第101話 べつのくらす(瑠衣)
美久里と朔良、紫乃と葉奈が部室に来た次の日の夕方、瑠衣は緊張していた。
教室で会った時、なんて声をかけたらいいのだろう。
それ以前に、別クラスの自分が美久里たちのクラスに入るのは不自然だろうか。
瑠衣はそんなことばかり考えてしまう。
明るくて人当たりのいい瑠衣を演じている瑠衣は、根は小心者なのだ。
しかし、きっと、彼女たちは待っていてくれるはず。
そう思い、一歩一歩重みを持って進む。
これからどんな毎日になるのか、全く想像ができない。
でも、きっと楽しくなるだろう。
彼女たちからはそういうオーラを感じるから。
瑠衣にはそれで充分に信じられる理由になる。
彼女たちの温かい笑顔を思い出す。
その温かい笑顔が、瑠衣の心をも温かくする。
瑠衣はみんなの笑顔のおかげで、落ち着いた気分になった。
そしてそのまま教室の扉に手をかけ、開き、美久里たちの教室に入る。
すると、みんなが教卓の周りを陣取ってだべっていた。
傍まで行くと、みんなはやっと瑠衣の存在を認識したようだ。
「お、瑠衣じゃんか。どうしたんだ?」
「あ、えっと……その……み、みんなに会いたいって思って来ちゃったにゃあ……」
朔良が笑顔を浮かべ、そう訊いてくる。
だから瑠衣もぎこちない笑みを浮かべ、それに答える。
やはり、理由がないと会ってはいけないのだろうか。
瑠衣は理由がなくてもただみんなと一緒にいたいのだが。
「そっか……じゃあ瑠衣ちゃんも人狼やる?」
「……にゃ?」
意外なところから援護射撃がきた。
美久里が純粋無垢な瞳を瑠衣に向けながら言う。
よほど人狼ゲームが楽しいようで、村人と書かれた紙切れを持ってはしゃいでいる。
……こんな顔もするのか。
いつもおどおどしていて、誰かの背中に隠れているイメージしかなかった。
だが、慣れればよく喋るようだ。
「やっぱり人数少ないからかすぐ終わってつまんなかったんだよねー。瑠衣ちゃんが来てくれてよかった!」
「へにゃっ!? え、あ、る、瑠衣もみくにゃんがそんなに歓迎してくれて嬉しいにゃ……」
不覚にも、美久里の笑顔にときめいてしまった。
ゲームを楽しめれば誰でもよかったのだろうが、瑠衣はそれでもいいと思った。
自分を必要としてくれている人がいるということがわかったのだから。
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