻るからプリンを用意して待つのじゃ』


『おい!待て......』

 何なの? アイツは俺の守護者じゃなかったっけ? はぁ....別にいいや。とりあえず、フレンチトースト売らなきゃ...


 昼も過ぎてフレンチトーストもあと少しで完売になる頃、フローラさんがやってきた。

「セイジロウさん、こんにちわ。フレンチトーストを一つお願い、あと紅茶も」

「こんにちは、フローラさん。フレンチトーストと紅茶ですね。休憩ですか?」

 と、フローラさんは目の前のカウンターに座った。


「えぇ、花風季になったからギルドも忙しくなってきてね。書類仕事も疲れるわ....セイジロウさんは最近どうなの?」

「私もそれなりに忙しくやってますよ。プリンも売れてますし、フレンチトーストも上々ですよ! はい、お待たせしました」

 出来たのフレンチトーストとハーブを利かせた紅茶を出した。


「ありがとう、いただくわ!....んっ! 美味しいわっ! やっぱり甘いのは良いわね!」

「喜んでくれてありがとうございます」


「そういえば、魔法の鍛練はどうなの?」

「ちゃんとやってますよ。魔力量も増えましたし、操作性も上がりました。あとは、使える魔法も増えましたね」

 忙しい日々の中でも、時間を見つけては少しずつ魔法の特訓はしてる。


「そう、順調で良かったわ。最初街に来たときは大変だったわよね」

「そうでしたね、あの頃は迷惑掛けました。ここまで来れたのはフローラさんのおかげでもあります」

「いえ、セイジロウさんが頑張ったからだわ。......さて、わたしはもう少し頑張ります。また食べに来ますからね!」

 と、久しぶりにフローラさんと話せて良かった。やっぱり美人と話すのはいいなぁー!!


 さて、フレンチトーストも売れたしどうしよっかな?

 てか、マダラはどこ行ったんだよ? 余計な事してなきゃいいけどな....マジ頼むよ...良いことすれば嫌な事は起こらないよな?


 とりあえず、良いことをしておこうと思い、販売を手伝ってくれてるギルド職員に話しかけた。

「あの、プリンはまだありますか?」

「はい。まだ少し残ってます。補充ですか?」


「いえ、時間が少し空いたので休憩しようかと....プリンを三つ売ってもらえますか?私の奢りなんであとで食べてください。報酬とは別ですから、心配しないでください」

 プリン販売を頑張ってくれてるし、たまにはこういうのも悪くないでしょ。


「わぁ! 本当ですか?! やったぁ!」

「本当にっ?やったねっ!」

「「セイジロウさん、ありがとうございます!!」」

 と、プリン販売を手伝ってくれているギルドの女性職員の二人はとても喜んでくれてた。


 ちなみに、俺がおごった事は内緒にしてもらった。今回は、ただの気まぐれだからだ....毎回おごっていたらお小遣いが減っちゃうよ.....


「じゃ、向こうで休んでますから何かあったら呼んでください」

 と、アイスティーとプリンを持ってテーブル席に座った。


 自分で作ったプリンを食べて自画自賛しながら、優雅にティータイムを過ごす。まるで、セレブになった気分....ではないな。


 材木と煉瓦で建てられた中でのプリンとアイスティーじゃな....前の世界なら希少的な場所で人気がでそうかな?


 休憩も済ませ陽も暮れ夕方になり、ギルドの食事処での仕事の時間になった。

 そして、出来れば聞きたくなかった。決して、俺のせいではないと、情状酌量を認めてほしいと.....


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「オーイ、エールを三つにフライドポテト2つ、ピザのチーズ入りを二つだ!」


「ワイン割りを四つに、チーズの盛り合わせを二つね!!」


「おい! エール四つにオーク肉のステーキを四つだ!!」

 陽が暮れてから一気に忙しくなった。俺とリーナさん。エリナさんにビルドさんもフル回転で働いた。


「はーい! お待たせしました!」

「エール、お待たせっ!!」

「ステーキ四つ出来たぞ! ついでに、フライドポテトにピザだ! さっさと持っていけ!!」

「はい!ワイン割りおまたせ!!」

俺は出来上がった物を次々にビルドさんに言われてお客へと運んでいく。


 メチャ忙しいっ!!

そんな忙しく働いてると気になる会話をお客の冒険者達が話していた。


「そーいえば、聞いたか? デカイ魔物が現れたらしいぜ?」

「そーなんだよ! 俺も話聞いたぜ! 森の中をすげえ早く走ってた黒い魔物!!」


「聞いた、聞いた!! 俺の知ってるパーティーがコボルトと戦ってる時に、横からいきなり現れて四体のコボルトを瞬殺!!で、殺したらまた消えるように走り去ったって!! 黒白の毛にウルフに似た魔物だったそうだぜ!」


「やべぇな! 話を聞く限りじゃDランクより上の魔物っぽいな。ギルドは確認が取れたら動くかな?」

「先に、調査隊を出すだろ。冒険者の証言はあるが見間違い...とは思わないが、ギルド職員が出るだろうよ」


 あれ? なんか聞いてると思いあたるフシがあるんだけど? つか、マダラは帰ってきたのか? 俺は、思念を飛ばしてみる。

『おい、マダラいるのか?......いたら返事しろ?オイ......オーイ.....』

 ふむ、マダラは帰って来てない......でも、マダラとは決まったわけじゃない。たぶん、新種の魔物かハグレだと......だといいなぁ....


 それから、冒険者達の話に聞き耳を立てながら仕事をこなし最後の片付けをしてると、

『セイジロウ、帰ったぞ。なかなかの世界であった。化物がそこら中にいたぞ! まるで、陰陽があった陽の国を思い出したぞ。周辺も隈無く調べたぞ。まぁ、ワレにかかれば容易だがな』


 やっと帰ってきやがったよ! 今、何時だと思ってるんだよ!

『マダラ、あとでちょっと話そう。今後についてしっかりと話そう。なっ!』

 と、手短にマダラとの思念を切り上げ、仕事も切り上げてお土産をもらい、自宅へと帰った。


 可及的に迅速に、持てうる人脈を使いマダラについての問題を解決しなければならない。


 はぁ.....ホントやだ。なんで? どうしてこうなったの?

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