第31話 あいすくりーむ(美久里)
6月に入ってじめじめとした気候の中、美久里と美奈の姉妹はアイスを食べに街に出てきていた。
「ねぇ……なんでアイス屋に……?」
「だって蒸し暑いしさ、おやつにもぴったりじゃん?」
「だったら、コンビニとかで買って家で食べるのがよくない?」
そう、美久里は好きでここに来たわけではない。
美奈の意見に耳を傾けた結果なのだ。
何故OKしてしまったのかと、美久里は今更ながらに後悔していた。
「えー? こんないい天気の日に外で食べないなんてどうかしてるよ!」
「……もう既に私は疲れと人口密度でどうにかなりそうなんだけど……」
なぜか意気込んでふんっと鼻を鳴らした美奈を力なく見て、美久里はため息をつく。
太陽の光と湿気が皮膚を刺激してくる。
その刺激に涙を流す皮膚をタオルで拭い、街の喧騒から逃げるようにして美久里は日陰に隠れる。
「何してんの、おねえ」
「もう無理だよ……休憩しないとやってられない……」
美久里と同じ
美久里はその視線に耐えられず顔を逸らした。
「あ、でももうすぐだよ! ほら!」
そう言って美奈が指さした先には、『クリームパラダイス』と書かれたアイス屋さんがあった。
それは本当に近くて、歩いて一分もかからないほどの場所にあった。
しかし――
「も、もう歩けそうにないから……一人で行ってきて……」
汗はびっしょりと全身を覆い、脳は長時間外に置かれた氷のように溶けている。
こんなんじゃ、歩くどころか立てやしない。
「大丈夫! おねえならできる! ファイト!」
「……はい?」
美久里がそうやって諦めていると、なぜか美奈に応援された。
その目はやけに眩しくて、美久里はしぶしぶ立ち上がる。
そして、フラフラしながらも、アイス屋の目の前にたどり着いた。
「着いたね! おねえやるじゃん!」
「はぁ……やっと着いた……」
美久里は安寧の地に着いたと安堵した。
不思議と足に力が入っており、倒れ込むことはなかった。
「ねぇ、何頼む?」
「私は……なんでもいいや……」
「じゃあ、定番のバニラにしよっか!」
☆ ☆ ☆
その後に起きたことは想像がつくだろう。
美久里はバニラアイスの美味しさと冷たさに体力を回復し、美奈はとても楽しそうに……嬉しそうに顔をほころばせていた。
「また、来ようね!」
「次は……梅雨じゃない時にアイス屋に来たいな……」
美久里はそう言いつつ、笑顔でアイスを頬張った。
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