第37話 しゅうようかい3(紫乃)

 目的地に無事到着し、紫乃たちは一息ついていた。

 乗り物に乗った後の謎の疲労感はなんなのだろうか。

 怠惰な自分が目を覚ましてしまう。


「そういえばこの後何があったっけ〜?」

「えっと……この学校ができたきっかけ? の説明があるらしいですよ」

「え、めんどくさそうだな……」


 紫乃がみんなに向かってそう問うと、萌花が教えてくれた。

 朔良はそれを聞いて嫌がっていたが。


「だけどこれちゃんと聞いておかないとだめですからね……!」

「わ、分かってるよ……」


 朔良が萌花に叱られているのを横目に、紫乃はそうそうにこの場から離れようとしている葉奈を見かけた。

 葉奈は目や頭をしきりに動かしている。

 ……まさかとは思うが、もしかして……


「……葉奈ちゃ〜ん? どこに行こうとしてるのかなぁ〜?」

「うおあっ!? な、ななな何でもないっすよ?」

「いや、どっか行こうとしてたでしょ〜」

「えっ……! あー、その……ちょっとトイレに……」

「嘘だよね〜?」


 紫乃はぐいぐい葉奈に詰め寄っていく。

 葉奈は必死で考えているが、とうとう何も思いつかなかったようだ。

 やけに引きつっていた顔に、徐々に反省の色が見られる。


「ご、ごめんっす……なんか堅苦しいの嫌なんすよね。式とか退屈で……」

「……なんでこの学校来たの〜……?」


 カトリック系の学校であるタピ女は、堅苦しい式典が多い。

 だから、葉奈のようなタイプには向いていないのだ。

 なぜ葉奈がこの学校を選んだのか謎である。

 だが、葉奈はキョトンとした顔をして、


「え? ルーレットで選んだって言わなかったっすか?」

「それは聞いたけど〜! そういうことじゃないよ〜!」


 不思議そうに言った言葉を受けた紫乃は、そうやってツッコむことしか出来なかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る