第7話 あの日の出逢いと今日の出逢い
「月奈ちゃんはそのアイドル好きだよね」
「うん! 元気貰えるから」
私は流行とかにはあまり敏感じゃないからそこまで詳しい訳じゃないけど、何だろう? どこかで会ったような感覚がある。凄く懐かしいような感覚が。多分気のせいだからあまり変なこと考えないようにしよう。
「星月 輝夜(ほしづき かぐや)。私の憧れって言うか、こんな風になりたいなって思える人なんだ」
そのアイドルの写真を見せてもらった瞬間、教室の扉が勢いよく開かれて私の名前を大きな声で呼ぶ女の子が居た。今まさに、月奈ちゃんに見せてもらった写真の人が私に抱き着いている。その光景に固まって動けなくなってる月奈と目を丸くして驚いているクラスの人たち。
「桜ちゃん! 会いたかったよ!」
後で思い出したけど、小さい頃よく遊んでた年上のお姉さんがアイドルをしていたなんて想像も付かなかったし。
「どうして私の通ってる高校が分かったの?」
「プロデューサーに調べてもらったんだ!」
どこまでも透き通るような綺麗な銀髪が肩よりも少し下あたりまで伸びている。あの時とまるで印象が違うから初対面の人と話しているみたい。
「あの時、桜ちゃんが応援するって言ってくれたから今の私が居るんだよ」
「そうだったんだ……ごめんね、あの時のことはよく覚えてないの」
「ううん、それでも良いよ。こうして再び桜ちゃんと会えたんだもん」
こうして話していると、やっぱり何となく懐かしい感じが凄くする。それに、なんて言うか一緒に居るだけで安心出来るって言うか、温かいって言うか。色んな感情が混じり合っているけど、そのどれもが温かくて柔らかくて、優しかった。
「だからね、ずっと言いたかったんだ。ありがとうって」
「私は何もしてないよ……あの頃のお姉ちゃんがこうしてアイドルをやっているのって少し現実味が無くて驚いてるけど」
私はお礼されるようなことは何もしていない。凄いのはお姉ちゃんであって私ではない。そうやって色んな辛いことや苦しいことを耐え抜いたお姉ちゃんは私にとって自慢のお姉ちゃんでもあった。
それからは色んな話が聞けたりあの頃の思い出を聞かせてもらったりした。固まって動かなくなってしまった月奈ちゃんを助けたりして、目の前に憧れていた人が居るから泣いてしまうのも無理はないけど、人間ってそこまで涙が出るんだってくらい泣いていたのを二人で慰めていた。
結局、お昼休みももうすぐ終わりって事でお姉ちゃんは二年生の教室へと帰って行った。そんな後ろ姿を見て再び泣き出す月奈ちゃんを慰めてると、日向くんが帰ってきて理由を話すのが大変だった。
「立花が誰かを泣かせたりするような奴じゃねえって知ってるから気にしなくて良いよ」
「月奈ちゃんのことよろしくね」
自分の席に戻って次の授業の用意をしながら、さっき起きたことは実は凄いことなんじゃないかって急に思い始めて、授業に集中出来なかったのは別の話。
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