第3話「殷鑑不遠」
「ね、寝てた!?」
次の日セシルの家に集合した、カガヤ、千星。
前回なぜ千星が連絡が付かなかったのか確認したところ、寝ていたと回答され驚くカガヤ。
「まだ5時くらいじゃなかった?」
「いや、
「まぁ確かに
そう言って千星をフォローするセシル、新参者の自分が強く口出しできるものではないと感じるカガヤ。
「じゃこの2日は異常なの?」
「まぁそもそも『
たしかにとなっとくするカガヤ。
「それでカガヤさん、今日朝早く来ていただいてあれですけど、私たちと戦っていただけますか?」
少し時間を置き、カガヤは笑顔で答える。
「うん、あたしにも手伝わせて。」
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「やばい遅刻するー!!」
本日は日曜日で学校は休みだが、剣道部の練習試合があり集合時間の9時に遅刻しそうになっている。
「まてよ。」
そういって公園のトイレに駆け込んだカガヤ、すぐにトイレから出てきたがその姿はキュオーンデアに変身した姿だった。
「せーの!!」
人間では考えられないジャンプ力で飛んでいくカガヤ、日曜日ということもあり学生もほとんどいない。
「ほっほ!やっぱりすごいなこれ!」
興奮して声のオクターブが上がってしまう。
あっという間に学校の屋上に着地。
「いや~これスゴイな~、解除っと。」
余裕で変身を解くカガヤ、予定時間も大幅にまくことが出来た。
「なにがこれスゴイな~だ!!」
急に頭を小突かれる。
「いった~!!」
カガヤが顔を上げると変身した千星が立っていた。
「ありゃ千星さん、おはようございます。」
「おはよう。ってのんきに挨拶を、何を私用に神具を使っている!!」
えらい所にバレてしまったなぁと思うカガヤ。
「いや~遅刻しそうだったから、こんな便利な力使わないと勿体ないでしょ。」
「この力は人々を護る為だと教えたであろう、それを遅刻しそうだから使うなぞ。」
腕を組みあきれる千星。
「まぁとにかくカガヤ殿、せっかく与えられた力をそんなことの為に使うのではないぞ・・・。」
背を向けて説教を始める千星、こっちはあと五分で集合時間だというのに困ったものである。
ガチャ
「よし屋上についた!!」
「けど私の見間違いかもよ、この間見たのは赤色だったけど今日見たの黒かったもん。」
急に屋上のドアが開いて、カガヤの耳に聞き覚えのある声が聞こえてきた。
友人のエトラと和歌がなぜか屋上にやって来たのだ。
「ち、千星!まずいよ。」
「だから、もう少し自覚をもって・・・。」
千星の説教は継続中のようである、しかしそれどころではない。
「ん?カガヤじゃない、ってその後ろにいるの!!」
「あ、あたしが見たのその色だよ!!」
和歌が千星の後姿に指をさして叫ぶ、どうやら見られたのはカガヤではなく千星のようだ、
まずいと思い体で隠すカガヤ、千星の身体は小さいので隠れていると思うが。
「まぁ拙者ももう帰るが、ちゃんとこうやって変身を解いて帰るんだぞ見習えよ、
「あなたキュオーンデアでしょインタビューお願いします。」
「え?」
千星が変身を解いてしまい、エトラと和歌に見られてしまった、しかも千星は変身を解きながらカガヤの肩に手を載せてくるのだから、知らないと言い訳もできない。
「カガヤ、キュオーンデアと知り合いだったの?」
「・・・な、なに言っているのコスプレだよコスプレ!ねぇ千星。」
固まる千星次の瞬間、
「見られたぁぁっぁぁぁーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「見つけたぁぁっぁぁぁーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
カガヤは台無しだぁっと頭を押さえた。
「カガヤ殿この二人はあなたの知り合いか?せ、拙者たちの招待が!!!」
「拙者たち?」
(まだあたしはバレてなかったのに、なぜバラす!!!)
「カガヤぁ詳しく聞かせてくれる?コスプレなんて嘘はいらないからね?」
エトラの眼が記者の目になっている。
カガヤはエトラの肩を掴み。
「ごめんあたし練習試合があるから、話はそちらの上山 千星さんに聞いてじゃ!」
「ちょ、カガヤ!!」
「か、カガヤ殿!!」
三人を置いて走り出すカガヤ、まぁ見られたのは千星だし、と心で言い訳しながら、部員の集まる剣道場に向かう。
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「「よろしくお願いします」」
カガヤは近所の
今日は午後までここで練習試合を行われるためである。
(あのあとどうなったのかな。)
来る途中の車の中で携帯端末にエトラから『また詳しく話聞くからね』と来ていたが、まだキュオーンデアになってから1週間しかたっていないのにと困り果てるカガヤ。
「どうしたいつも元気でやかましいカガヤらしくないか。」
主将の井上 真也がカガヤに声をかけてくる、短髪で結構ゴツイ風貌だが優しく皆に慕われている男子だ。
「いや大丈夫ですよ、主将ありがとうございます。」
「そうか?まぁ何かあったら言えよ、お前が騒がないのは寂しくなるからな、がははは。」
中々に豪快に笑うと思うカガヤ、けどその笑い声で気分も少し落ち着いた、これから練習試合なのだしと自分の頬を叩き気合を入れなおす。
「お?元気が出たようだな、なによりなにより、練習だというのに5校も来ているのだ、沈んだ姿のままでいると恥ずかしいぞ。」
そう今日はあくまで練習、この
「主将まずはどことですか?」
「おう男子は
「カガヤ更衣室開いたよ!着替えに行こう!」
女子部員が声をかけてくる。
はーいと答え、主将に挨拶し更衣室に向かうカガヤ。
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「ふー。」
昼食休みとなり、頭の防具を外すカガヤ、すでに三校との試合を済ませる。
カガヤの活躍もあり女子は3連勝している。
「やったねカガヤ!!」
ほかの女子部員が声をかけてくる。
カガヤはまだ1年だが副将を任されており、三試合ともカガヤで決着がついている。
「うん、カガヤちゃんのおかげだねすごいよ。」
いかにも癒し系な声で女子部主将が声をかけてくる。
黒髪ロングのいかにも男子が好きそうな甘い声で女子部主将
「いやみんなが頑張ってくれているからですよ。」
きゃっきゃと喜ぶ女子たち、カガヤは視線を少し先に向けてみると男子は肩を落としている。
(男子はあんまりよくなかったかな・・・。)
皆お弁当を取りに更衣室に向かう、カガヤも一緒についていく。
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更衣室に来て、自分のカバンを確認するカガヤ、携帯端末が連絡があったしるしとして光っている。
(そういえば、朝の事があったな~、絶対エトラたちだよな~。)
端末画面を見るとエトラや千星からの連絡が確認できた。
(ははは、ですよね~)
その時ふとカバンにしまっていた神具が反応していることに気が付いた。
(え、まさか)
「ねぇ誰か手を貸して、男子同士でケンカが始まるわ、体調不良で倒れる人が多くて、大変なんだよ。」
その場にいたみんなが更衣室を後にする、いや予感がするカガヤは一人トイレに向かう、もちろん神具をもって。
個室トイレに入ったカガヤは神具を首輪にして首に巻く。
「確認だけ、確認だけ、
個室トイレから光もれ、カガヤはキュオーンデアに変身する。
「一応念の為。」
昨日セシルに教えてもらった、モードの変更で周りの人に感知されないようになっているか確認する。
先日から千星はこのモードを付け忘れているようで、今日発見されたもの千星のようだった。
(昨日一緒に話を聞いていたはずなのに、確認しなかったのかな?)
そう思いながらトイレを出るとやはり雰囲気が変わっり明らかに隙間の世界に入り込んだ。
「これはやばい、急がないと!」
足早にカガヤが向かったのは人が一番集まるホールだ、
ホールに付くと大きな鎌を持つカマキリのような化け物がいる、かなり大きくカガヤの身長の3倍はありそうだ。
「やはりいたか、千星たちに連絡しないと。」
「ゴギャーーーー!!!!!!」
カマキリが叫び大きな鎌を振った!
「しまった。」
カガヤは飛び出すが距離がありすぎ間に合わず、鎌の先にいた三人の女子生徒が斬られる。
「この!!!」
カガヤはかまきりに斬りかかる。
ガッキン!!
カマキリはカガヤの剣を腕についている鎌で受ける。
「うっ。」
「気持ち悪い。」
「おえ。」
斬られた三人とも鎌により傷はないが、顔色が青くなり倒れてします。
(ほんとにセシルの言う通りだ。)
まだ隙間の世界にいる
そしてそれが続くと
(千星たちに連絡を・・・、いや・・・)
再び振りかぶったカマキリの鎌を剣で防ぐ。
(二回も倒せたんだ、連絡する暇があるならあたしが倒してしまえば!!)
鎌をはじき、人がいない方に誘導する。
(この間と同じに手順を・・・。)
カマキリが鎌を振り下ろすが、人もいないので回るようにかわす。
(まず体にある角を探す。)
カマキリの足を攻撃してバランスを崩し、身体を確認すると腹の部分に角を確認する。
(次に呪文を・・・。)
「
カガヤがそう唱えると、剣が光り出す。
(そしてこの光が消える前に角を切り裂く。)
カガヤは器用に攻撃をかわしながら、カマキリの腹に走りこむ。
(ここだ!!)
「大塚流剣術!
カガヤ剣が角を切り裂き、角が体から離れる。
「よっしゃ、いっちょあがり、あたしもやればできるじゃん。」
討伐も終わりその場を離れるカガヤ。
バキッ!!
(えっ!?)
次の瞬間カガヤの体が吹き飛ぶ。
カマキリが鎌をカガヤに叩きつけたのだ。
「な、なんで?・・・角は・・・斬ったのに・・・。」
カマキリはカガヤに近づき、さらに連続で鎌で叩きつけてくる。
「やばい!これはきつい!!」
何度も鎌を叩きつけられる、見た目には派手な外傷はないが、カガヤの体に痛みが走り動けない。
十分に切りつけたのか、カマキリはカガヤに背を向け、またその場にいる人に目を向ける。
キシャーーーー!!!
カマキリが叫ぶと背中の羽を広げる。
そこのもう一つ角が生えていた。
「うそ!?角は一つじゃないの?」
カマキリは鎌を構え上に上げる。
「やめろ!!」
痛い体に鞭を打ち、カマキリに飛びつくカガヤ、しかしカマキリはわかっていたように後ろ足でカガヤを踏みつぶす。
身体に痛みが走る。
カガヤは後悔する、あの時千星たちに連絡を取っていればこんな事には、下から見上げたカマキリの顔は表情などないバズなのに笑顔に見える。
「くそー!!みんなに手を出すな!!」
「やかましい。」
「え!?」
次の瞬間カマキリが真っ二つに裂ける。
その勢いで背中の角も砕ける。
きぎゃぁぁぁっぁぁ!!!!!!
カマキリはけたたましい叫び声をあげて消えていく。
「な、何事?」
カガヤの視線の先に木刀を構えた長髪の女性らしき影が見えるが、モヤがかかっている向こうの世界では顔がわからない。
「倒すならしっかり倒しなさいよ。」
そう言って影は遠くなっていく。
「ま、待ってあなたは?」
「名乗るほどの者じゃないわよ。」
モヤが晴れそうになるので、痛い体を引きトイレに駆け込むカガヤ。
「なにやってんだろう。」
自分で浮かれていたのではと、自問自答するカガヤ。
変身を解くのも忘れて便器に座り込む。
第参話 完
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