第71話 なかたがい(朔良)

「ううう……」

「どうしたんですか?」


 朔良は唸り声を上げながら、自分の机の上で突っ伏している。

 美久里のキーホルダーを壊してから、朔良はずっとこんな感じなのだ。

 萌花はそんな朔良を心配そうに見つめている。


「……あの、そんなに気にしなくても……すぐに仲直り出来るのでは――」

「そんなの無理だぁぁぁ!!」


 朔良は子供みたいに泣きわめく。

 突然の大声に、萌花は驚いて肩を震わせた。


「だって美久里、あれから目も合わせてくれねーし、話しようとしてもなんだかんだ理由付けて断られてんだよぉ」


 更に塞ぎ込んでしまった朔良。

 その様子を見て、萌花は頭をかく。

 こんなにもこじれているとは思いもしなかったのだろう。

 かける言葉も見つからないらしい。


「あ、美久里……」


 今登校してきた美久里に気づき、萌花は思わず声を上げた。

 朔良はその声を敏感に聞き取り、身体がビクッと跳ねる。

 勢いあまって、そのまま顔を上げてしまう。


「……美久里……」


 美久里にその声が届き、お互い気まずそうな顔つきになる。

 だが、美久里は何かを我慢するようにふるふると首を振って、自分の席に着く。

 引っ込みがつかないだけなのか、まだ怒っているのか、判断することは叶わなった。


「うう……あたしはどうすりゃいいんだ……」

「美久里ならそのうち許してくれますよ。信じて待ちましょう? いざとなったら私が仲裁しますので」

「萌花……ありがとな……」


 萌花は、こういう状況を幾度となく乗り越えていそうだ。

 そんな萌花がいてくれるなら、なんとかなりそうである。

 朔良は自分の友達に感謝しながら、自分に出来そうなことを考えた。

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