第35話 しゅうようかい(葉奈)
「入学してから二ヶ月ちょっとで大きな行事があるとは……」
「まあ、生徒同士の親睦を深めることが目的らしいから、これぐらいの時期がよかったんじゃねぇか?」
「そうだね〜。それにみんなと一緒なら、どこでも絶対楽しいよ〜」
「それはそうと、萌花ちゃんいなくないっすか?」
バスを待っている間、みんなは教室で駄弁っていた。
……のだが、一向に優等生の萌花が来ない。
遅刻をするような人には見えないし、体調でも悪いのだろうか。
「どうしたんだろうな。昨日は元気そうだったのに……」
「今の時期は急に体調悪くなることもあるからね〜」
「そりゃそうだろうけどさ……」
萌花のことを全員が心配していると、ちょうど教室のドアが開いた。
ガラッという音に、クラスメイトたちが一斉に反応する。
その視線の先には、大きな荷物を背負った萌花が。
大きな荷物は本当に大きく、萌花の身体よりも大きく見える。
「え、えーっと……その荷物、なんだ?」
誰もが訊きたいであろうことを、朔良が代表して言う。
だが、よほど疲れたのか、萌花は声を出すことが出来ずに倒れてしまった。
「ちょっ……! 大丈夫っすか!?」
葉奈が駆け寄ると、みんなもそれに倣って萌花に近づく。
心配そうなみんなの表情を見て、萌花は息も絶え絶えに言う。
「色々、荷物詰め込んでたら……ちょっと……遅くなっちゃいました……」
「え、何持ってきたんすか?」
萌花の言葉に、葉奈は顔を引き攣らせる。
薄々――というか、だいたい予想はついていたが、葉奈は萌花の荷物を眺めながら訊いた。
「しおりに書いてあったものと、それプラス、その全部の予備が入ってます」
「……だからと言ってこれはちょっとやりすぎじゃないっすか?」
「何言ってるんですか! もし何かあった時のために必要でしょう?」
「目的地に着く前から疲れてる人が何言ってるんすか!」
……こうして。
個性的な女子高生たちに個性的な幕の開き方に、本人たちは先行き不安になった。
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