第117話 こくはく(朔良)
「さくにゃん、おはよーにゃー! ってことで瑠衣と付き合えにゃ!」
「はよ、瑠衣……お前朝から元気だな……」
そろそろ春休みが訪れようとしている、テンションが上がる季節。
気だるい月曜日だというのに、瑠衣は元気そうに朔良に告白している。
「え、えへへ……さくにゃんと一緒にいるとドキドキするにゃ」
最近になってから、瑠衣はなぜか朔良に好意を伝えるようになった。
朔良は特にそれ自体はなんとも思っていない。
瑠衣は誰に対してもスキンシップ激しめで、好きの大きさが人とは少し違ったから。
自分に対しても、そういうノリで接しているのだと思っていた。
「あれ? 今日のさくにゃん、匂いが違う気がするにゃ……シャンプーか何か変えたのにゃ?」
「別にいつもと同じだけど……」
「じゃあ、服の洗剤が変わったのかもにゃ!」
「えー、どうだろ……」
瑠衣は本当に朔良のことをよく見ている。
実を言うと、朔良も瑠衣のことは好きだと思っている。もちろん友だち的な意味で。
少し変なところもあるが、朔良は瑠衣と一緒に居て楽しい人だと思っている。
じゃあ付き合うか、と問われると首を傾げてしまう。
なんというか「さくにゃんさくにゃん」と騒いでいる瑠衣だが、それは単に朔良以外にこんなに心を許せる友だちがいないからだろう。
だから「さくにゃん」と騒いでいるのであって、それが自分である必要を朔良は感じられない。
朔良以外の誰かと仲良くなっていても、その誰かに告白していたのではないかと思う。
それなら別に自分以外の、もっと良い人と付き合った方が確実にいいだろう。
朔良よりも、そういう意味での「付き合い」に詳しい人の方が。
だから、自分とは友だちのままで構わない。
そう、朔良は思っていたのに。
「さくにゃん、元気ないにゃよ? 大丈夫かにゃ?」
「え? あ、ああ……大丈夫だ……」
「もしつらいことがあったらいつでも瑠衣に相談するにゃよ? 瑠衣がなでなでしてあげるにゃー!」
「いや、それはいいよ」
顔を近づけられただけで、こんなに鼓動がはやくなるのは……一体なぜなのだろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます