5 赤い帽子の男の子

 赤い帽子の男の子


 七実が大きな白い雲の上を歩いて行くと、そこには、白い雲で作られた、小さな小屋のような建物があった。

 その建物は近づいていみると、それは『空の上にあるバス停』であることがわかった。

 小屋の前には、やはり白い雲で作られているバスの看板が立っていた。(行き先は天国行き、となっていた。縁起でもない)


 七実はそのバスが空の王国行きなら、乗ってもいいかな? とちょっとずるい考えを持っていたのだけど、行き先が違っていたので、そのバス停を無視して進むことにした。(やはり、ずるはいけないということだ)


 そのとき、その空のうえのバス停の中に、ちょこんと一人で座っている、一人の男の子がいることに七実はふと気がついた。


 空のうえのバス停はバス停の小屋と言っても、屋根はあるけど、(きっと雨を防ぐためだろう)その壁がない、柱だけの、(風の吹き抜ける)あんまり小屋とも言えないような、バス停だった。


 青色のバス停。


 そこには、赤い帽子をかぶって、赤いリュックサックを背負った、まるでキャンプにでも行くみたいな格好をした、一人の男の子がじっと下を向いて座っていたのだった。


 男の子は一人だった。

 お母さんもお父さんもその男の子の近くにはいなかった。

 男の子は孤独であるように見えた。(……それは、七花を失った、今の七実と同じだった)


 だから七実は「どうしたの? 君、一人なの?」とその男の子の前まで行って、明るい声でそう声をかけた。

 すると男の子は顔をあげて、七実を見た。

 するとその赤い帽子をかぶった男の子は、七実と目があった瞬間に、その顔をぐしゃぐしゃに崩して、空の中で、大きな声を出して、たった一人で、泣き始めた。(男の子はやっぱり、孤独だったのだと七実は思った)

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