第169話 あいどる(葉奈)

「よーし、お前らー! せっかく来てくれたからには楽しんでけよなー!」


 わああああ!

 ピンクのフリフリな服を着た朔良がそう叫ぶと、一気に歓声がわく。

 すごい熱量だ。場を盛り上げるべく、観客たちはペンライトを振り回す。


「私たちの新曲、どうぞお聞きください。――『こせぞろ☆まじっく』!」


 萌花が透き通るような美声を響かせると、観客たちは一瞬静まり返った。

 しかし、曲が流れると同時に手拍子が起こる。

 観客たちはみな、葉奈率いる『こせぞろ☆しすたーず』の大ファンなのだ。

 それはペンライトの色を見ればわかる。


 美久里のイメージカラーである紫、朔良のイメージカラーであるオレンジ、萌花のイメージカラーである黄色、紫乃のイメージカラーである青、葉奈のイメージカラーである緑、柚のイメージカラーである赤。

 それぞれの色が同じくらい輝いているから。

 照明が舞台を照らすように、ペンライトは観客たちの顔を照らす。

 一人一人の顔は、ものすごく輝いていた。


 アイドルは夢を見せるもの。

 歌とダンスと愛嬌で、観客たちの心を照らすのだ。


「は・な・ちゃん! は・な・ちゃん!」


 葉奈を呼ぶ声がする。

 葉奈も朔良……いや、みんなと同じ衣装を身につけて立っている。

 今まではなにがなんだかわからなかったけど、誰かが求めているなら応えなくてはならない。


「やっほー! うちをお求めっすかー!? ならうちのキュートさを存分に目に焼き付けるといいっすよ!」


 葉奈が笑顔で叫ぶと、観客たちから大歓声が沸き起こる。

 葉奈のキュートさというやつが伝わったのだろうか。

 ……いや、キュートかどうかは知らないけど。


「さいっこーな盛り上がりにしていこうっすー!」


 葉奈の心も最高に盛り上がっているが、それが夢だとわかるまで……あとどれくらいかかるだろう。

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