第30話 遺跡の地下

No30

遺跡の地下





 ゴブリンの討伐依頼を受けた俺は、『シグリウス』のパーティーにサポートしてもらいながら、古い遺跡へとやってきた。


 斥候のウィードさんの話を聞きながら作戦を立てている。

ウィードさんの話によると、この先にある古い遺跡の中央部分の広場に三十匹前後のゴブリンがいると。


 ゴブリンの集団には棍棒や剣、斧などを武装している。さらに、ゴブリンリーダーと呼ばれる指揮官を確認したと。


「なかなかの集まりだな...スミレットとセイジロウの魔法で初撃を任せてからの乱戦になるか?」

「そうだろうな.....シャリーは弓で遠距離からだ。ウィードとはシャリーを護衛しながら遊撃でいいな?」


 グリムとリンクが作戦を立てていく。俺とスミレットさん、シャリーさんは頷きをして返事をする。


「分かりました。グリムとリンクはどうしますか?」

「俺達は、ただゴブリンを殺すだけさっ!」

 と、ウィードの問いかけにグリムさんはサムズアップで返し、リンクは頷きで返事をした。


「作戦は決まったな。シャリーは弓が撃ちやすい場所を確保しに行ってくれ。ウィードも一緒だ。合図は、魔法攻撃だ」

 シャリーとウィードが素早く移動しはじめた。


「セイジロウとスミレットは、火力重視の魔法を初撃で放て。そのあとは各個撃破だ。出来れば最初にゴブリンリーダーを狙ってくれ。分かったら移動するぞ」


 俺達四人は、古い遺跡の端までやってきた。茂みに隠れられる場所で様子を伺いながら待機する。


 そしてグリムとリンクが俺達を見て頷く。


 スミレットさんは、火魔法を唱え始める。俺も同じく火魔法の準備をする。

 お互いに顔を見て軽く頷き魔法を山なりに放った。

「ファイアボールっ!」

「爆炎球っ!」


 それぞれの火魔法が無数にゴブリンの集団に向けて直撃すると同時にゴブリン達は燃え上がった。

 ゴブリン達は、突然飛んできた無数の火の玉に体を燃やされ、喚きながら地面に転がったり、体についた火を消そうと走り回ったりした。


 俺達の魔法が合図となりグリムさんとリンクさんは、ゴブリンの集団へと駆けていき、ゴブリンを倒していく。


 シャリーは、遠くから弓を放ちゴブリンの体に弓を射していった。腕や腹、足に頭と視界に入るゴブリンへと弓を射っていく。

 ウィードさんは、集団から逃げていくゴブリンを殺していく。シャリーにゴブリンが近づいていないか確認しながら倒していった。


 俺とスミレットさんは、グリムさんやリンクさんから離れているゴブリンや、背後からグリムさん達を狙っているゴブリン集団から逃げるゴブリンを魔法で攻撃して殺していく。


 周囲を確認しながら魔法を放ってると、グリムさんとリンクさんがゴブリンリーダーと戦っていた。その戦闘は危なげなく息の合った連携だった。


 俺はほんの少しだけその戦闘に見惚れつつも、集団からあぶれたゴブリンに魔法を放って殺していった。


 長いようで短かったゴブリン集団との戦闘も終わり、辺りは焦げ臭く血の匂いがしていた。

「みんなっ! 怪我はないか? 各自周辺を確認しながらあつまれっ!」

 と、グリムが声をあげる。


 俺とスミレットさんは、周囲を見ながらグリムさんとリンクさんが居る場所に近づいていった。

 シャリーさんとウィードさんも走りながらやってきた。


「みんな、よくやった。怪我はあるか?」

「大丈夫よっ!」

「平気です!」

「俺も平気だ」

「こっちも平気だよ」

「同じく平気です」


「なら、討伐部位を切りとって一ヶ所にゴブリンを集めよう。焼き払ったら出発だ」

 と、各自作業に移った。一時間程して作業が終わりゴブリンの山ができた。

 俺は、ゴブリンの山に火魔法を放つ準備を伝える。


「しゃ、俺が火を放ちますよ! みんなは、少しだけ離れていてください!」

 と、グリムさん達に声をかけて火魔法を放とうとした時、


ビシッ!.....ビシシっ!...ホグゴォッ!!


 と、俺が立っていた広場の足元が陥没して穴へと落ちていった。

「「セイジロウ~っ!!」」

「「セイジロウさんっ!!」」


 と、シグリウスの人達の声が聞こえたのを最後に視界は暗転した。


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 俺は気づくと地面にうつ伏せになっていた。体の痛みを感じながら周囲を確認するが、辺りは薄暗かった。痛みが走る腕を見ると落下した時に出来たのか、血が流れていた。まずは簡単な応急処置をしてから、キレイな布を細長く裂き、簡易の包帯で巻いた。血が滲んでくるが今は仕方ない。


 上を見上げると、落ちたと見られる穴がありそこから陽が入り込んでいた。声を出してグリム達を呼んでみるが返事はなかった。


 高さからして、自力で登るのは難しいと判断し近くに落ちていた自分の荷物からカンテラを取り出して火を灯す。カンテラの外部は壊れていたが何とか灯りは点いた。


 灯りで明るくなった穴の中を改めて見ると横穴が二つあった。その一つに向かって警戒しながら歩いていく。


「たくっ、最後の最後でついてなかったな....まぁ、怪我は軽傷だったからついてたのか?....それより、出口にたどり着けるかだよな」

 と、独り言をブツブツと口ずさみながら道? なりに歩いていく。


 体感ではかなり歩いた感じがすると体の疲れを感じた頃、少し広い円形の場所にたどり着いた。周囲を確認し魔物がいない事を確認したら、小さな火魔法を待機状態で発動した。


 すると、そこには魔法陣とか召喚陣とかに似た紋様が描かれた床が見えた。

「こっ、これは....? あれか、アニメやゲーム、魔術とかに使われる魔法陣か? なんで、こんな場所に.....明らかに怪しいだろ....」


 俺は火魔法の明かりを頼りに円形の広間を見渡す。所々には円柱の柱が何本か立ち、数本は崩れて倒れていた。

「使われなくなってだいぶ経ってる場所だな....まぁ、遺跡があったんだから、何かしらの文化や文明があった場所には違いないが....んっ? あれは....」


 周囲を歩きながら見てると、石の台座に置かれた石板を見つけた。そこには、知らない文字で描かれた文章と絵図が記されていた。


「この遺跡で使われていた文字か? 何かの儀式のやり方か?.....念のため書き写していくか....」

 俺は、前の世界のメモ帳とボールペンを取り出して写していく。こっちの世界では存在しない紙とボールペンを今だに大事に持っているのは、元サラリーマンの嗜みだ。


「.......よし。何かの発見に繋がるといいな....報酬とかあるかな?」

 と、さらに床に描かれた魔法陣らしき物を描きながら歩くと....魔法陣が少しずつ光を発し始めた。


 なぜ? と思いながら床を見ると、俺の腕から伝って流れた血が魔法陣の上に点々と落ちていた。


「....これって、あれか?....俺の血が魔法陣発動の鍵になった感じか?.....不味いな...どうなるか分からんが....避難はした方がいいな」

 実際、こんな場面に遭遇すると頭の回転が遅くなる。自分が知らない体験をするとパニックになるやつだな...


 俺はすぐに魔法陣の外に出て崩れた円柱に身を隠した。魔法陣は輝きをさらに増していた。止める方法も知らないし、出口もわからない。とりあえず隠れるといった単純な行動しか出来なかった。


 そして、輝きを増した魔法陣は瞬間的に強い光を発した。

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