第6話 気遣い

 例え先生の邪魔をしたくなくても想定外な事とかで結果的に邪魔してしまうこともある。わざとじゃなくても邪魔をしてしまったって罪悪感を背負うのはもう嫌だ。

 いつも部室に居るから、邪魔をしないように人目の付かない所で小説を書こうとして体育館裏に行くと、たまたま先生二人と鉢合わせしたりするし。時間を一時間ほどずらして部室に行っても先生たちの邪魔をしてしまう羽目になるし。

 先生は先生で私に気を使って場所や時間を変えてくれてるけど、こっちの気遣いと見事にマッチングしてしまうのは運が悪いとかそう言うのじゃない気がする。

 この際、先生にはっきりとお願いして置かないといけない。これ以上『ごめんなさい』を言い続けることに疑問が浮かんで来た。


「先生たちにお願いがあります」


 今日も絶対に出逢わないように屋上に向かったら、そこでバッタリ出会ってしまった。丁度良い機会だし、この際真っ直ぐにお願いして置かないといけない。


「先生たちにお願いがあります」


「どうした改まって」


「イチャイチャするなら家でやってください。もう三週間ぐらい連続でこの状況に鉢合わせしてるんですよ。もう強運とかそんなレベルじゃないんですよ、こっちが場所を変えても時間を変えても出逢ってしまうんですよ。その度に謝るこっちの身にもなってください。もう文芸部の活動どころじゃないんですよ。別にイチャイチャするのは良いんですけど、その度に気を使ってこっちに話題を振られるのが嫌なんですよ。それだったら気を使わないでイチャイチャし続けてください。気を使われるこっちの身になってくださいよ。ずっとイチャイチャしときゃ良いのに変に気を遣うから嫌なんですよ」


 勢いに任せて色々と失礼な事を言っちゃった気がするけど、これで改善されるなら別になんだって良いや。先生たちは驚いた表情で私の顔を見つめたまま動かなくなった。それから長い沈黙の後に青原先生が口を開いた。


「気にしなくて良いって事か?」


「そうです」


「そうか……分かった。次からは気にしないっ!」


 もう深くツッコまないようにしよう。文芸部としての活動をしないと何で文芸部に居るのか分からなくなる。どんな理由であれ部活に入ったんだから活動をしないと居る意味が無いもん。早く部室に戻って小説書かないと。最近先輩とも会ってない気がするし。


「あれ? 久しぶりだね、立花さん」


「お久しぶりです」


「最近部室に来てなかったけど、何かあったの?」


「いや、長くなるので止めておきます」


「そっか」


 先輩はいつも通りの笑顔で出迎えてくれるけど、あの時感じた温かさが感じられなかった。なんでだろう? 見た感じ普通なのに、何か考え事していてこっちに気が向いてないような感じがする。

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