函南美波編
第7ページ ラストケルベロス
焼津が登校してきた後、俺と委員長の昼飯には焼津が加わる事が定例になっていた。相変わらず委員長はぼっちなのである。かなしいなぁ。
「よかったです。本当によかったですよ。焼津君、クラスにも馴染めたようで!」
「あはは・・・。葵君に弱みでも握られてるんじゃないの?可哀想・・・。ってみんなが話しかけてくれてさ」
誠に遺憾である。
とはいえ焼津がクラスに馴染めた様子なのは本当によかった。俺にも多少のおこぼれが回ってきてもいいはずなんだが。
「ええっ焼津君、弱みを握られているのですか?最低です。最近ですわ葵君!」
「いや信じるのかよ!誤解だ誤解。だんじて弱みを握ってはいないから!」
「本当ですかぁ?焼津君本当の事を言ってもいいんですよ?」
「本当に誤解だよ。でもありがとう心配してくれて。」
おいおいおい・・・。美談っぽくなっているが
「この調子で函南さんもなんとかなればいいのですが・・・。」
「函南美波ね。そもそもなんで関わるななんて言われてるんだ?俺や学校に来てない焼津なら分からなくもないが。俺が見る限り学校生活に問題があるようには見えないが・・・。」
「15人です。」
「?」
「15人。函南さんが4月中に交際を申し込まれ断った人数です。」
「ほぉ随分とおモテになるようで。んでそれががどうしてデスケルベロス12なんて・・・。」
「15人の中にはいわゆる人気の先輩やら学年1の人気者やらが含まれていたそうで、女子から目の敵にされたようです。あらぬ噂に色々尾ヒレがついて最終的にデスケルに・・・。」
デスケルベロス12ってデスケルって略されてるのね。しかしこういう話ってリアルであるのな。出る杭は打たれるってヤツか。ちなみにツッこむ杭も打たれる、身をもって体感してる。
「まぁよくある話と言えばよくある話なんじゃねーの?無理に関わりにいこうとしなくても・・・。」
「そうはいきません。このようなこと同性として見過ごせません。そ・れ・に私は伝説になるんです。クラスの揉め事を委員長として解決する!これが伝説の1ページ目なんです!」
「それマジだったのか?もしかして言いたくないって言ってたのはソレでか・・・。なんだよ俺はてっきりもっとマジな理由でもあるのかと思ったぜ。」
それにあれだ。同性としてっていう前半の下りは立派だが後半私情ダダ入りじゃねぇか。そんな奴が下手に関わってもろくな事にならんだろうよ。
「だいたい伝説の〜ってヤツもてっきり俺はウケ狙いのボケだと・・・。」
「葵君!葵君!」
「なんだ焼津?」
「・・・・・・アレ。」
焼津が指さす方向を向くとそこには号泣した委員長が・・・。
あっ俺やったわ。
「えぇ?!ちょっとまって?えぇ?!。ごめんな委員長!いやホントに・・・。委員長ー」
昼休み後、俺はまた委員長を泣かせた男としてクラスに戻ることになった。
いや今回は俺が悪い。後悔から学べない男、葵京介。
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