第11話 曖昧な
幸せを感じると意識しなくても笑顔になってしまう。仲の良い友だちと一緒に居る時や、好きな人と一緒に居る時とか。先輩のことが好きかって聞かれたら今は答えられない。私もよく分からない。誰にも取られたくないし、出来るならずっと一緒に居たい。だけど、好きになった理由を答えられないから私は先輩のことを恋愛的に見て居ないことになる。
それでも一緒に居られるのが幸せで、女の子と話しているのを見ると少しモヤっとする。
「桜?」
「はい? 何ですか?」
「さっきから無言だから何か悩み事でもあるのかなって」
「悩み事……」
悩むべきことなのかな? 私は悩んでるのかな? 先輩は私をどう思ってるんだろう? 先輩からすれば私なんてただの後輩の一人だったりするかも知れないし。なんか、それは嫌だ。
「先輩は私のこと好きなんですか?」
聞き方を間違えた。これじゃまるで告白を強要してるみたいだ。こんな聞き方をして、やっぱり間違えでした忘れてくださいって言い難い。なんか凄く真剣に悩んでるし。
「好きだと思うよ。理由はまだ分かんないけど、どこか惹かれるって言うか、どこが好きとかはハッキリと答えられないけど好きだよ」
もっとロマンチックな場所で聞くべきだった。ううん、それよりも成り行きで先輩に告白させてしまった私は馬鹿だ。私だって好きを伝えたい。どこが好きかハッキリと答えられるようになったら私から言ってやるんだ。
「告白は私からさせてくださいね」
何となく月奈ちゃんの気持ちが分かった気がする。自分の気持ちを真っ直ぐに伝えたいって気持ちが。
「……それは約束出来ない。きっと僕が先に告白してしまうから」
いつもは譲ってくれる先輩なのに、こう言うところだけ張り合ってくるんだもん。悪い気はしないけど。
「早く行こ!」
照れを隠すように走り出した先輩。顔は見えなかったけど耳が真っ赤になっていた。先輩でも恥ずかしがることってあるんだ。先輩の恥ずかしがる姿を何回か見たことあるけど、その度に初めて見たかのような感じになる。
好きだけど、どこが好きか分からないからハッキリと好きって言えない。そんな曖昧な関係でも一緒に居ることに幸せを感じてしまうのだから仕方ない。ならこのまま曖昧な関係が永遠に続けば今と同じような幸せが続くのかな? そもそも恋人って関係がよく分からない。誰かの特別になることだよね? それって誰かを特別に思った時には恋人って関係になってるって事だよね。私は恋人という関係や恋をよく知らないのかも。形や姿、色も匂いも重さも分からない。この感情を正確に表すことが出来る言葉が世の中にあるのかな?
「恋……か」
「何か言った?」
「いえ、何でもないです!」
そのことに関しては家に持ち帰って考えよう。今はただ全力で遊ぶことに集中しないと、今という一瞬一瞬を無駄にしている気がするから。
「今日はいっぱい遊びますよ!」
「うん!」
きっと、私が悩むまでもなく先輩が教えてくれる。だって、先輩は私の知らないことをいっぱい教えてくれるから。きっと恋やそう言う感情の表し方も教えてくれる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます