第70話 うみ(朔良)
これは、朔良が小学生だった頃のお話。
「わー! いい景色だにゃー!」
「すごいよな〜……めっちゃ綺麗!」
鮮やかな青と灼熱の太陽。
そして、様々な水着が煌めくそこは――海だった。
少女たちは、海に遊びに来ているのだ!
洋服のような水着を纏い、海を眺めている。
「じゃあ、海を楽しむか!」
「うん! まずは海で泳ごーにゃー!」
少女たちは無邪気に砂浜を駆け回り、煌びやかな海へダイブする。
その際、黒色の髪と茶色の髪が輝く。
そして水を浴びると、温度差にびっくりしたのか――二人はビクッと身体を震わせた。
「ひゃー! 冷たいにゃ、さくにゃん!」
「あはは! そうだな、瑠衣! なんだか笑えてきちゃうぜ……!」
妙に甲高い声をあげ、語尾に“にゃん”を付ける少女――瑠衣。
なぜか笑い声をあげ、心底楽しそうな少女――朔良。
瑠衣も普通の小学生なのだが、どうしてか瑠衣は語尾に“にゃん”を使っている。
だが、そんな些細なことは二人の笑顔の前ではどうでもよくなってくる。
「海って……こんなに綺麗なんだにゃあ……」
そうやって、遠くの地平線を見やる瑠衣。
そんな瑠衣に何かを感じたのか、朔良も揃って同じ場所を眺める。
「ああ……ほんと、綺麗だな……」
――地平線の彼方には、一体何があるのだろう。
二人の少女はそれを考える。
だが、多分きっと……ここよりもっと綺麗な景色が待っているに違いない。
「さー、そろそろ帰るかぁ。母さんも心配してるだろうし」
「さくにゃんのお母さんは結構放任主義な感じだけどにゃ?」
「まあな。けど、心配してないってことじゃねーだろ」
「はー、なるほどにゃあ」
朔良と瑠衣は名残惜しそうに海を一瞥した後、手を繋ぎながら浜辺を歩いた。
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