第11話 事件解決?
圭と石原はほっとしたように顔を見合せた。
心配事に解決法があり、安心できたようだ。
「……そうね。もっとちゃんと生きなきゃ。圭君にふさわしい人になるために」
もう間違いは起きない。そんな晴れやかな石原の表情に舞と七姉妹は事件の解決を実感したのだった。
■■■
「良かったです。兄も石原先輩も無事で」
マンションを出て夜道を歩くと舞は解放感に包まれた。もう何も不安に思う事はない。
圭と石原は先に妹尾家に帰り、両親のお説教を受けるらしい。石原がいるなら、しかも家出の理由が人助けならそう怒られたりする事はないだろう。
圭が荷物をまとめた際に、舞は貸した十万円を返してもらった。
そこから一人で帰ろうとしたのだが、十万は持ち歩くには大金だ。護衛として赤坂達が一緒に帰り、ついでに妹尾家で夕飯を食べる事になった。
今頃舞の母は急遽増やす事になった献立と圭へのお説教で頭を悩ませている事にだろう。
「しかしいいのだろうか。俺達まで夕食をご馳走になるだなんて」
「何言っているんですか。先輩達は私とお兄ちゃんと石原先輩を助けたんですよ」
舞をかばい、圭の居場所を突き止め、石原の犯罪行為を止めた。それだけの事をしたのなら、舞だけでなく圭や家族からも礼をせねばならないと思う。
「まぁ、ご馳走はお母さんが用意するものだから私が偉そうにはできないけど。私からも今度、また何かお礼させて下さい」
「お礼、だと……!」
赤坂ははっと振り向く。筑紫はじっと舞を見つめる。青島は小さく反応する。
やはり七姉妹会にそんな付け上がらせるような言葉は言ってはいけなかった、と舞は後悔をし出した。
「よし、それじゃあ舞には定期的に七姉妹会に参加してもらい、色々と意見を聞かせてもらおう!」
「そうだねぇ。妹好きの意見は色々集まっても、妹自体の意見はないし」
「三次元でも意見が増えるのは悪くない」
「ちょ、ちょっと待って下さい。お礼はしたいけど、それはそういう事じゃなくて、」
三人は盛り上がっていた。それを舞は青ざめた様子で止めるが、そう簡単に止まる先輩達ではない。とは言えお礼にしては簡単に過ぎてはっきりと断りにくい。
「そうだ、妹尾圭先輩には良き兄としてコーチになってくれないだろうか」
「それはいいね。七姉妹会はもう誰か入会したりはしないけど、コーチなら……」
「あぁ、妹尾先輩の兄力には見習うものがある」
「うちのお兄ちゃんまで巻き込まないで下さい!」
夜の住宅街で舞は叫ぶ。しかし三人は聞かず今後の七姉妹会についての話で盛り上がっていた。
これはもういっそ、明日からも七姉妹会に関わる覚悟を決めねばならない。
しかし舞としてはそう嫌な事ではなかった。
七姉妹会は妹好きが過ぎるがすごい人物の集まりで関わっていて飽きない。
それどころか他のまだ会っていないメンバーがどんな人物であるかが気になる。
いつも置いてあるというお菓子だっておいしい。
「……まぁ、たまにならいいですけど」
舞の小さな呟きは、盛り上がっていた三人の耳は都合良く届いた。
「来てくれるのか!?」
「はい。でも、『たまに』ですからね」
「ツンデレ来た!」
「はいはいどうせ私はツンデレですよ」
「三次元にしてはやるな」
「それはどうもありがとうございます」
舞は雑に返事をする。お茶をしたり話し相手になる位で三人が喜ぶのならお安い御用だ。
彼らの扱いだって案外はっきり言ってやれば疲れなくていい。
「じゃあいつ来てもらおうか。そういえば舞は貸した十万を使う予定があったんだったな?」
「よく覚えてましたねそんな事」
「家の事もあるし、七姉妹会に顔を出すのはそれらが落ち着いてからでいいぞ」
「わぁ、助かります。私、近々後輩の男の子と出かける約束があるんです」
「えっ」
三人はしんとして、盛り上がっていた気分は急激に冷めていった。
「中学の後輩の男の子と出かけるんですよ。だからその時のための服とか化粧品を買いたいなぁって。だから軍資金として十万を返して欲しかったんです」
勝負服を買うための軍資金。
気になる異性と出かけるための衣服や細かいものを揃えるとしたら、それくらいは必要かもしれない。
「……そ、その後輩の男の子は、舞の彼氏なのか?」
「彼氏ではないです。気になってはいますけど。やっぱりこれからは年下ですね。妹扱いされない事は確かですから」
青くなる赤坂と筑紫。三次元を好きになると大変だなと言いそうな顔の青島。
「……阻止するぞ」
「え?」
「そのデートは阻止してみせる! 兄の名にかけて!」
「赤坂先輩は兄じゃないし。兄だとしたら妹の恋路を見守っていて下さいよ」
「この世に妹の恋人を歓迎する兄がいるものか。舞に恋人なんてまだ早い!」
そもそも舞が中学の後輩を気にしているのは、赤坂達をはじめとした年上が妹萌えだからという理由なのだが。
それに気付かず今日も七姉妹会は妹へ異常なまでの愛情をかけるのだった。
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