第39話 しゅうようかい5(美久里)
「自由時間だー!」
解放感がすごい。
結構な時間宗養会を楽しんでいたのだが、どうにも気持ちが落ち着かなかった。
先生に見られているという意識があったからだろうか。
「王様ゲームしようぜー!」
「いいですね……!」
自分たちの部屋に帰ってきた美久里たちは、寝るまでの自由時間を満喫しようとしていた。
これこそが学校行事の醍醐味だろう。
夜にみんなでワイワイ騒ぐことが、何よりの楽しみなのだ。
「じゃあ、紙に番号書いたから持っていってくださいっす」
葉奈の言葉で、みんなは一枚ずつ紙を取っていく。
その中で、美久里は一番最後に紙を取った。
一番最後に福があるとかいうことわざを聞いた事があるから。
(……お、私は三番か……)
王様の紙を引き当てても、何を言おうか考えてなかったから、美久里にとってはこれがある意味“幸運”なのかもしれない。
そして、誰が王様を当てたかと言うと――
「お、うちが王様っすね」
嬉しそうに声を上げたのは、葉奈。
にやりと口角を上げて、獲物を品定めしているような目付きになっている。
「じゃ、二番が三番に壁ドンした後ほっぺちゅーするっす♡」
ガタッと腰掛けていたベッドから立ったのは、美久里と――紫乃。
三番は自分だが、まさか……
美久里と目が合った紫乃は、急激に顔を真っ赤にさせる。
まあ、かく言う美久里も少し火照ってしまっているが。
「も、もしかして……」
もしかして、これは……紫乃とするしかないのだろうか。
別に嫌という訳ではないのだが……
なんかこう……もっとこう……何かあったのではないかと思った。
「……し、仕方ないかぁ。やらないと葉奈ちゃんに何か言われそうだし〜……」
紫乃はおもむろに近づいてくると、美久里を壁に追いやって壁ドンを!
そして、ぎこちなくほっぺにちゅーをする。
その時の柔らかい感触を、美久里はいつまでも忘れなかった。
「〜〜! も、もういいよね〜?」
「突然の無茶ぶりにもちゃんと応えてくれるんすね。さすが紫乃ちゃん!」
「……お前、全部わかっててやらせただろ」
「えー? なんの事っすか〜?」
「白々しいですね……」
そんな感じの空気がしばらく続いて、気づいた時にはみんながそれぞれのベッドで眠っていた。
寝息が聞こえる中、美久里は自然と口角があがる。
(……楽しかったな……)
この宗養会のことを、一生忘れることはないだろう。
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