第20話 家具屋のラム爺

No20

家具屋のラム爺





 俺とフローラさんは貸家の契約をした後、フローラさんの案内で一軒の家具屋を訪れた。


「ラム爺、いるかしらっ!?」

「なんじゃいっ!? いるわー!.......なんじゃ、フローラか...レイシェルは王都じゃぞ」

「別に、レイシェルに会いに来たわけじゃないわよ。それに、せっかくお客を連れてきたのにヒドい言いぐさね?」


「客?.....なんじゃ? お前のコレか?」

 と、ラム爺さんは親指を1本立てた。


「ちっ、違うわよっ! ラム爺っ!!」

 おっふぅ....即否定、いただきました.....


「ハハハ、初めまして、セイジロウです。えっと....」

「ワシは、ラムエルじゃ。ラム爺でいいさ。で、フローラの男が何しに来たんだ?ガキが出来ちまったのか?」


 まだ、やるのか?


「ラム爺っ!! いい加減にしないとバラすわよ?」

 オオゥ...ちょっと、ヤバくないか?止めろラム爺っ!!


「おい、セイジロウ! 早く止めろ、お前の女だろっ!!」


 イヤ、それがダメじゃんよっ! 調子乗りすぎだよっ!


「フ、フローラさん! 年寄りの妄言ですから、少し落ち着きましょうよっ! 私の家具がバラバラになってしまいますよっ!」


「くっ、ふんっ! 死んだら私が燃やしてあげるからねっ!」

「ラム爺さんも、やりすぎではないですか?」

「ガハハ、久し振りでなっ! まぁ、収まったから良いわい。で、家具を買いに来たんじゃったな?」


「えぇ、そうですよ...はぁ....」

「ラム爺、ベッドと本棚、ソファにテーブル、机に椅子、絨毯を一式で金貨3枚よ。用意してちょーだい!!」


 なんと、かなりの値切りでは?


「それに、お湯を入れる桶ももらえますか?」

「ずいぶんと強気じゃな、フローラ。幾ら昔馴染みでもやり過ぎではないか? あん?」


「先に仕掛けたのはそっちでしょ? 無理なら良いわよ。桶だけ買ってから、違う店に行くわよ。いいの? それと、レイシェルにもラム爺にイジられて泣かされたって良いわよ?」


「それは、ちと白状じゃないかのぅ? ワシとフローラの仲じゃろ? あれはただの挨拶じゃよ! なっ? フローラ」

「あら、挨拶は先に済ませてたわよ? それに、せっかくのお客にワザワザ仲立ちをしてもらった借りはどう返すの?」


「.....金貨3枚と銀貨7枚じゃ。それが限界じゃ、さすがに赤にはできん」


「セイジロウさん、それで良いかしら? わたしも赤を出させてまでイジメたくはないわ」

「では、金貨4枚出しますので目利きと配送も頼みます」

「なかなかの男じゃな。いいじゃろ、次があればワシのとこにこい。次回はワシが男を見せてやる」


 ふぅ...なんとか認めてもらえたかな? 職人気質で助かったかな....これが、商売人なら食い付かれていたかもしれないな...


「まったく、セイジロウさんは....甘すぎますわよ」

「まぁ、良いじゃないですか。予算内で寸断ですから」


「で、セイジロウはこだわりはあるのか?なければ、それなりの物をこっち選ぶぞ?」


「特にはあまり無いですが、大きすぎなければ良いです。一部屋しかないので窮屈になってもしょうがないので....本棚も小振りで良いですよ」

「わかった。他にあるか?本棚が小降りなら少し浮くぞ?」


「....あっ、衣装棚って、付けれますか? 小振りで良いですから....」

「ああ、じゃあそれもだな。あとはこっちでやるから揃ったら運んでやるよ。配置どうするんだ?」


「まかせて良いですか? ラム爺さんならそれぐらいお手のものでしょ?」

「見た目によらず人使いが荒いのぅ、いいじゃろ、任せておけ」


 ラッキーっ!! 言ってみるものだな、前の世界じゃ金を払って頼む側なのにな....


「フローラさん、一応の交渉は終わりましたよ? フローラさんは、何かありますか?」

「平気よ、次はどこに向かうの?」


「では、少し早いですがお昼にしませんか? 私がご馳走しますよ?」

「そぅ? なら、そうしましょうか。ラム爺、私たちはいくわ。またね」

「おぅ、昼間からヤルなら北通りに良い宿が--グハァッ!!」


 物凄い勢いでイスがラム爺にあたったぞ....あれ、売り物なんじゃ?


「さっ、いましょうかセイジロウさん。」

「あっ、はい...」


 御愁傷様です、ラム爺.....チーン


△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△


 場所は変わってお洒落な店内でランチタイム。


 俺は、子羊のハーブソテーに季節スープとパンとワイン。

 フローラさんは、子牛のワイン煮込みと季節のサラダにパンとワイン。


 ランチを食べながフローラさんに聞きたかった魔法について話をしている。


「それで、個人によって得意不得意な魔法は理解力にあるわけですか?」

「そうよ、それが一応の定説ね。魔法は想像し現象させるのよ。魔力を糧としてね」

「とすれば、より深い知識があれば魔法は思うままということに--」

「そこは、のまれちゃダメよ? 深いとこを見ると引きずり込まれるわよ?」


「....何かあるんですか?」

「魔法を学び探求するのは悪いことじゃないわ....でも、何事にもやり過ぎはよくないわよ。力を求める者はその力によって身を滅ぼすのは世の常よ」

「......そうですね、気を付けます。それで、召喚魔法ってどんなのか教えてもらえますか?」


「今、気をつけるって言わなかったかしら?」

「言いましたよ。それはそれ、これはこれですよ。フローラ先生」

「勤勉な生徒も考えものね....召喚魔法は召喚した者を従者として使役する魔法よ」


「それは、知ってます。私が知りたいのは、使役する為の条件と召喚する者についてです」

「....使役する為の条件は、召喚した者と争い屈伏されば使役できるわ。召喚する者は、術者の思念によるわね。姿形、力や能力などは術者の想いで変化する、としか知らないわ」


「フローラさんは、召喚魔法を使った事はないのですか?」

「えぇ、ないわ。召喚魔法はリスクが有りすぎるのよ。召喚魔法は魔力を大量に使うわ。通常なら一般的魔法師の3人分は必要になるわよ。ちなみに、私が2人必要ね?」

「そんなにですか?....普通は使えないんですね」


「そうよ、さらに召喚される者は魔力量に応じて召喚されるわ。召喚された時点ですでに自身の3倍は力の差があるのよ。仮に一人で召喚魔法が出来ても自分と同等よ。勝負の仕方によっては、負ける可能性が高いのよ」


「うへぇ、なかなかにリスキーですね。それでもやる人はいますよね?」

「えぇ、確かにいるわね。成功例は少ないけどね。召喚した者との相性が良かったんでしょうね」

「なるほど....その魔力は魔石でも良いんですか?」

「....魔石でも可能よ。あとは勝てるか死ぬかよ....やるなら、命をかけなさいよ。それと、人の居ないところでやりなさいね。死んでまで迷惑はかけないでね....」


「......責任は取りますよ......」


 つい、話に熱が入りすぎて踏み込み過ぎてしまったな....


「話し過ぎましたね。このあとは、幾つか服を見てもらえますか? 氷雪季用の服がほしいんですよ」

「....わかったわ。では、お茶を飲んだら行きましょう」


 このあとは、数着の服と新しい革のブーツとローブを買った。

 午後のティータイムを一緒に過ごしてからフローラさんとは別れた。


 俺は、そのあと本屋に向かい幾つかの安い魔法が書かれて本と召喚魔法について書かれてる本を買って宿に帰った。 

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