4 強い風
強い風
……この風は、どこから吹いてくるんだろう?
七実が雲の上の道を歩き続けると、やがて地上の風景が見えなくなった。
白い雲と白い雲の間にまるで階段のようにして、小さく道がつながっている場所を七実が歩いているとき、七実はふと下を見て、そのこと(地上が見えなくなっていること)に気がついた。
……もう、ずいぶんと高いところまで来ちゃったな。
そんなことを七実は思った。
「よし」
七実は気合を入れて、白い雲と白い雲の間にある小さな道を歩き続ける。
そうやって、七実が次の白い雲の上にまでたどり着いたとき、びゅー、ととても強い風が七実のいる青色の世界の中を吹き抜けた。
七実は「うわっ」とその風に体を飛ばされそうになりながらも、両脚をしっかりと白い雲の上につけて、その小さな体をさらにもう少し小さく丸めるようにして、その強い風の力に対抗した。
その強い風は結構長い時間、空の中を吹き続けていた。
「危なかった」
……風が止んだところで、七実は言う。
もし今の強い風が、さっきの狭くて小さな上り道の途中で吹いていたら、もしかしたら私は、今頃地上にまで、真っ逆さまに落ちていたかもしれない。
そんなことを思って、七実の心臓はすごくどきどきした。(いつの間にか、七実は全身に熱い汗をかいていた)
今度から、もっと気をつけないと。
そんなことを七実は思った。
……風、空に吹く風か。
七実のいる青色の世界には、今も優しい風が吹いている。その風が七実の長い黒髪を優しくずっと揺らしている。
気持ちのいい風。
……七実は地上に吹く風が大好きだった。(自分を風の子だと思ったこともある)
とくに走っているときに吹く風は、それが追い風だったとしても向かい風だったとしても、七実にとっては、それはあらゆる意味で気持ちのいい風であり、風の中にいる自分が、七実は本当に大好きだった。(自分が、風の中に溶けるような感じがした)
その大好きな風が自分の邪魔をしていると思った。
(七花のことがなければ、さっきの風も、気持ちの良い風だと思ったのかもしれないけれど)
私は、焦っているのだろうか?
大好きな風が邪魔だと思うくらいに、なにかにすごく、焦りを感じているのだろうか?
七実は思う。でも、そんな考えを七実はすぐに考えないようにした。
今は余計なことは考えないようにしよう。私はただ、いなくなった七花のことだけを考えていればいいんだ、と七実は思った。
七実は再び、風の中を歩き始めた。
七実の足取りは軽い。(七実の心に迷いはない)
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