第29話 初討伐
No29
初討伐
すでにこの世界には来て5ヶ月が経ち、水風季が過ぎ氷雪季も終わりに近付いてきた。
氷雪季の間は、資金稼ぎと魔法の特訓に読み書き計算に力を入れてきた。そのおかげもあり、資金は小金貨5枚まで貯まり、魔法の腕も上がった。読み書きもほぼ出来るようになり、冒険者ギルドの依頼提示板に張られている依頼書も読めるようになった。
そして、ついに初の冒険に旅立つ日が来た。なんだかんだで5ヶ月もハルジオンの街で引きこもっていた。
べつに好きで引きこもってた分けじゃない。こっちも色々やらなきゃいけない事があったんだ。アニメやゲームみたいにすぐに冒険が出来るのは、空想の中だけだ。
俺は、冒険用の服と装備に着替えて街門へと向かう。そこに待っていたのは、
「よう、セイジロウっ! 今日はしっかりとサポートしてやるよ!」
「セイジロウ、報酬は期待してるぜ!」
「まだ、何もしてませんよ! すいません、セイジロウさん」
「そうよっ!セイジロウは私たちが守るわっ!」
「そうです!プリンは私たちがいただくわっ!!」
と、今日の初冒険に雇った冒険者パーティーの『シグリウス』の面々だ。
男3人に女2人の5人パーティーだ。
後衛・弓担当のシャリー。後衛・魔法担当のスミレット。前衛・盾担当グリム。前衛・攻撃担当リンク。斥候遊撃担当・ウィード。の5人だ。
シグリウスメンバー達とは、ギルドの食事処の常連でよく食べに来てくれる。冒険者ギルドの中でも実力派で名も通ってる。
そんな人達に初冒険の補助を依頼したら、快く受けてくれた。報酬は1人銀貨1枚に食事処での食べ放題プラス女性にはプリンとハチミツプリンのセットだ。
依頼はきちんとギルドを通して受けてもらい、俺の受けた依頼は『ゴブリン討伐』だ。異世界ファンタジーの定番依頼だな。
ハルジオンの街から1日程歩いた場所に、古い遺跡がありそこにゴブリンが居付くそうだ。その定期的な討伐を受けた。
ソロでは危険な仕事だ。もちろん、実力がある冒険者なら問題ないが、俺はFランクのしかも戦闘は素人だ。
他にもソロの俺で受けられる依頼はあるが、魔法を使いたい衝動と魔物との戦闘経験を積みたいが為にこの依頼を受けた。そのサポートを申し出てくれたのが『シグリウス』達だ。
「今日はよろしい、シグリウス」
「あぁ、任せな。じゃ、早速行くか...予定は、遺跡の手前で野営し、翌朝からゴブリンの討伐だ。討伐して、街の手前で野営して、翌日に帰ってくる。いいな?」
「はい、準備もできてるよ」
背負えるバックパックにテントやら食料を入れてきた。剣も準備もしたし、治療薬も準備した。
「セイジロウは、隊列の真ん中で。前後は俺らが担当する。戦闘時は、シャリーとスミレットの後衛だ。味方に攻撃するなよなっ!」
「ちょっと、グリム。セイジロウさんは依頼主ですよ!」
「平気だよ、グリムも場を和ませようとしただけだし」
「大丈夫よ、指示はわたしとスミレットが出すわっ!」
「任せてくださいっ!」
何とも最初は少し不安になったが、いざ戦闘になると違った。
街道から外れ遺跡に向かうために森に入ると、しばらくして接敵した。
「前方に、フォレストウルフ4匹です。やりますか?」
「おぅ、釣ってこい。セイジロウ、初戦闘だ。ウィードがこれから、フォレストウルフを連れてくるから、一発かませ!シャリーとスミレットは、セイジロウと同時に攻撃だ。俺とリンクは、撃ち漏らし担当だ。ウィードは、遊撃しながらセイジロウ達をカバーしろ。....ウィード、頼んだぞ。
」
と、リーダーのグリムが素早く指示を出して作戦開始になった。
少ししてウィードが戻ってきた。
「すぐに来ますっ!」
と、仲間達の間を走りすぎるとその後をフォレストウルフが姿を現す。
「氷弾っ!!」
「ウィンドアローっ!」
俺とスミレットの魔法がフォレストウルフ達に向かって放たれた。シャリーも、弓を放っている。
ガッ!..キャウンっ!...グガァッ!
と、フォレストウルフの悲鳴が聞こえた。
グリムとリンク、ウィードも攻撃に参加し、あっという間にフォレストウルフ4匹を討伐した。
「おっ...おわり?」
「あぁ、そうだ。初戦闘勝利おめでとさん。さて、さっさと素材の剥ぎ取りして埋めちまうぞ!」
「やったね!セイジロウっ!」
「やりましたね、セイジロウさんっ!」
シャリーとスミレットが肩を叩いて喜んでくれた。思っていた戦闘とは違い、少し拍子抜けだった。でも、それはシグリウスのメンバーがいたからだ。俺一人で4匹のフォレストウルフはまだ相手に出来ないと、気を引き締めてから剥ぎ取りを手伝った。
肉を切り裂く感触と鼻につく血の匂い、視界に入る生肉。現実は残酷だが、これが冒険者だと思い剥ぎ取りをした。
フォレストウルフの牙に、毛皮、小さな緑魔石を手にいれた。これを売却して冒険者の収入にする。フォレストウルフの肉は、食べれる部分が少なく、腿肉だけを取りあとは土を掘って埋める。
「さっ、そろそろいくぞっ!! あと、数時間も歩けば目的地だ。」
「このペースならギリギリ目標地点につけそうねっ!」
リンクとシャリーが言ってくる。
「そうだな、いくぞっ!!」
パーティーは今夜の野営地を目指して進んでいく。
実際に1日歩くのは辛かった。慣れない森の中といつ魔物と出くわすかもしれない緊張感。前の世界では、こんな行動は一度もしたことがなかった。
パーティーのみんなにも気を使ってもらいながらも夕方もギリギリになって予定地に着いた。すぐに野営の準備に取りかかった。
俺は、途中で拾ってきた薪に火をつけて鍋にお湯をいれて、夕食の準備だ。
今夜の夕食は、野菜とソーセージ、干し肉をいれたスープにフォレストウルフの串焼きだ。それと、冷たくなったピザを温めた物だ。
俺のテントはグリムさんが料理中に準備してくれた。
「わぁっ!良い匂い!」
「うんうんっ!エヘヘ!」
「旨そうだなっ!」
「早く食べたいですね!」
「準備は終わったぞ。」
みんな火の回りに集まってきて夕食開始だ。
「美味しいっ!いつも食べてる具材なのに、味が全然違うっ!」
「ホントーっ!おいしぃ!」
「旨いなっ!この、フォレストウルフも柔らかいな!」
「あぁ。ウマウマっ!」
「ハグハグハグ....」
どうやら喜んでくれたようだ。こうして、空の下での野営は久しぶりだな。かつて行ったキャンプを思い出すな....
料理も食べ終わり、夜の見張りになったがリーダーのグリムさんが休めと言ってくれたのでお言葉に甘えた。どうやら最初から打ち合わせ済みだったらしい.....面目ない。
無事に朝になり、昨日の夕食に具材を足し朝食を食べてから遺跡へと出発。
ウィードさんの斥候もあり、魔物には出会わず遺跡の近くまできた。
斥候のウィードさんが戻ってきて遺跡の状況を知らせてきて作戦会議になった。
いよいよ、ゴブリン討伐だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます