第19話 セイジロウ・家を借りる
No19
セイジロウ・家を借りる
今日は目覚めは最高だ。何とフローラさんとの買い物デートだからなっ!
美人の女性とデートなんていつぶりだ?....
いや、初めてだな...さすがにあのレベルの女性とは知り合った事は無かったな...
せいぜい、営業先の大企業の受付嬢か、夜の店ぐらいだったわ...
はぁ...とりあえず準備しよ。
待ち合わせはギルドの食事処だ。もっとシャレた場所が良いけど、知らないし....
買い物リストと貸家の事、魔法の事などを思い浮かべ考えてると、
「セイジロウさん、おはようございます。待たせてしまいましたか?」
「いえ、先ほど来たばかりですよ」
一度は言ってみたい台詞だよなっ!
「では、行きましょうって言っても、私はまだあまりお店を知らないので案内を頼みたいのですが...」
「はい、分かってますよ。案内はしますから」
「ありがとうございます、今日のフローラさんの服は素敵ですね。どこで買われたんですか?」
「この服は、私が懇意にしてる女性服の専門店で買ったんです。この滑らかな生地とさわり心地が良くて。試着と同時に買ってしまったのんです」
「そうだったんですね。凄く似合ってますよ。フローラさんの髪の色にも似合ってますし、素敵ですよ」
「あっ、ありがとう....セイジロウさんは、口が上手くてたまに困るわ....まぁ、誉められたと受けとめておきます。それで、最初はどこに向かいたいんですか?」
「その前に、もう少し肩の力を抜きませんか? フローラさんの口調が固いと雰囲気も固くなりますし...せっかくの休みなんですから」
「セイジロウさん...あなたも口調が固いじゃない?」
「私は、治りませんよ。お国柄ですし、女性には丁寧な口調を心掛けてますから」
「そう...わかったわ。これでいくわ」
と、フローラさんと話ながらギルドを出て通りを歩き始めた。
「まずは、貸家からですかね?」
「なら、ギルドと繋がってる不動産屋に行くわ。正当な不動産屋だから騙される事はないし。ギルドでも倉庫を借りたり職員寮を用意してくれてる不動産屋だから。」
「そうですか、それは助かります。あとは安く借りられて良い物件があるのが望ましいですね」
「そんな都合良くはいかないと思うけど、期待のし過ぎは良くないわよ?」
フローラさんと歩く事しばらく、ギルドからはあまり離れてはいなかった。
俺たちは不動産屋に入った。
建物の中は広く幾つかのテーブルセットがある、木の仕切りで区切られていた。
カウンターには、受付を担当する男性と女性が1人ずつ立ち上がり挨拶をしてきた。
「ようこそお越しくださいました、『セブル不動産』 の受付を担当するセルムと申します」
「同じく、リーシャと申します」
セルムさんは仕立ての良い服を着た、好青年な感じな受付だ。年齢もまだ20代前半に見える。
リーシャさんも仕立ての良い服を着ていた。こちらも20代前半に見える。紅色の髪が印象深い。
「今日は、貸家の物件を見に来たのよ。借りるのは私じゃなくて彼だけどね。ちなみに、ギルドでは重宝してる人物よ」
「畏まりました、フローラ様。では、まずは、席に案内します。こちらへ」
案内に従い俺とフローラさんは席につきセルムさんも席についた。リーシャさんがお茶を用意して下がると説明が始まった。
「では、貸家の紹介ですね。場所の希望や貸家についての希望はありますか?」
「基本は生活に困らない設備が付いた貸家で、冒険者ギルドから近い物件を希望します」
「そうなりますと、3件の物件ですね」
1つは、冒険者ギルドから徒歩10分程の距離で料理が出来るスペース付き。部屋が2部屋ありトイレ付き。家賃、小金貨5枚。
1つは、冒険者ギルドから徒歩20分。1部屋付きのトイレ付き。家賃、小金貨2枚。
1つは、冒険者ギルドから徒歩15分程。2部屋付きのトイレ付き。家賃、小金貨3枚。
「フローラさんは、どう感じます。相場がわかりませんが...」
「ほぼ、適正ね。場所柄、ギルドの近くは自然と高くなるわ。設備は最低限ね。部屋数や設備が増えるにあたって自然と家賃も高くなるし、街の中心部に近くなれば物件の質は高くなるわよ」
俺からすればかなり高いな...小金貨か...
「上を見れば高くなり、下を見れば生活の質は悪くなるわけですね」
「まぁ、概ねそうね。あとは、借りての生活によっても選び方は異なるわね。セイジロウさんなら、特に困らないと思うけど....」
「まぁ、そうですね....」
どうするか....これからは、荷物も増えるし行動する時間も変わるからな....それに、宿屋はプライベートが保てないし精神的に気疲れするんだよな....
食事は、ギルドの食事処でもいいし、街中で食べてもいいしな...やはり、プライベート空間が欲しいのが一番だな。
ベッドも寝心地が良いのが欲しい....
「銀貨での貸家はありますか?」
「.....こちらになります。立地は悪くないのですが....少し前に強盗殺人があった家です。内部はすでに清掃済みでカギの補強もしましたが.....」
あぁ、事故物件か....幽霊、ゴーストとかはどうなんだ?
「えって、仮に住んでも大丈夫なんですか?」
「はい、すでに浄化しました。教会に頼みましたし、確認もしてます。不備はないです」
とりあえずは見ないと分からないか? 銀貨で借りれるなら悪くない。
「では、その物件を見せてもらうことはできますか?」
「はい、では馬車を用意しますので少々お待ち下さい」
セルムは席を外し準備に向かった。
「ずいぶんと早い決断ね」
「まぁ、そうですね。そんなに悩む程でもないですし、必要なのは心を休める空間と荷物や本棚が置ける空間が必要だっただけですからね」
「なんか、拍子抜けね。強いこだわりがあったり、女性を呼ぶ為だと思っていたわ」
「フローラさんの中で私はどんな人物なんですか? 少し酷くないですか?」
「ふふ、冗談よ。セイジロウさんの評価はわりと良いわよ」
「本当ですか.........まぁ、藪蛇になるような事は言いませんよ」
「懸命な判断ね。それより、本当に良いの? もう少し悩んでもいいのよ?」
「まぁ、大丈夫ですよ。フローラさんがいる目の前で出された情報です。何かあれば互いに印象は悪くなるし、物件を見るだけですから」
「なら、いいわ。セイジロウさんが納得できればね」
この後、セルムさんの案内で馬車に乗り物件を見に行った。建物もあまり古さを感じない、ロッジ風の作りの外観は好感触だ。
部屋の広さも10畳一間と6畳間で陽の光を取り込む工夫もされていて問題ない。説明になかったが暖炉も有りこれからの氷雪季には重宝することは然りだ。
建物内部の確認も終わり、フローラさんにも見てもらってお墨付きをもらった。問題もなく不動産屋に戻り契約を行った。
これから、家具を見に行くため家財道具を取り扱う場所までセルムさんが送ってくれた。
良い契約が出来たと挨拶をして、今後、何かあれば頼らせてほしい旨を伝え別れた。
「さて、次は家具ね。何が必要かしら?」
「まずは、ベッドですね。それからソファとテーブルに学習するために必要なのは机と椅子に本棚ですね。あっ、絨毯も必要ですね。予算は小金貨5枚までです」
「少し少ないわね.....まぁ、何とかなるかしら....じゃぁ、あそこに向かいましょうか。」
フローラさんと一緒に歩いて付いていく。
馬車を降りた場所から15分程歩いてたどり着いた一件の家具屋。
飾りもなく無骨な店構えの家具屋だ。外観はそれなりに大きい。
「フローラさん、ここは? 何か家具屋らしくは無さそうな感じですけど?」
「大丈夫よ、少し家具屋らしくないけど腕は確かよ。........ラム爺いるかしら?」
なんともいえない不安はあるが、フローラさんの見立てを信頼しつつ店内に足を踏み入れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます