第116話 もうそう(美久里)

 夜になり、本格的に寒くなってきた時のこと。

 美久里はあることを考えていた。


「みんなとお泊まり出来たら……どんな感じになるんだろう……」


 それは、もし友だちとお泊まり会をしたらどんな風になるのだろうということだった。

 美久里は一人布団の上で寝転がりながら、もやもや考え出す。

 もし自分がみんなを泊めたら、夜までわいわい騒いでいるのだろうか。

 いや、それは近所迷惑になるかもしれない。


「うーん……どうしたものか……」


 そもそも、美久里の家にみんなを泊められるだけのスペースがない。

 布団もそんなにないし、人数分のご飯を用意できるか危ういし、第一アパートだから遊べるスペースが限られている。


 そんなことを考えていたら不安になって、眠気が飛ぶ。

 少し難しい夢かもしれないが、美久里はその夢を叶えるつもりだ。

 一通り妄想の翼を広げた美久里は、同じ部屋にいる美奈に目をやる。

 すやすや眠っていて、起きる気配がない。


「まあ、いっか……」


 みんなでお泊まり会をしたい気持ちもあるが、こうして姉妹二人で静かに寝るだけの日々も悪くないだろう。


「おやすみ、美奈……」


 美久里はそう囁いて静かに眠りについた。

 その後すぐに、美久里と入れ替わるようにして美奈が起き上がった。


「おねえがうるさいから起きちゃったじゃん……」


 不機嫌そうに呟くものの、その顔はなぜか笑みがこぼれている。

 そして、美久里の頭を優しく撫でる。


「ありがとう、おねえ。おやすみ」


 その『ありがとう』がなんなのかはわからないが、二人とも幸せそうだからそれはどうでもいいことなのだろう。

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